メイクアップ・アーティスト 小倉 寛子さん インタビュー | 夢をカタチに…

メイクアップ・アーティストとして、カナダを代表するテレビ局CBCやGlobalのニュース番組を担当。一からカナダで美容の世界に入り、経験を積み、現在に至るまでのストーリー

その人の魅力を引き出すメイクがしたい

そう語ってくれたのはCBCやGlobalのニュース番組でメイクアップ・アーティストとして働く小倉寛子さん。カナダに来てからメイクの勉強を始め、今では週7日働くことも珍しくない小倉さんにこれまでの歩みや学生生活を有意義に過ごすポイント、そしてメイクアップ・アーティストとしての心得などを語ってもらった。

◆ カナダに来てから今のお仕事に就くまでの経緯を教えてください。

 最初は学生ビザで12年ほど前にカナダに来ました。その後、以前から交際していた方のコモンローで永住権を取得し、ジョージブラウンカレッジでネイルとメイクを勉強した後、今のテレビ局の仕事に就きました。6年ほどテレビ局で働いています。

◆ 日本では心理学を専攻されていたとのことですが、全く異なるジャンルの美容学校選ばれたのは何故ですか。

 人が自信をもっと持つことができ、気分をあげたり、笑顔になれるメイクには日本にいたころから興味がありました。人にメイクをするという経験はありませんでしたが、やってみたい仕事だったので挑戦してみようと思いました。

◆ カナダで一から経験を積まれたとのことですが、まずジョージブラウンを選んだきっかけはありますか?

 私の場合、知り合いにジョージブラウンの先生に習ったことがある方がいたという事で決めました。もし学校を探す場合は、学校のウェブサイトなどから、どういった方が先生をしているか等を調べて、出来るだけまだ現役でその世界で働いている先生がいる学校を探した方がいいと思います。当時ジョージブラウンには現役の先生がたくさんいました。現役で働いている先生から、最先端のメイクが学べるだけでなく、卒業後の就職先などへのコネクション作りの面でも重要になるので大切だと思います。

 留学や移民して来た方によくある悩みとして、知り合いがいない、この仕事がしたいけれども、どこからどうすれば良いか分からない等があると思います。学校に行くことによって、先生がその分野で働いている場合、仕事につけるようになるまでにどういう経験が必要かなどの的確なアドバイスをしてくれたり、先生によっては、貴重な経験をさせてもらえたりすることもあります。私の場合は、当時ネイルの先生が、サロンの雑誌の表紙の撮影があってネイルアーティストを探しているからと、その仕事を推薦してもらいました。自分の仕事が雑誌の表紙になるのは緊張しましたが、とてもいい経験でした。

色々なバックグラウンドを持つクラスメイトからその国々のメイクの違いなどを聞けたのはいい経験でした。

◆ 美容学校の学生生活はどうでしたか?

 私はパートタイムの授業を取っていたので、授業のない時は仕事をしたり、将来就きたい仕事の為の経験を増やすボランティアをしたりと時間を有効に使うことができました。日本でメイクの学校に通ったことがないので比較することができませんが、色々なバックグラウンドを持つクラスメイトからその国々のメイクの違いなどを聞けたのはいい経験でした。また、クラスメイトでファッションに興味のある方の中には日本のファッションにも興味を持っている方も多かったです。日本で流行ったものがカナダに少ししてから来ることや、カナダには無いアイディアが日本にあるからかもしれません。

◆ お仕事とボランティアは何をされていたのですか?

 カナダで初めての仕事はShoppers Drug MartのBeauty Boutiqueでした。この仕事は当時Shoppersで働いていた友達にマネージャーさんを紹介してもらったのがきっかけです。Beauty Boutiqueは、Shoppers Drug Martの入口にあり、来店する方に挨拶をするというのも仕事のうちでしたので、人に自分から話しかける事への抵抗がなくなりました。英語もここで鍛えられた気がします。

 また、いろいろな化粧品会社の商品を扱っているので、一つの会社の商品に偏らずに色々な会社の商品の知識が得ることができたのも良かったです。ユニオンではないプロダクション会社の映画のメイクの仕事をしたり、Rogersでボランティアのメイクをしたりもしました。映画のメイクの仕事は、友達の知り合いがプロダクションで働いていて、アシスタントメイクアップ・アーティストを探しているということで、仕事につながりました。そこから、キーメイクアップ・アーティストさんに、よく声をかけてもらい、映画の仕事をしていました。Rogersでの仕事は、テレビ局のウェブサイトから応募し、そこからいくつかの番組のメイクを担当しました。

◆ メイクにも色々な仕事がありますが、テレビ局で働きたいと思ったのは何故ですか?

 メイクの学校に通っている間に授業の一環として先生が働いているテレビ局に見学に行くことがあり、その時にここで働きたい!と思いました。そこがCBCでした。

◆ では今理想のテレビ局で働いているのですね!今のお仕事について伺いたいです。

 テレビ局でのメイクアップ・アーティストとしての仕事に就く為に必要だった経験をボランティア活動や仕事で積んで来たので、CBCに採用してもらえました。その後、Globalにも応募し採用されました。今は平日の夜にCBC、週末はGlobalで働いていることが多いです。CBCはだいたい夕方の4時入りで12時まで、いくつかの番組の出演者やゲストのメイクを担当します。

 CBCでは、メイク道具は持参しますが、レギュラーのタレントの方々にはメイクアップバッグが用意してあるのでそちらを使います。ゲストは基本的にメイクをしてきてもらいますが、手直しをします。Globalでは、筆は持参しますがメイク道具は会社が用意しており、CBC同様にレギュラーのタレントの方々は各自メイックアップバッグが用意されています。

CBCのオフィス

◆ メイクをされる方の理想はどうやって探り見つけていきますか?

 必ず相手に質問をするということが大事だと思います。勝手に予測せず、相手の方と会話をし、相手の要望にあったメイクをするという事がとても重要だと思っています。アレルギーを持っている方もいますしね。ニュース番組でのメイクは、ファッションショー等とは違い芸術性ではなく、ニュースを見ている方が、タレントさんの顔などに注意がそれないように、自然かつプロフェッショナルなメイクを心がけています。

◆ 仕事関係で、語学や文化の違いにより壁などにぶつかったことはありますか?

 履歴書で自分がどれだけこの仕事に向いているかを書くという事に初めは戸惑いがありました。出しゃばりだったり、天狗になっているというイメージがあったからです。でも、カナダの人からみれば、それはどれだけ自分に知識や技術があるか、自分がどれだけその会社にとって利益であるかという事を伝えているので、それは雇用主にとってとても重要なことなのです。

 私が思うに、カナダで働く日本人にとってプラスな部分は、きっちり仕事をすることが苦ではないことだと思います。例えば、時間に正確、丁寧で親切やあまり不満を言わないところです。しかし、自分に必要な事や物は主張しないといけないので、私の場合は、働いているうちにどう主張していくかということを学びました。

メイクはその人の良いところを伸ばして魅力を倍増させるもの

◆ カナダの美容の流行と日本人に合うトレンドはありますか?

 ハイライトやコントアー、特殊なアイライナーなど色々な流行はありますが、簡単で日常のメイクに取り入れやすいのは、ゴールド系のハイライトが日本人の肌の色にも馴染みやすく、今年らしいと思います。

◆ 最後に読者の皆さんにアドバイスをお願いします!

 メイクをどこから始めればいいか分からない人は、化粧品コーナーの自分の好みのメイクをしている美容部員の方にメイクしてもらうのがおすすめです。メイクはその人の良いところを伸ばして魅力を倍増させるものなので、トレンドばかり気にせず、自分にあったメイクの仕方を覚え、自信を持ってより魅力的になってください!