【第11回】イメージダウン?ないものねだり?|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

【第11回】イメージダウン?ないものねだり?|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

日本女性はカナダ人男性からとても人気があります。あるカナダ人男性によると、日本女性のイメージは「キュート、セクシー、オビーディエント」なのだそうです。漫画やアニメ、ソーシャル・メディアで得られる日本人女性の印象は、確かにこのイメージを裏付けています。

清楚、可憐、控えめ、慎ましい、穏やか、忍耐強い、さらには、「常に男性を立て出しゃばらないが、 影ながら男性を支える芯のしっかりした女性」など、インターネット上の「ヤマトナデシコ神話」は、ひたすら都合の良い日本女性像を描いています。

一方、外国人男性、特に英語を話す男性への憧れは、日本女性たちの中に確かに存在しています。さわやか、スマート、レディ・ファースト、やさしい、頼り甲斐がある…などがその典型で、どうやら日本人女性たちも、カナダ人男性の「偶像」を作り上げてしまっているようですね。

こんな男女が出会ってしまったら、恋に落ちるのは必然かもしれません。にもかかわらず、国際結婚の離婚率が高いというのは、一体何を意味するのでしょう。

イメージダウン

イメージダウンとは、「イメージと異なる姿を知ることでがっかりする」という意味の和製英語で、日本語の「幻滅」に当たります。こちらは読んで字のごとく、「幻が減る」というわけですね。

自分の作り上げたイメージと異なるからといって、値打ちが下がるというのは、おかしな話です。元々存在しない「まぼろし」を好きになってしまった方がいけないのですが、こんな時の国際結婚における常套句は、「今の君は、僕が出会った女性ではない」です。

自分勝手に作り上げたイメージを相手に押し付け、相手がもしイメージ通りに行動しなければ、罰を与える、というのは、オリエンタリズム思想の基本です。エドワード・サイードが描いた西洋人の東洋人に対する身勝手な期待と、そしてその期待が「裏切られた」ときに生まれる反発感は、ジェンダー問題にも置き換えられます。これを芸者シンドロームと呼ぶ人もいます。

国際結婚を考えるのなら、サイードの著書『オリエンタリズム』の序章だけでも読んでおきましょう。

ないものねだり

カナダ人男性が、日本人女性に抱くイメージは、もとより、ないものねだりなのですが、英語を話す男性、特に白人男性には、奇妙な権利意識が存在するように思います。「イメージと違うのなら、イメージに沿うよう努力すべきだ」です。

普段はおくびにも出さないこの権利意識は、夫婦生活の大切な局面で「オレサマキャラ」として登場します。彼らにとっては自分の考えこそが、ユニバーサル・トゥルース(世の中の人の全てに当てはまるべき普遍の真実)なのです。移住者、女性、非白人のマルチ・マイノリティである日本人妻に太刀打ちできるはずはありません。

この辺りで、女性の方も、どうやら自分が選んだ「さわやかでスマートで頼り甲斐のあるカナダ人男性」は、自分中心のコントロール・フリークであることに気づき、愕然とすることになるのです。

理想と現実のギャップに架ける橋

夫と妻の「ダブルないものねだり」を乗り越えるには、 きちんと自分のニーズを伝えることのできる安全な環境が必要です。 何を話しても頭ごなしに却下される危険のないオープンな関係は、健全な夫婦関係に欠かせませんね。

このように、互いの不安や疑問を理解する努力を重ねるプロセスは、「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」です。これ以外に「盲目の恋」を「無償の愛」へ昇華させる方法は、私には考えつきません。

さらにこのプロセスは、「互いの理想と現実の間に橋を架ける努力をする価値があるかどうか」を見極める作業でもあります。ですから、国際結婚を決める前にこの作業が成されれば、「理想の相手」が「不満の種」に変わる可能性を潰しておくことができるでしょう。

この時点で、自分の意見を述べることにためらいを感じるようであるなら、その国際結婚、待った方が良いかもしれませんね。もし、あなたの中に「?」がよぎったら、それは互いに本当の姿を知るチャンスであると捉えてみてはいかがでしょう。

国際結婚の持つ甘くセレブなイメージは、「ないものねだり」です。結婚は生活です。結婚生活とは、二人分の過去から一つの未来を作るための「現在の積み重ね」なのでしょう。だとしたら、互いの現実を受け入れることは、とても大切なことですね。