第41回 フランス留学を終えて ー外国語学習に大事なものは?ー|カエデの多言語はぐくみ通信

第41回  フランス留学を終えて ー外国語学習に大事なものは?ー|カエデの多言語はぐくみ通信

つい最近3か月間のアラ還フランス語学留学から帰ってきました。フランス語は私にとって、英語に続いて2番目の外国語になります。カナダではなかなか出会えないヨーロッパや南米の生徒たちの語学力や気質が知れて、私のバイリンガル教育に関する知識の幅が広がった気がしました。

3か月間のフランス留学

私がフランス語を学び始めたのは大昔。パリでの語学留学も経験したのですが、若さゆえか勉強以外のことに気を取られてしまい、初級レベルで停滞したまま、その後、結婚、カナダ移住に子育てと、フランス語からは遠ざかっていました。

その後子どもたちも成長し、夫とパリ旅行をした6年前からフランス語の勉強を独学で再開。徐々にフランスにまた留学したいという気持ちが大きくなり、今回ビザ不要の3か月間お試し留学という名目で、ノルマンディーにある地方都市の語学学校に留学しました。

おばさん留学生なので友達はできないと思っていたのですが、意外と若い人たちの輪の中に入れてもらい、皆で遠足&食事会を開催したりと、楽しい留学生活を送ることができました。

大事なのは文法か発音か

渡仏前は自分のフランス語のレベルは知らなかったのですが、私は、まずはCEFR(欧州言語共通参照枠)のB1(中級前半)レベルのクラスに入り、その後すぐにB2(中級後半)クラスになりました。フランス語に近いヨーロッパ言語勢のドイツ、スイス、メキシコやブラジル人生徒が中級~上級クラスに多く、非ヨーロッパ言語の日本、中国、韓国系生徒は初級~中級クラスに多いという分布になり、英語圏の人はレベルがバラバラでした。

ただ、ヨーロッパ言語勢でも、学校でもフランス語教育を取り入れているスイス人やドイツ人のフランス語の発音は聞き取りやすかったのですが、フランス語をスペイン語やポルトガル語のように発音する南米系生徒のフランス語は、ネイティブスピーカーの先生には理解できても外国人生徒には聞き取り辛かったです。ホームステイ先のマダムが、同じくホームステイをしていたブラジル人男性の発音を直そうとしていましたが、一度着いた発音の癖はなかなか取れないようでした。

では、外国語を学ぶ場合、大事なのは文法でしょうか?発音でしょうか?究極の選択をするのであれば、大事なのは文法より発音です。文法が多少間違っていたり単語が前後していても、発音さえ聞き取ってもらえれば理解が可能です。前述の南米系の生徒たちは、流暢に話せるので話すスピードが速く、また、話す量も多いので、聞き取ることを半ば諦めた他の生徒もいました。
このように、流暢に聞こえるように、外国語を速く話す人が多いのですが、外国語を話す時は「ゆっくり、はっきり」が基本です。

ディナーの前に話題を考える

中級の私のフランス語がどの程度のものだったかと言いますと、自分や家族のこと、自分の仕事、何をしてどこへ行ったという身の回りのことは流暢に話せても、文化や社会問題、歴史について話す時は、話したいことは分かっていても自分のボキャブラリーや表現力不足を痛感しました。また、日常的な動作、物や花、動物の名前も知らない単語がとても多いのです。ただ、クラス内で発言する時は、見切り発車で話し始めても、先生が汲み取ってどうにか辻褄を合わせてくれたのですが、問題はホームステイ先でのディナーでした。

ホームステイ先のマダムとは朝食と夕食の時に顔を合わせました。フランスでは、ディナーに少なくとも1時間、時には2時間以上かけます。フランス人はお喋り好きなので、その時間を有意義に過ごすためにも、ディナー前に話題を考えたり、それに必要な単語の下調べをしたりしていました。それでも、マダムが次々に出す話題に着いていくのは大変でした。
生徒のフランス語レベルを把握している語学学校の先生の話すフランス語は理解できても、ホームステイ先のマダムは、フランス人が日常的に使う表現や単語で話すので、自分の聞き取り力や理解力の低さに毎回打ちのめされていました。

単語は文脈や意図で覚える

英語を習得し、第2外国語であるフランス語もある程度できるようになった私が強調したいのは、外国語は、単語だけの単語帳やフラッシュカードで覚えないほうがよいということです。言葉には文脈というものがあり、話し手の意図によって使う単語が違ってきます。
マダムに「洗濯物をありがとう」と言いたくて「洗濯」と検索すると、 「la lessive」「la blanchisserie」「le linge」という3つの言葉が出てきて、さて、どれが私の意図に合う適切な言葉なのかがわかりませんでした。マダムに聞いてみたら、この場面に合うのは「le linge」だと教えてもらい、「Merci pour mon linge.」と言うと通じたようでした。

私は、時々、日本人の英作文を添削する機会があるのですが、明らかに日本語の単語から直訳した英単語を使っている文によく出会います。たくさん覚えたいから、時間を節約したいからと、単語帳で次から次に英単語を覚えたい気持ちは分かるのですが、結局間違った使い方で単語を覚えてしまうと、また覚え直さないといけなくなる可能性があります。英単語は、文の中や例文を使って覚えたほうが、遠回りのようですが、もっとも近道なのです。