【第12回】娘が国際結婚するということ|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

【第12回】娘が国際結婚するということ|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

二年ぶりに日本へ出かけてきました。カナダ人の夫とタクシーに乗ると、「お国はどちらですか」と運転手。「カナダです」と答えると、「うちの娘、イタリア人と結婚するんですよ」と、なんだか得意げ。「おめでとうございます」と受けながら私は、「娘が外国人と結婚することをこんなに風に話すこともあるんだな」と…。

私たちAPJWは、オンタリオ州で国際離婚を経験した女性のための相互支援団体ですが、ときおり日本からも連絡をいただきます。中には、国際結婚したいと言い出したお嬢さんを案じるお便りもあります。ですから、この運転手さんがお嬢さんの国際結婚を誇らしそうに語る様子は、とても新鮮でした。

そこで私は、旅先や実家の近くで知り合ったお嬢さんを持つ方たちに「もし娘が国際結婚して彼の国に行きたいと言ったなら?」というテーマでお話を伺うことにしました。

友達に自慢できる国際結婚

娘の国際結婚に対するイメージは、概ねポジティブです。「婿が外国人だと鼻が高い」「通訳付きの海外旅行ができる」「孫がハーフなのは嬉しい」など、国際結婚に憧れる女性同様、娘の国際結婚をブランドものでも手に入れるごとく歓迎しています。

しかしもう少し話を聞いてみると、「英語ペラペラの青い目の孫を連れ歩いてみたい」というのがあり、国際結婚=英語を話す国の白人との結婚、が前提であることもわかってきました。

そこで、お相手が白人でない場合についてもたずねてみたところ、「それじゃ、国際結婚する意味がないかも」「反対はしないけど、それほど嬉しくないと思う」など、少々トーンが変わってきます。白人との国際結婚なら、ブランド物だというところでしょうか。

国際結婚、カナダブランド

ご存知の通り、移民の国カナダには、移住者の子孫が大勢います。そこで次の質問は、「もしあなたのお嬢さんが出会った相手が、白人ではないカナダ人だったらどうでしょう」です。

「カナダ人ならオッケー」とは、まったく身も蓋もない見解ではありますが、カナダに対して日本人が抱きがちなイメージを率直に表現してくれたように思います。さらに、「カナダっていいとこでしょ。行ってみたいわね」と、早くも心は娘の嫁ぎ先への海外旅行。

「通訳付きの海外旅行ができる」に戻ってしまったことに思わず苦笑していると、ポロリと母親らしい本音を聞かせてくれました

「誰でもいいのよ、幸せになれれば」

親ってありがたいものですね。

何もしてやれない国際離婚

一方、「結婚後も日本で暮らすのなら大賛成」という意見もありました。 

「国内に住んでいてくれるのなら問題なし」「離婚することになっても、海外に住んでいたら何もしてやれない」などは、ハーグ条約の存在を知っての上のコメントかと思いきや、お話を伺った方、どなたもハーグ条約のハの字も聞いたことがない、とおっしゃいます。

「海外で離婚することになったら、お孫さんに会えなくなってしまう可能性があるって、ご存知でしたか」と問いかけると、「なんで?」「意味わかんない」…

ひとしきり共同親権やハーグ条約についてお話しすると、みなさん、さらに呆気にとられます。そして、「何がなんでもあきらめさせる」「首に縄をつけてでも連れ戻す」と、過激なご意見が次々に飛び出しました。

国際離婚と覚悟

「国際結婚するんだったら、もし離婚しても子どもと実家に戻れなくても構わないって覚悟がいるのね」と、ハーグ条約と国際結婚の関係性を即座に理解した唯一の母親は、こう続けます。「でも、どんな結婚でも、それくらいの覚悟を持ってないと続かないのかもしれないわね。いつでも帰るところがある、なんていうの、もともと考えが甘いのよね。それくらい好きになって、どうしてもその人じゃないとダメっていうなら、私ら親もしっかり覚悟して送り出してやりたいよね。娘が孫と日本に帰れないなら、こっちがしっかり英語を習って孫に会いに行くとかね。そんな覚悟も必要なのかもね」

たいへん素晴らしいご意見ではありますが、やはり習う言葉は英語なのですね。

娘の国際結婚、親の気持ちはやはり複雑なようですね。冒頭のタクシー運転手も、心配や寂しさを乗り越えたのかもしれません。娘の国際結婚—花嫁の父の気持ちは、さらに複雑であることでしょう。祝福されて国際結婚するお嬢さん。どうか、おしあわせに!