60年のイノベーション University of Waterloo(ウォータールー大学)|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 はじめまして。この度TORJAにて記事を書かせていただくことになりました、Yukariと申します。現在トロント大学でポスドク(博士研究員)をしています。私はカナダで学士、修士、博士号を取得しましたので、その経験を元にカナダの大学情報や事情などをお伝えしていきたいと思っております。

 今回は私が修士号を取得した我が母校、ウォータールー大学をご紹介したいと思います。カナダを代表する理工系大学として有名で、去年ドナ・ストリックランド博士がノーベル物理学賞を受賞し、しかも女性では55年ぶりとのことで、さらにウォータールー大学の知名度が上がりましたが、日本ではそうでもないらしく、今回初めて大学名を聞く方も多いかと思います。

1.ウォータールー大学

メインキャンパス入口

 トロントから車で約2時間ほど南東に位置するウォータールー市にあり、1957年に創立された比較的新しい大学で、学生数は学部、大学院生を合わせて4万人(2018秋学期)、1000エーカーほどあるキャンパスには100以上の大学施設があります。キャンパス内は緑豊かで池があり、春と秋にはカナダグースをあちこちで見かけます。公共バスも通っているRing Roadと呼ばれる大きな輪の道路があり、最近では駅が建設され、2019年にオープン予定とのことです。

 6つの学部、応用健康科学部(Applied Health Sciences)、教養学部(Arts)、工学部(Engineering)、環境学部(Environment)、数学部(Mathematics)、理学部(Science)から成り立ち、2018年の世界大学ランキング(U.S. News & World Report)では工学部がカナダ国内1位、数学部のコンピューターサイエンスが国内2位に見事ランクインされています。有名な工学部は一番多く校舎を持っている学部でなんと校舎が7つ!ちなみに学部ごとにメインカラーがあり、イベントになると学部の色をしたTシャツを着た学生を見ることが出来ます。

2.Co-opプログラム

 最大の特徴の一つに、大学設立と同時にカナダで初めて導入された「Co-opプログラム」があります。「Co-op」とは学生が学校に通いながら企業でインターンシップが出来る制度で、同大学が世界で最も大きな「Co-opプログラム」を運営しているそうです。新入生の約70%がこのプログラムを進学先の決め手に挙げ、設立以来Co-opプログラム学生数は6,700以上、60か国以上に及び、なんと卒業生の就職率は97%!そして、卒業生の2年後の給料は他大学の卒業生に比べ5万ドル以上も高く、同プログラムの強さを表しています(2012統計)。

3.Entrepreneurship(起業家精神)の育成


 ウォータールー大学のある地域はITやテクノロジー関連企業が多く、「北のシリコンバレー」「スタートアップハブ」「イノベーションの街」などと呼ばれるようになり、世界的に注目を集めています。

 私が在学中(2008-2010)はBlackBerry(携帯)を手掛けた「Research in Motion(RIM)」が有名で、多くのウォータールー大学の卒業生が就職していくので、「ウォータールー大学は北のMIT!(Massachusetts Institute of Technologyの略)」と呼ばれていました。

 ウォータールー大学のベロシティ(Velocity)プログラムはカナダで最もプロダクティブなスタートアップ育成プログラムと言われ、学生が在学中に起業するために必要な知識や指導、財政的支援、作業スペース、ネットワークへのアクセスを提供し、2010年以来、2,300以上の雇用を生み出し、800万ドル(約8億)以上の収入をもたらしています。

4.カナダ最大の環境学部

環境学部の新校舎:Environment 3 (EV3)

 当時私が大学院の環境学部に在籍していた頃は環境学部の校舎は1つだけでしたが、今では3つもあり、新しい校舎は環境学部のカラーである緑色が使われ、環境に配慮したLEED® (Leadership in Energy and Environmental Design)の認証を受けています。環境学部設立以来40年以上が経ち、今ではカナダ国内で最大規模を誇る環境学部に成長し、持続可能な社会に向け全力を尽くし続けています。

5.日本語が学べるレニソン・カレッジ(Renison University College)

 レニソン・カレッジはウォータールー大学付属のカレッジで、毎年35か国から1000人以上の学生が大学進学に向けて英語プログラムを受講しており、夏になると日本から短期留学している日本人留学生をキャンパス内で見かけます。その他、日本語や日本文化を学べるコースがあり、ウォータールー大学の学生が履修することが出来ます。日本、韓国、中国の文化に焦点を当てた、東アジア祭が毎年同校で行われ、とても人気なイベントの一つになっています。