足立紳監督作品を勝手にご紹介|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第41回】

足立紳監督作品を勝手にご紹介|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第41回】

みなさま、今月号の足立紳監督のインタビューは読んでいただけましたか。

実は、また私がお話を伺ってきました。昨年の東京国際映画祭で足立監督の最新作が上映されると知り、これはお話を聞きたい!と思いまして。だって、足立監督が監督や脚本で携わっている作品は、どれも面白いんですもん。足立監督の作品では、どこかダメな部分がある人々のみっともない姿が赤裸々に描かれ、自分が当事者なら恥ずかしさのあまり顔を伏せたくなるような出来事が起こるけれども、それが同時に滑稽で、最後にはふっと気分が軽くなる。そんな魅力があります。そんなわけで、足立監督の作品がトロントで公開されるのかどうか知らないけれど、勝手に紹介します。

最新作の『雑魚どもよ、大志を抱け!』は、小学校高学年の少年たちの話。冒頭から、少年たちの日常を彼らと同じ目線で追う感覚があり、子どもの頃に友達とくだらないことをしながらいつまでも遊んでいた楽しさが蘇るよう。友達との間のトラブルや家庭の問題から、次第に笑っていられない状況になるものの、何気なく描かれる子どもたちの日常が豊かで、いつまでも観ていたくなります。

監督デビュー作の『14の夜』(2016)も少年たちの話で、こちらは中学3年生が主人公。おっぱいを触りたいとか、俺たちもいつか触れる日が来るんだろうか、といった性への興味や悩みが微笑ましくて可笑しくて、同時に友達や家族との関わりの中でヒリヒリと心に刺さるものもある。そんな青春映画です。

前作の『喜劇 愛妻物語』(2020)は、足立監督が自伝的小説を映画化した作品で、どうやって妻とセックスしようかと考えてばかりいる脚本家のダメ夫と、そんな夫に罵声を浴びせる妻の話。これ、映画化したことを奥様は怒っていないのだろうか、と心配になってしまうほど赤裸々に描かれる夫婦関係が面白すぎるコメディです。

人間の弱い部分や恥ずかしい部分にいたたまれない気分になると同時に、それが可笑しくて愛おしくてたまらなくなる。そんな足立監督の作品を、ぜひトロントのみなさんにも観てほしい!と声を大にして言っておきます。