【第5回】コンフリクト:性格の不一致?|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

【第5回】コンフリクト:性格の不一致?|私、国際結婚します!! でもちょっとその前に知っておきたいお話

前回のテーマは、法的拘束力を持つ同意書、マリッジ・コントラクトについてでした。一般にプリナップと呼ばれるこの法文書で、離婚の際の配偶者サポートや財産分与などの金銭問題についてあらかじめ決めておくことができます。しかし親権など子供に関する取り決めはこれに含まれないことをお話ししましたね。

では、結婚前に結婚生活で夫婦が守るべき約束事をあらかじめ決めておくことはできないのでしょうか。例えば、「月に一度は子供をあずけてデートする」、「夫婦間の問題は夫婦で決め、姑など他の家族の言いなりにならない」、「一年おきにクリスマスとお正月を日本で過ごす」などなど、挙げればきりがありませんね。

しかしこのような夫婦間の約束事は、互いの誠意とコミットメントの問題です。デートナイトをミスったからといって法の力を借りて解決することはできませんよね。それでも、結婚前に夫婦のあり方、家族としての方針を決めておくことはとても大切なことです。そこで今回は、夫婦間の約束事の取り決め方や、万一それが守られなかった時の解決法について考えてみましょう。

コンフリクトってなに?

すっかり日本語になった感のあるコンフリクトという言葉ですが、ここでは、国際結婚でのパートナー間の「意見の不一致」と捉えることにしましょう。夫婦間の約束事を取り決める時、あるいは結婚生活において、コンフリクトは避けることのできないものです。

しばしば離婚理由としてあげられる「性格の不一致」とは、「相手の考え方や価値観を受け入れることができなかった」ということなのかもしれません。一方、あるいは双方が「自分の意見が正しく、相手は自分の意見に従うべきだ」と感じた時、不一致は不和に変わります。「相手が変わるべきなのに変わらなかった」ことを性格の不一致と理由付けることになるのでしょう。

コンフリクトと向かい合うということ

しかし私も含め、一体どれほどの人がコンフリクトと真っ向から取り組んできたでしょう。もしコンフリクトの長所に気付き、コンフリクトを利用することができたら、どれほどの結婚を救うことができるでしょうか。

二十年以上も前に書かれたソーシャル・コンフリクトという本には、異なる境遇で育った二人の意見が一致しないことは自然なことで、そんな違いこそが人生を楽しむためのスパイスであると書かれています。コンフリクトと上手に付き合うことによって二人の人生に新しい意味が生まれ、それを共有することで信頼が深まってゆくというのです。この考え方を国際結婚に当てはめて見てみましょう。

コンフリクトとの付き合い

コンフリクトとの付き合い方には四つのパターンがあるそうです。
①まず、衝突を避けるために相手の言いなりになることです。でもそれでは何の解決にもなりません。主張することのない不満はいつか必ず爆発してしまいます。

②また、相手の意見が自分のそれより重要だと思い込むことは、自信喪失への最短距離です。このパターンは、ジェンダーや英語力、経済力などパートナー間の社会的地位に差がある場合によく見受けられます。自分の価値や権利を押しつぶし相手を優先させ続けると「自己」が崩壊してゆきます。

③三つ目は、自分の意見を主張して勝ち取ることです。常に相手をやり込め自分の思い通りにするというという方法は、いわゆるパワハラに当たります。

④最も有効なアプローチは、自分の立場や意見を大切にしながら、相手の立場や意見に耳を傾けるという方法です。決して簡単なことではないでしょう。しかしそんな協力体制を作り上げてゆくことを「結婚」と呼ぶべきだと私は思います。

二人で作る結婚生活

さて、夫婦間の約束事を取り決めたいと思ったら、まず、自分の理想とする結婚生活を箇条書きにしてみましょう。そして相手にも同じように書いてもらいましょう。番号を振っておくと良いですね。そして「1番と3番には賛成、でも2番は…」みたいな対話を交わしましょう。そして最終リストを額に入れて新居のリビングルームに飾りましょう。

えっ!はずかしい?いいえ、とても大切なことです。そしてもし約束が守られなかった時には、何度でもトコトン話し合いましょう。「自分の立場や意見を大切にしながら、相手の立場や意見に耳を傾ける」には、まず互いのニーズや価値観をよく理解することが必要です。コンフリクトを「二人が一緒に成長してゆくためのチャンスだ」と捉えることができたなら、結婚生活は楽しいに違いありませんね。