COVID-19に対する新しい研究・開発の取り組み | University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

COVID-19に対する新しい研究・開発の取り組み | University of Toronto|メープルバレー発。カナダの大学情報・アカデミア事情

 新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な流行により、様々なカナダの大学研究機関では新しい研究・開発の取り組みが、今までにない非常に速いスピードで行われています。今回はトロント大学の大学生や卒業生がCOVID-19パンデミックに対して開発に携わった2つのプロジェクトをご紹介したいと思います。

1.FLATTEN

 トロント大学の学生Shrey Jain氏がリーダーを務めるFLATTENは、25名以上のボランティアから成り立つNPOで、COVID-19に関するオンタリオ州内のデータをリアルタイムにオンラインマップに載せて状況を提供しています。

 このようなオンラインツールの開発のきっかけは、「もっとローカルなデータ、例えば自分の隣近所の感染発生件数や状況などを提供できるプラットフォームが出来ないか、それによって“flatten the curve”または特定の医療機関にCOVID-19感染者が殺到するのを避け、他の医療機関の支援を得る手助けになるのでは」とJainは考えたそうです。

 FLATTENのサイトfratten.caでは、公衆衛生の専門家と作成した幾つかの質問にユーザー(COVID-19感染者)が答えを入力するという自己申告制でデータを収集する仕組みとなっています。ユーザーによる自己申告制度のため、実際に感染しているかどうか疑わしい人などの入力情報によってデータ自体にバイアスを与えてしまう危険性がありますが、現在のところ、他のオンラインツールや電話でのホットラインでも同じようなデータバイアスが起きてしまう可能性はあるとのことです。

 FLATTENのサイトで集められたデータは、”Heat Map”と呼ばれるデータを色や濃淡で表示出来る地図によって、ローカルの情報をより分かりやすく公開しています。
現在のところ、FLATTENではトロントのGTAエリアに集中しており、データ収集の信頼性と精度、ヒートマップの利便性の向上を目指しているとのことです。

Flatten Heat Map
Flatten Heat Map

2.Spartan Bioscience

 トロント大学の卒業生Paul Lem氏はSpartan BioscienceのCEOで、現在カナダ政府はSpartan Bioscienceと共同でSpartan Cubeを活用してCOVID-19 DNA テストが出来るよう開発中です。Spartan Cubeは小型のモバイル・キットでCOVID-19 DNAテストをわずか30分で調べられ、実用化には8週間程度で生産できるため、大量生産に向けて取り組んでいます。

Spartan Cube
Spartan Cube

 Lem氏は「このキットは“ゲームチェンジャー”である」と考えています。また「COVID-19テスト・キットは世界的に不足しており、カナダも例外ではありません。特にカナダは北カナダなどにリモート・タウンが多く存在し、検査結果が10日以上もかかってしまい、その間にウィルスが人々に感染していく危険性があります。COVID-19をコントロールするためには、もっと手軽なモバイル型のテスト・キットが必要です」と述べています。

 Spartan Cubeは、テスト用のサンプルを既存のラボに提出する必要が無く、その場でDNA情報を収集し分析するために、職場や学校または家庭などに配置できる可能性があります。Spartanのテクノロジーはすでに世界的に認められており、カナダ国内ではHealth CanadaがアメリではU.S. Food and Drug Administrationが認可しています。

 Lam氏は続けて「私たちのミッションは、DNAテストをもっとポータブルにそして個人レベルで簡単に行えることです。例えば妊娠用検査薬や家庭用の血糖値検査など、検査結果が誰にでも手に入るように」と述べています。