オンタリオ州で小売販売を公開市場に移行の動き|カナダから見るマリファナ合法化のあと

カナダの大麻事情
オンタリオ州、「大麻ラウンジ」承認となるか

 オンタリオ州のレストランやバーで、大麻入り飲料や大麻入り食品を注文できる日はそう遠くない未来なのかもしれない。2月10日、オンタリオ州政府は、これまで懸念されてきた闇市場と競争し、顧客により多くの大麻使用の選択肢を提供するために、州の大麻市場を拡大するという“大麻ラウンジ”に関する潜在的な計画を発表した。州政府はニュースリリースにて、最終的な目標は小売大麻販売を公開市場に移行することだと説明した。

 声明にてダグ・ダウニー・オンタリオ州司法長官は、「私たちは家族やコミュニティーを保護するための責任あるアプローチの一環として、大麻関連のビジネスチャンスを模索するためにオンタリオ州の市民にフィードバックを共有するよう求めています」と市民に呼び掛けた。また、州政府がオンライン上のコンサルテーションを行う予定であり、レストラン、ラウンジや野外フェスティバルなど公共の場での大麻使用を許可する政策について、一般大衆、企業や利害関係者の意見を収集する予定だと説明した。

 ダウニー司法長官は州が合法大麻市場を拡大すると発表して以来、オンタリオ州のアルコールとゲーム委員会(AGCO)が小売事業者ライセンスの700以上の申請を受け取ったとも説明し、「私たちは州全体で大麻小売販売に責任あるアプローチを取り続けています。民間企業が子供やコミュニティを安全に保ちながら、違法市場と戦うための安全で便利な小売システムを構築できるようにしていきます」と続けた。

 オンタリオ州の“大麻ラウンジ”がどれほどの経済的影響を州にもたらすことになるのかはまだ不明だが、公共の場で合法的に大麻を使用できるようにすることで、大麻に付随する社会的不名誉をそそぎ、カナダ国民の大麻への認識を高めるというメリットがあるとBNNブルームバーグは述べている。同メディアの報道によると仮に大麻ラウンジの承認が実現した場合でも公共の屋内喫煙は禁止されたままになる見込みだそうだ。

米国大麻事情
米ミシガン州に続きイリノイ州が大麻解禁、5日で12億円販売

 1月1日、米中西部イリノイ州が嗜好用大麻を解禁した。2018年まで、中西部の州はどこも大麻合法化政策を承認していなかったが、12月にミシガン州で同様の法律が執行され、今回の合法化は米中西部で二州目、米国全体で合法化した州としては11番目となる。

 合法化を伴い、イリノイ州の最大都市シカゴの10店を含め、州内37店が大麻販売の認可を受けた。 21歳以上のイリノイ州民は認可を受けた小売業者から嗜好用大麻を購入することができ、乾燥大麻は30gまで、濃縮液は5gまで、食用大麻はTHC含有量500mgまで所有が認められ、イリノイ州以外からの成人移住者も半量を所有が許可される。ローリングストーンの報道によると、大麻政策プロジェクトのマシュー・シュワイク副会長は公共の場での使用と使用後の運転、21歳未満への大麻提供はこれまで同様違法となると説明した。2月現時点で営業許可を受けた小売業者は州全体で37業者で、そのうち24業者はシカゴ付近を拠点としているそうだ。

 シカゴ・トリビューン紙は、大麻解禁前から乾燥大麻の売り切れを予測し、嗜好用大麻は医療用大麻よりも人気が出るだろうと推測していた。去年11月に医療目的で大麻を購入した患者は5万4500人未満だったが、州議会が依頼した調査によると今後イリノイ州に住む21歳以上の成人の9%以上に当たり、約94万6000人弱が大麻を消費するようになるという予想だった。

 その予想は解禁時に見事に当たり、販売店と州当局によると大麻の需要は非常に高く売り上げは5日間で1100万ドル(約12億円)近くに昇り、店頭では品切れが相次ぐ自体となった。多くの店舗では元日、午前6時の開店前から寒さの中数時間にわたり列をつくる客が見られ、一部の店では人々の列が8ブロックの長さに達し、待ち時間は最高12時間に及んだという。州当局によると、初日の大麻販売件数は7万7000件に上り、売り上げは310万ドル(約3億4000万円)以上となり、大麻への高い需要を受けた。初日に開業する販売所数と商品の量が消費者の需要に対して大幅に少なかったため、多くの店舗では品切れが起き、7日までに休業を強いられた店舗も見られ、一部の店では入荷までの間、販売を医療目的に限る方針が取られた。  

 需要が供給を上回る環境、そしてイリノイ州の大麻の価格が他の州よりも高く設定されていることにより課税や規制を免れて、より安価で大麻を提供できる違法市場が盛んになるという懸念が指摘されている。だが、今回の合法化はイリノイ州にとっての大きな勝利であり、その影響は近隣のミズーリ州、オハイオ州、アーカンソー州、アイオワ州までに及ぶことが見込まれ、大麻禁止政策を終わらせる可能性が高い。米国連邦議会でも国レベルでの大麻法の緩和を求める議員の増加が見込まれる。

 シュワイク副部長は、ローリングストーン誌に「イリノイ州やミシガン州の動きによって、最終的には全米での大麻規制を打ち破りたい」と述べ、「連邦議会の大幅な規制緩和という形ではなく、嗜好用大麻法令の制定を訴えてきたミシガン州や法改正のために戦ってきたカリフォルニア州、コロラド州をはじめとする各州のように、人々の働きかけで実現することになるでしょう。団結によってこうした法改正が実現されつつあるのです」と述べている。


本文=菅原万有 / 企画・編集=TORJA編集部