【初めてのコメディクラブ。このためにここまで来たんだと再認識。】スタンダップコメディアン 宰務翔太さん(中編)|Hiroの部屋

渋谷にある日本唯一のコメディクラブ「Tokyo Comedy Bar」で英語によるスタンダップコメディを披露してきた宰務さん。ヒロさんとは共通の知人であるお笑い芸人の村本大輔さんで繋がったという。今年2月からトロントでスタンダップコメディのためカナダで生活している。トロントに降り立ちユニオンステーションに着いた時は、ついに始まったなと思ったという。旅行に行くテンションは違う、身が引き締まる感じがしたという。

宰務:ところでヒロさんはどうしてトロントを選んだのですか?

ヒロ:スタンダップコメディのように、美容の世界もニューヨークは本場です。そして、私が挑戦しようとした2001年、9・11アメリカ同時多発テロが起きました。その際、渡米が無理なら、今は将来を見据えた英語留学を他国でしようと考え、「北米英語」、「予算」、「大都市」等を考慮した結果、トロントを選びました。

トロントに来てからはスムーズに物事が進んだ感じですか?

宰務: ついに来たなと引き締まる思いでしたが、英語もそんなにできるわけではないので、銀行など新生活のセットアップなどでクタクタになり、「しんどい。これは30歳でやることではないな」と感じてしまったんです。10代や20代の勢いがある時ならオッケーですが、想像していたより結構しんどかったですね。海外で暮らすのは本当に大変だと思いました。

それでも、トロントに来て5日目に初めてコメディクラブにネタをやりに行きました。そこで感じた、「あ~このためにここに来たんだ」と再認識したんです。来てよかったなと思いました。オープンマイクの限られた時間ですが、それを機に気持ちが安定していきました。トロントに来て初めてテンションが上がったときでした。

ヒロ: 私は少しでも早く現地人と一緒に働ける英語力にするという目的が明確だったので、トロント到着後すぐにエンジン全開でした。一ヶ月後には現地サロンと直接交渉し、インターン機会も作れました。カナダ人英会話や欧米サロンの施術方法を学ぶだけでなく、結果的に翌年の就活や、その後のビザ申請にも有効となる推薦状も快く書いてくださり、本当に貴重な経験、時間でした。いま振り返っても最初から夢に向かって全力ダッシュでしたね。

まだ英語も得意でないままのステージ。日本人はもちろんアジア人もほとんどいない中で、その意外性にどんな反応でしたか?

宰務: どう思われるのだろうというちょっとした不安はありましたが、楽しくステージに立つことができました。もちろん日本人のコメディアンなんていないですし、ジャパニーズアクセントの英語で、目立つし、なにこいつって感じが伝わってきました。それでも「Tokyo Comedy Bar」での経験が生きました。そこでは日本にいる外国人に向けてトークしていたわけで、ガチガチにやっていた自信あるネタは、トロントでも手応えというか良い反応をもらったと思います。

インターナショナルな空気は
東京の舞台もトロントの舞台も共通

4ヶ月が過ぎたあたりからトロントを絡めたジョークも取り入れ始めました。「Tokyo Comedy Bar」に来ている外国人のお客さんはいろいろな国から来ているけど東京に住んでいるということが共通点ですよね。マルチカルチャーな都市トロントとインターナショナルな空気感が似ているんです。そこでトロントでも普遍的なことと日本のこと絡めたらウケるんではないかと思いました。

面白いのは、カナダとアメリカのことをネタにしても、なんでカナダでしかも日本人からアメリカのことを聞かなきゃいけなんだみたいな空気があるんです。トロントニアンらしい反応ですよね。トロントはインターナショナルだけどすごいローカル感も強いんだと思いました。なので、TTCでネタを作ったりローカルに合わした工夫をするようになりました。

宰務さんの舞台を観にいった際の2ショット

ヒロさんはいかがでしたか?ヘアカットといえども日本人と欧米系では髪の質も違いますよね。接客もカルチャーが違えば多様になってくるんではないですか?

ヒロ:もちろん接客は英語なので、慣れるのにはだいぶ時間がかかりました。ここトロントは多民族都市ですから、カットに関しても仰るように髪質が一人ひとり違うわけで、試行錯誤しながら適応していきました。そういう意味ではトロントのサロンで、まずジュニアスタイリストとして日々、経験を積みながら学ばせてもらいました。ときにお客様は「大満足!!」と言って下さっても、自分自身では普通の「満足」で終わることもありましたね。

(聞き手・文章構成TORJA編集部)

宰務翔太さん(Saimu Shota)

1991年6月19日生まれ。関西学院大学国際学部卒。2013年、当時大学4年生の時に「第3回わらいを愛する学生芸人No.1決定戦」で優勝を飾る。その後テレビ朝日『学生!HEROES』などに出演。大学卒業後は、上京し吉本興業でコンビを結成し漫才をしていたが解散。2022年5月、東京渋谷に日本唯一のコメディクラブ「Tokyo Comedy Bar」がオープンし、以前から興味を持っていた英語によるスタンダップコメディを始める。現在はスタンダップコメディのためトロントに留学中。