「カナダでの生活を、もっと記録にも、記憶にも残るような写真にしたい」谷 圭樹さん|CANON(キャノン) ×TORJA

「カナダでの生活を、もっと記録にも、記憶にも残るような写真にしたい」谷 圭樹さん|CANON(キャノン) ×TORJA

デジタルの時代に、人の気持ちを写すことが、どれほど豊かなことかを思う。写真一枚が語る“共感”、映像がつなぐ“記憶”、プリントが残す“つながり”。それは、言葉を超えた、感情の共有のかたち。このシリーズ企画では、SDGsの時代において、デジタルイメージングが人の感性や暮らしに寄り添い、持続可能な幸福やつながりをどのように育んでいけるのかを探っていきます。

カメラを持つようになると、それまで何気なく通り過ぎていたものが気になり始める。夕方になって変わっていく空の色。街を歩く人たち。偶然目の前に現れた一羽の鳥。

2021年にカナダへ渡った青年は、カナダへ持ってきたCanon PowerShot SX620 HSを手に、少しずつ街を撮るようになった。街を歩きながら気になったものを撮る彼にとって、この小さなCanonは写真の楽しさを知る入口になった。

高知の田舎からトロントへ

ーーカナダでの生活はどうですか?

すごく満足しています。僕は田んぼに囲まれた、コンビニもないような田舎で育ちました。トロントは都会ですけど、少し行けば緑や公園があって、身近に自然を感じられる。都会の楽しさもありながら、自然も近い。そのバランスがすごく気に入っています。

ーーその環境の変化が写真にもつながった?

それはすごくあると思います。地元にいた頃は、自分が「これ、気になるな」と思うものもそんなに気が付かなかったんです。でも、カナダに来て、新しいもの、新しい環境、文化、食とか、いろいろなものに触れるようになった。そうすると、せっかくカナダにいるので、こっちでの生活をもっと自分の中で、記録にも記憶にも残る写真にしたいと思ったんです。

何か自分の目に留まったり、琴線に触れる場面があったら、カメラを向けたくなる

Processed with VSCO with c8pro preset

ーー撮っていて一番楽しいのは?

動物です。鳥とか。以前撮った写真に、バンフの街にいたカササギがあるんですけど、ああいう動いている動物を撮るのが一番楽しいですね。動物は「ここに来てください」とか指示できないじゃないですか。その時そこにいる、本当に生きているそのものの姿を撮る。そういうのが楽しいです。

ーーよく行く撮影スポットは?

Ossingtonですね。お店自体もおしゃれですし、歩いている人とか、街の雰囲気自体がすごくおしゃれだと思います。僕にとっては、「海外に来たな」と感じるような場所なんです。

ーー普段から写真を見たり、カメラを触ったりしますか?

時間があるとカメラを触ります。夕方になって空や街の色が変わると、同じ場所でも違う顔に見えて、撮りたくなるんです。
写真を趣味にしてからは、いろいろな人の写真も積極的に見るようになりました。「こういう画角や構図があるんだ」と参考にして、自分でも試してみる。その中で「自分はこういう写真が好きなんだ」と、少しずつ分かってきた気がします。

撮った写真が、誰かの思い出になる

ーー撮った写真は、そのあとどうしていますか?

まずパソコンに入れて、自分の好きな色味に調整してInstagramに投稿しています。友達や職場の仲間を撮った写真は、プリントして本人に渡すこともあります。職場にはワーキングホリデーでカナダに来ている人も多いので、ここで過ごした時間の思い出になればいいなと思って。写真を渡すとすごく喜んでもらえるので、気に入ったものはプリントするようにしています。

刺身を盛っていて気づいた「これ、写真と同じだ」

ーー魚屋の仕事と、写真に共通する部分はありますか?

すごくあると思います。刺身や寿司を盛り付ける時は、マグロをどこに置くか、高さや彩りをどうするかを考えます。それって、写真を撮る時に画角の中で「どこに何を置くか」を考えるのとすごく似ているんです。どちらも、その先に見る人がいて、お客さんが料理を見た瞬間に「おいしそう」と思ってくれるか、写真を見た人に何を感じてもらえるかを考える。盛り付けたお皿も、自分を表現できる場所の一つだと思っています。
仕事中はなかなか撮れませんが、きれいに盛り付けられた時は「撮っておきたいな」と思いますし、アットホームな職場なので、みんなが楽しく働いている姿や笑顔も残したいですね。

次に撮りたいのは「人」

ーーこれから挑戦してみたい被写体は?

人物のポートレートをもっと撮ってみたいです。まだ自分から「撮らせてください」とお願いするのはちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。最近はミラーレス一眼にもかなり興味があって、次の一台をすごく探しています。友達のカメラを借りた時は、オートではなく自分で設定を変えて撮ることもあります。明るさやシャッタースピードなどを自分で調整することで、もっと自分らしさや個性のある写真を撮れるようになりたいですね。

一台のCanonから始まった、まだ途中の写真生活

PowerShot SX620 HSは最新のカメラではない。2016年に登場したコンパクトデジタルカメラだ。それでも約182gの小さなボディに25倍光学ズームを備え、広角25mm相当から望遠625mm相当までをカバーする。街を撮り、料理を撮り、ふと見つけた鳥に寄る。彼のように、日常の中で被写体を決めずに歩くには面白い一台だ。そして彼自身も、この少し前の世代のデジカメならではの写りを楽しんでいる。

「今の新しいカメラと比べると、やっぱりちょっと古い感じはあります。でも、今はオールドコンデジとかオールドデジカメが流行っていますよね。すごくきれいな写りというより、ちょっと懐かしいような、温かい感じの質感に写る。だから触っていて楽しいです」

ただ、彼の写真生活はそこで止まってはいない。いま興味の中心は、ミラーレス一眼へと広がりつつある。
シャッタースピードを変えたい。明るさを自分で決めたい。レンズを選びたい。ポートレートを撮りたい。もっと自分らしい一枚を撮りたい。

PowerShot SX620 HSは、完成形ではなく、写真という世界へ入っていく最初の扉になった一台なのだろう。
「撮れば撮るほど、のめり込んでいく感じ?」最後にそう聞くと、答えは短かった。

「そうですね。もう生活の一部になっています」

田んぼに囲まれた故郷からトロントへ。新しい街で「残しておきたい」と思うものに出会い、その一つひとつにカメラを向けてきた。

次に彼が選ぶカメラが何になるのかは、まだ分からない。ただ、カメラを持つ前とは、街の見え方がもう違っている。彼の写真生活は、まだ始まったばかりだ。