【第38回】「玉の輿」と財産分与|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

 
 女性がお金持ちの男性と結婚することを「玉の輿に乗る」と言います。また、男性が裕福な女性と結婚することを「逆玉」と呼ぶそうです。英語では性別に関わらず「marry well」です。日本でもカナダでも、結婚相手が「お金持ち」なのは「よいこと」であるようです。しかしもし、その「玉の輿婚」が破綻したとき、「お金持ちでない妻・夫」は路頭に迷ってしまうのでしょうか。

 そこで今回は「玉の輿と財産分与」についてオンタリオ州スペシャリスト認定弁護士、ケン・ネイソンズに聞いてみました。


幸せな結婚生活!?

 結婚相手がお金持ちであることは、望ましい条件でしょう。親にとっても、我が子がお金の心配をすることなく結婚生活を送ることは大きな安心に違いありません。

 しかし「結婚相手が裕福ならその結婚生活はかならず幸せだ」というわけではありません。経済的に余裕があっても、専業主婦・専業主夫が使うお金を制限する配偶者もあります。さらにこの手の配偶者は、結婚生活における別の面でも支配的です。

 収入のない配偶者のお金の使い方を著しくコントロールすることが、経済的虐待であると認識する人はあまりいないかもしれません。しかしこの経済的虐待が離婚のきっかけとなるケースは少なくないのです。

 また、自分に収入がないことから、生活のために経済的虐待に耐えている人もあるでしょう。このような状況では、財産分与についての知識を得ることが、解決への糸口となるかもしれません。

玉の輿婚の財産分与

 離婚相手の経済的背景は、財産分与において大きな役割を担います。  

 「財産分与」とは、「別居時に夫婦それぞれの『婚姻財産』が均等になるように清算すること」です。そして「婚姻財産」とは、「結婚後に増加した財産の総額」で、不動産や預金などの「プラスの財産」から借金など「マイナスの財産」を差し引いたものです。    

 さて、婚姻財産にはいくつか例外があります。例えば自宅。結婚前から夫婦のどちらかが所有していた単独名義の家であっても、結婚後その家が夫婦の自宅となったなら、夫婦双方に50%ずつの権利が発生します。また、贈与や相続で受け取った財産は婚姻財産から除かれます。つまり、資産家の令嬢、令息と結婚しても、お相手の家の財産は婚姻財産にはらないのです。

 けれども、二十代で結婚した夫婦の場合、20年、30年と結婚が継続していたなら、夫婦それぞれが所有するほとんどの財産が婚姻財産でしょう。

 例えば、結婚後20年間ずっと専業主婦だった妻は、おそらくは夫の婚姻財産の半分を受け取ることになるはすです。婚姻財産の定義に鑑みると、財産分与は結婚期間が長ければ長いほど高額になります。加えて、財産分与の他に離婚後の妻の生活を支える配偶者サポートも支払われます。配偶者サポートの金額は、夫婦間の収入差で割り出しますので、夫が働き盛りで収入も高くなっていれば、妻への支払額は高額となります。

 家庭を守り家族を支えた専業主婦・専業主夫の権利は、手厚く認められているのです。

中高年の再婚とマリッジ・コントラクト

 さて、近年ますます増加する熟年離婚、または配偶者との死別の後の再婚の場合はどうでしょう。

 中高年の再婚では、夫婦それぞれがすでに退職しており、互いにいくばくかの財産を所有していることが多いので、離婚時に財産分与や配偶者サポートとして莫大な金銭が動くとは考えにくいです。このような再婚の場合、懸念すべきはむしろ遺産相続についてかもしれません。それぞれに子供(や孫)があり、財産の管理を任せる人の人選や遺書の作成も終えていたなら、そこに登場する新たな配偶者は、我が子の人生設計に大きな影響を与えることになります。

 年齢差のある「玉の輿再婚」では特に注意が必要です。六十代の父親が三十代の再婚相手を見つけたような場合です。

 玉の輿再婚の際に頻繁に用いられるオプションとして、マリッジ・コントラクト(婚前契約)があります。マリッジ・コントラクトで、子供や孫たちに残したい財産を確保しつつ、配偶者との死別をも考慮した取り決めに合意しておくことは、夫婦のみならず家族の末永い幸せにとって大切なことでしょう。

 「財産分与」「マリッジ・コントラクト」をはじめとする家族の問題は、家族法を専門とする2名のエキスパート認定弁護士と日本人有資格者(オンタリオ州公認パラリーガル)が在籍するネイソンズ・シーゲル弁護士事務所にお任せください。

 リモート相談は、次の手順で行っております。

  1. hnoguchi@nathenssiegel.com(野口)宛に相談内容をお知らせください。
  2. 当事者おふたりのフルネームと相談者の写真付きIDをお願いします。
  3. 相手方が過去に当事務所の顧客でなかったことを確認します(弁護士協会の規定により、相手方が過去の顧客であった場合には相談に応じられません)。
  4. オンライン・ミーティングの日時候補をお知らせします。
  5. 面談日時をお選びいただいた後、オンライン・ミーティング(Zoom)リンクをお送りします。
  6. 初回面談への野口の同席は無料です。面談時に野口から今後の流れを含む詳細を説明します。

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。