第23回 子どもの興味を見つけるって難しい|カエデの多言語はぐくみ通信

第23回 子どもの興味を見つけるって難しい|カエデの多言語はぐくみ通信

 年の初めに新しいことを始める人も多いでしょう。親も、子どもの将来が実り多いものになるようにと、習いごとをさせたり、スポーツクラブに入れたり、イベントに連れ出したりと、とても頑張ります。ただ、子どもの興味をそそるものを見つけるのが、とても難しいのです。

子どもは親の思い通りに踊らない

 私も子どもたちにはいろいろさせました。水泳、空手、習字、サッカー、スケート、スキー、ウィンドサーフィン、ピアノ、サックスフォン、バイオリン、テニス、そして、日本語とフランス語。サマーキャンプもサイエンス系やスポーツ系のものなどいろいろ取り交ぜました。

 子どもの習いごとやスポーツにどれを選ぶかは、親の好みが大きく反映されます。というのは、子どもはなかなか自分からこれをやりたいとは言い出さないので、選ぶのは親だからです。親が得意なことや、実は昔やってみたかったができなかったこと等をさせる場合が多いかもしれません(「近くにあったから」という理由も多いと思いますが)。

 しかし、親の思い通りには踊ってくれないのが子どもです。ピアノの練習を嫌がりせっかく買ったピアノはローンだけが残り、スポーツも身が入らないので上達せず、上達しないから子どもも楽しくない。高い英語教材も埃をかぶっているという家庭も多いのではないでしょうか。わが家の子どもたちも、続かなかった習いごとの方が多いのが現実です。

早いうちに始めた方が良いものとは

 カナダの公立学校の音楽教育では楽譜が読めるようにはならないと夫から聞いたので、子どもたちをピアノレッスンに連れて行き、ついでに私も一緒にレッスンを受け始めました。子どもたちが途中で止めても私だけ10年以上続けましたが、子ども時代に習っていた私の姉のようには弾けるようにはなりませんでした。

 スポーツも、カナダでは水泳を学校で教えてくれないので、湖や海で溺れないように早いうちからスイミングスクールに通わせました。カナダの長い冬を楽しむためにスケートやスキーもやらせました。子どもたちはスケートやスキーをスイスイ滑れますが、私はどうしても怖いという感覚が抜けません。子ども時代にあのスピード感やバランス感覚に慣れないといけないようです。

 外国語もしかりで、子どもたちの第1言語は英語ですが、日本語とフランス語も小さい時から続けました。子ども時代にはどんな発音でも聞き取れる「黄金の耳」を持っているので、私と違い、成長した子どもたちは3か国語のどんな音でも聞き取れ、きれいに発音することができます。

 このように音楽、スポーツ、外国語以外にも、子ども時代に始めた方が上達の早いものはきっとたくさんあることでしょう。

「石の上にも3年」は昔の話

 私が子どもの頃は、親に習いごとをさせてもらうことは贅沢であり、習いたいと言っても却下されたものがいろいろありました。また、「一旦始めたら止めてはいけない」というのがあの頃の風潮でした。特にピアノは大きい買い物なので尚更です。

 SNSで繋がりのある親御さんも、子どもにいろいろな習いごとをさせています。しかし、皆さん無理強いはしていません。興味があれば続けたらいいし、なければ止めても良いという余裕のある態度です。やってみなければ好きか嫌いか分からないので、子どもに止める自由を残しているようです。

 ただ、私の場合、日本語を止める自由は与えていませんでした。私が子どもたちのルーツである日本語を諦めることができなかったからです。勉強嫌いの息子は日本語の学習をとても嫌がりました。しかし、一度も止めたいとは言い出しませんでした。子どもなりに私に気を使っていたようです。

止めてもいいからやってみる

 オリンピック選手や、音楽家、歌舞伎役者等の子どもたちの多くは、親がやっていることを小さい頃から習わされる運命にあります。DNAが作用するのか、また親が一流のコーチなので、子どもがその道で才能を伸ばす場合が多々あります。

 ただ、歌舞伎の名家でない普通の家庭は、子どもの素質や興味を探り当てるために、できる範囲でいろいろやらせてみるしかありません。数を打つしかないのです。ただ、子どもの時に少し習っただけでも、その後の人生が豊かになることは確かです。

 わが家の子どもたちにはピアニストになる才能はありませんでしたが、音楽は大好きです。スポーツも大して得意ではありませんが、水泳やスケートには自信があります。日本語やフランス語は娘の仕事の選択肢を広げ、息子は日本語を話せることで日本でボランティア活動ができ、それによって将来進む道を決めました。

 止めてもいいからと、とにかくやらせてみることが大事で、また、子どもが何に興味を示すかをよく観察することも大切です。触れてみてやってみないことには、何が好きかは分からないのは大人も同じです。

 今後ますます世界は変化し、産業の形態が変わり、新しいテクノロジーが生活に導入されていくでしょう。新しいものが出てきたら、気軽にいろいろなことに挑戦してみる柔軟性を身に着けることも、これからの時代もっと必要になることでしょう。

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