【第5回】多様性・視覚化が進む社会の中で|ovrseeのカナダライフ日記


【第5回】多様性・視覚化が進む社会の中で|ovrseeのカナダライフ日記


2017年から開始したovrseeのLGBTサポート。きっかけはovrseeで働いているLGBTスタッフが語ってくれたこれまでの人生。日本での自分、トロントに留学して変わった自分のストーリーはとても心に響くものがあり、その体験談を元に日本のLGBTの方、またはLGBTコミュニティーに関心のある方に向けLGBT留学サポートを開始しました。2018年にはTorontoのLGBT情報を紹介する日本語サイトLGBTxトロント(http://lgbtoronto.ca/)を公開。 





女子プロテニス選手が試合後に彼女にKiss





8月初旬、カナダでRogers Cupというテニスの大会が開催されました。4大大会(全英、全仏、全米、全豪)に次ぐ大きな規模の試合で有名選手も多数エントリーされていましたね。 

先月、4大大会の最高峰とも言われる事があるWimbledonの試合後に映し出された映像が話題になりました。それは、 ベルギー出身の女子テニスプレーヤー、Alison Van Uytvanck(アリソン・バン・アイトバンク)選手が試合に勝利したあと、観客席にいた彼女にキスをしていたシーンでした。Alison選手は現在、WTAランキング37位で、Wimbledon2回戦で、優勝候補の筆頭と言われていた、スペイン出身のMuguruza選手を破った選手です。



彼女は今年のはじめ、ハンガリーの大会で優勝したあとにゲイである事をカミングアウトしました。引退後にカミングアウトする選手はいますが、現役中にする選手はあまり多く無いのが実情です。   



さて、Alison選手がこの試合後のインタビューを紹介したいと思います。




“Do you feel like a role model in this moment how is the coming out free your mind and allow you to play freely as taking away from your shoulders?”



「自分は、今の瞬間いろんな人たちのお手本となってと思う? また、カミングアウトして、肩の荷がおりて気持ちが楽になって、のびのびテニスできるようになった?」



“I don’t think it actually changed something about that – being ‘more free’ or something. We just decided to not make it personal and keep it for ourselves. I’m happy anyway if it is with a woman or a man. I just feel like we don’t have to be ashamed of this. And that’s why I also want to be free. I mean, I’m not sick, I don’t have a disease but I feel like its good that I could come out as a gay person.”



「今までより気軽になったりとか、何も変わってないと思う。ただ、自分たちの中に留めておいておくのをやめただけ。それが相手が男性でも女性でも(隠さずオープンにできるのは)私は幸せ。 ただ、(ゲイである事を)恥ずかしいと思いたく無くて。だから、自由になりたかったの。 だって、私は病気でもないし、なんの疾患ももっていない。ゲイとしてカミングアウトできてスッキリした気分。」



※このインタビューをした人は、これを聞く前に「パーソナルな質問なので、もし答えくなければ答えなくてもいいですよ」と前置きしていました。



平昌オリンピックに出場したプロスキーヤーのGus Kenworthys選手も、自分のパフォーマンス後に彼にキスした瞬間がテレビに写っていました。



スポーツ選手が試合後に自分のパートナーにキスするシーンはよくあります。これが同性カップルでもニュースになる事がなくなるぐらい特別じゃない未来がやってくるといいなーと思いました。





差別やヘイトはどの時代もあった。ただ知らなかっただけ。





このように同性間のキスが何事もなくテレビに映し出されることもあれば、日本では、某雑誌に寄稿した国会議員さんのLGBTに対する発言が話題になっていました。



ここ数年、日本だけではなく世界中で今まで目にしなかった、聞かなかった「現実」を目の当たりにする機会が増えました。これはポジティブなこともネガティブな事もどちらもです。



今回の議員さんの発言は、たとえ雑誌に乗っていたとしても、SNSがなければ知らなかった気もします。そして、これだけ多くの人が声をあげようという動きにもなってなかったのではないでしょうか。

いろんな問題が最近増えたねーと思っている人も多いようですが、私はただSNSの普及によって「可視化」されるようになっただけと感じています。今まではメディアが伝えるニュースだけしか知らなかった。メディアが伝えてないこともたくさんあったと思います。



しかし、携帯にや写真、ビデオ機能が付き、そしてSNSを通じて誰でも”発信””共有”できるようになりました。



そうしたら世界中にはこんなにヘイトが溢れていた。悲しいですがこれが現実。そして、私の経験からいうとそういうタイプの人はどんなけ一生懸命説明しても、痛みを伝えても、「聞く耳」をもちません。



彼らには彼らなりの信念や信条があるんです。私が彼らの意見に同意できないように、彼らも私の意見に同意できない。



私たちができる事は「聞く耳がある人たち」へ伝えていく事が唯一できる事じゃないかなって思うんです。



聞く耳がある人たちは、ただ無知なだけ。悪い意味ではなく、本当に接する機会や学ぶ機会がただなかった。ただそれだけだと思うんです。




LGBT先進国と言われているカナダでもLGBTに対して良い感情を抱いていない人もいます。ヘイトクライムが起こることもあります。でも、法律の設備や、学校教育、企業のサポートが進んで、大多数が正しい知識を持ち、理解して、”何事もなく”生活しています。



文部科学省の調べによると日本からカナダに留学する人は2016年度、8,875人だったそうです。毎年8000人以上がカナダでのLGBTの人たちの生活を知り、知識を持って日本に帰国し周りに伝えていけば、10年で8万人の人となり、その人が友達1人に伝えたら、16万人、5人に伝えたら40万人と理解の輪がどんどん深まっていくのではないかなって思っていますし、願っています。