10K PHDS PROJECT 博士号取得者の就職事情 | University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

10K PHDS PROJECT 博士号取得者の就職事情 | University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 大学生の就職率や就職先ランキングなどのニュースはよく見かけますが、あまり知られていないのが博士の就職事情ではないでしょうか?トロント大学の大学院課程School of Graduate Studies(SGS)が2000年から2015年に博士課程を卒業した学生10,886人(88%)を対象に卒業後の就職事情を調査したプロジェクト「10,000 PhDs Projects」の結果が去年公開され話題になりました。今回はこのプロジェクトの調査結果の中から私が気になった項目をいくつか取り上げていきたいと思います。

1.トロント大学博士号取得者ってどんなひと?

 トロント大学博士号取得者は、女性(49%)男性(51%)と男女間はほぼ同じですが、学問分野別になると女性の割合はSocial Sciences(65%)Humanities(55%)Life Sciences (55%)Physical Sciences(24%)と異なっています。また卒業生は、カナダ人(67%)、永住権保持者または留学生(33%)と学生の多様性の高さが見受けられます。

2.PhD取得者の増加

 2005年にオンタリオ州政府は大学院生を増やす目的で各大学に資金提供を行ったことにより、オンタリオ州全体におけるPhD学生の入学率が2000年の1万人程度から2013年には2倍の2万人まで増加しました。この増加の主な一因として、大学生の学生人数が2倍に増加したことや、教職員の定年退職を促し新教職員への空席ポジションの確保などが挙げられます。表1のグラフはその増加推移を表したもので、トロント大学では、PhD取得者の全体数が2000年の500人程度から2015年には900人と1.8倍に増加しました。最も上がった分野はPhysical Sciences(2.6倍)、次にLife Sciences(2.2倍)とSocial Sciences(1.4倍)ですが、Humanitiesはほぼ横ばいとなっています。

3.PhD取得者の様々な就職先

 表2のグラフでは、トロント大学PhD取得者が様々な仕事に就いていることが分かります。

 トロント大学PhD取得者の約60%はPost-secondary Education(PSE)(大学などの高等教育機関、青色の濃淡で表示)へ就く割合が最も高く、次にPrivate Sectorの22%(オレンジ色)、Public Sectorの12%(黄色)、Charitable Sectorの3%(緑色)、Individual Sectorの3%(灰色)という傾向になっています。

 PSE機関では博士号取得者の30%はTenure-Stream Faculty(大学等の教職員)でキャリアを積んでいく傾向が強く、特に顕著に見られる分野はHumanities(42%)Social Sciences(41%)でPhysical Sciences(26%)Life Sciences(21%)は比較的低い傾向にあります。次に多いのは、ポスドクと呼ばれる博士研究員で、割合は全体の8%、博士号を取得して間もなかったり任期付きで採用されているケースが多く、また、少数ながら非正規雇用や臨時雇用のCollege Lecturers (1.8%)Contract/Sessional Instructors (3.9%)などに就く傾向は今の博士の就職事情を表していると思います。

 最近の傾向として、特にPhysical SciencesとLife Sciences分野の博士号取得者はPrivate Sectorなどの民間企業に就職する割合が高くなっています。中でもPhysical Sciences(40%)とLife Sciences(21%)出身者が最も高く、Physical Sciencesの分野ではエンジニアリング(27%)、IT(17%)、金融機関(13%)への就職が高く、Life Sciencesではバイオテクノロジーと製薬業界(59%)への就職が高くなっています。

参照: https://www.universityaffairs.ca/opinion/in-my-opinion/10000-phds-project-closer-look-numbers/