【第16回】国際結婚と経済|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

【第16回】国際結婚と経済|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

かつて日本では、女性が結婚して専業主婦となることを「永久就職」と呼んでいました。女性は結婚すれば専業主婦となり、家庭以外の場所で働かないのが一般的であった頃のことです。

今ではすっかり耳にしなくなったこの永久就職ですが、結婚のために仕事を辞めることは、今も「寿退社」と呼ばれます。結婚=退職=夫の収入のみで生活する、という概念は、やはり根強いようですね。とすれば、女性のたちの結婚願望の根底には「結婚することで安定した生活が送れる」という思いがまだまだあるのかもしれません。

国際結婚とプロポーズ

カナダ人の彼が結婚を口にした時、それが「僕が君の面倒をみるからお嫁においで」であるかどうか、確かめておく必要があります。

移住後すぐにフルタイムの仕事が見つかるとは限りません。まして英語での就職に不安がある場合などは、相手の収入のみで自分が思い描く安定が手に入るかどうか知っておきたいものです。

たとえ相手に十分な収入があり、専業主婦になったとしても、国際結婚が永久就職になり得るかどうかには、疑問の余地があります。国際結婚において経済的展望は、国内での日本人同士の結婚以上に大切なものなのです。なぜなら、財産に関する夫婦の権利が、法律において確立しているからです。

国際結婚と経済的リスク

結婚前に相手の年収や貯蓄高などを知っておくことは大切だと、これまで何度もお話しました。しかし、夫となる人、あるいはすでに結婚した相手の経済状況をほとんど把握していない女性は大勢います。これはもちろん相手を信用していることの表れでしょう。

しかし、相手の経済状態を知らないまま、結婚に際してまとまった額の預貯金をカナダに移し、家の購入に充てたり、共同名義の預金にしたりすることのリスクについては理解しておきたいものです。

あなたのものは私のもの、私のものはあなたのもの

結婚とは「精神的、経済的に互いを支え合う」ことを約束することですから、相手の年収や貯蓄に無頓着であったり、相手を養ったりすることはごく自然なことです。

つまるところ、結婚とは「それぞれが所有するものをひとつにする」ことなので、ひとつになったものを再度分けなければならない事態が起きない限り、すべてがどんぶり勘定でも構わないのです。

しかし万一「財産を分けなければならない事態」が訪れた時、結婚前の貯金や親からもらったお金の使い方を後悔するかもしれません。

あなたのものはあなたのもの、私のものは私のもの

結婚前に持っていたものは、たとえ「財産を分けなければならない事態」が訪れても、それぞれの元の持ち主のものです。しかし結婚前に持っていたお金で配偶者と暮らす自宅を購入した場合は、夫婦の間で等分に分けられます。具体的な例を挙げてみましょう。

例1 Aさんは、父の遺産、二千万円で自宅を購入しました。十年後、自宅の値段は三千万円になりましたが、離婚に伴い半分の千五百万円を配偶者に分けることになりました。

例2 Bさんは、父の遺産、二千万円でビジネスを購入しました。十年後、ビジネスの価値は三千万円になりましたが、離婚に伴い贈与分(遺産)を差し引いた一千万円の半分の五百万円を配偶者に分けることになりました。

結婚前に持っていた資産、および婚姻中に得た贈与は、自宅の購入や自宅ローン(モーゲッジ)の返済に充てさえしなければ、離婚時にも元の所有者のものだとみなされるのです。

二人のものは二人のもの

さて、Bさんはビジネスの利益で別荘を購入しました。売却額は二千万円でしたが、ローンが五百万円残っていたので、夫婦は二百五十万円ずつ返済し、どちらも七百五十万円を手にしました。  

自宅、および婚姻期間中に得た(または増えた)財産に関しては、婚姻関係にある夫婦はどちらも50%の権利が認められます。一方、婚姻中の借金返済の責任も50%負わなければなりません。婚姻関係にある二人のものは、資産であろうが負債であろうが二人のものなのです。

9月の勉強会では、国際結婚の様々なお金の話がテーマです。これから結婚する方、すでに結婚している方を問わず参加していただきたいと思います。