【第2特集】CNタワー50周年|トロントのシンボル、その魅力のすべて|TORJA 15th Anniversary

【第2特集】CNタワー50周年|トロントのシンボル、その魅力のすべて|TORJA 15th Anniversary
今月のTORJAは、二つのアニバーサリーを特集しました
15周年を迎えたTORJAは、語呂合わせから生まれた「15(いちご)」特集で、この夏食べたいトロントのいちごスイーツ&ドリンクを大特集。そして、開業50周年を迎えたCNタワーでは、建設秘話から知られざるトリビア、絶景の楽しみ方まで、その魅力を徹底取材しました。甘酸っぱい夏の味覚と、トロントを象徴するランドマーク。味わって、学んで、街をもっと好きになる。そんな夏の特集号をお届けします。

トロント、そしてカナダを象徴するランドマーク、CNタワーが2026年6月に開業50周年を迎えた。高さ553.33メートル、総重量約11万8,000トンを誇るこの巨大な塔は、街のどこからでもその姿を望むことができる。昼は街を見守る道標として、夜は色鮮やかなイルミネーションで人々の暮らしに寄り添い続けてきた。
しかし、CNタワーの魅力は高さだけではない。トロントの発展を支えた歴史、世界を驚かせた建築技術、地上346メートルから望む絶景、季節ごとの楽しみ方、そして多様性に配慮した取り組みまで、その存在は街の文化そのものと言えるだろう。
50年という節目を迎えた今だからこそ知っておきたい、CNタワーの歴史と知られざるエピソード、そして訪れたくなる楽しみ方を紹介する。

トロントの都市化を支えたCNタワー

CNタワー誕生の背景には、トロントの急速な都市化があった。1960年代、前例のない建設ラッシュによって高層ビルが次々と建設され、Jarvis Streetにあった高さ152mの送電塔では、CBC(カナダ放送協会)のラジオやテレビ放送の電波を十分に送信できなくなった。送電塔は、Toronto-Dominion(TD)CentreやBank of Montreal(BMO)など、高さ244mを超えるビルに遮られていたためだ。


CBCはDon Valley ParkwayとLawrence Avenue付近に新たな送電塔とテレビ局を建設する計画を進めていたが、その後、カナダ最大の鉄道会社であるカナディアン・ナショナル鉄道(Canadian National Railway Company)がプロジェクトを主導することになった。

計画は見送られたが、タワー建設は続行

Metro Centre再開発計画は、トロント市議会とオンタリオ州地方自治委員会の承認を得たものの、1975年に当時の州首相ビル・デイビスによって見送られた。計画にはユニオン駅を南へ移転し、新駅を建設する案も含まれていたが、デイビス氏が却下したためだ。


再開発そのものは中止となったが、CNタワーの建設計画だけは継続された。この頃までにCanadian Pacificはプロジェクトから撤退しており、Canadian Nationalが単独で資金を調達することになった。

機能と観光を兼ね備えたシンボル

新しい送電塔は、鉄道会社の頭文字から「CNタワー」と名付けられた。Canadian Nationalは、送電塔としての機能だけでなく、トロント、そしてカナダを象徴する観光名所となることを目指した。国のエンジニアリング技術とイノベーションを体現する建築にしたいという構想だった。
建設工事は1973年2月6日に始まり、1,537人が40カ月をかけてCNタワーを完成させた。

Front StreetとJohn Streetという立地の意味

建設現場では、労働者たちが交代制で24時間、週5日作業にあたった。場所はユニオン駅に近いFront StreetとJohn Streetの一角。約200年前、この付近までオンタリオ湖が広がっていたが、都市の成長とともに埋め立てが進められてきた。
この場所が選ばれた大きな理由は、プロジェクトを主導したCanadian National Railwayが土地を所有していたことにある。長年にわたりトロントの鉄道事業の中心だったFront Street一帯は、CN Railwayが描く都市開発の構想に欠かせない場所だった。

Metro Centre再開発の一環だった

CNタワーの建設計画は、1968年に構想された「Metro Centre」再開発計画の一環として始まった。Canadian PacificとCanadian Nationalの両鉄道会社は、Front Street沿いのYonge StreetからBathurst Streetまでを住宅中心に再開発する構想を描いており、実現すれば北米最大級の都市再開発計画となるはずだった。
当時、King StreetからQueens Quayまで広がる鉄道ヤードは、自家用車の普及や航空機による長距離移動の一般化を背景に縮小が検討されていた。計画には、約2万人が暮らせる住宅街に加え、東京ドーム約9個分のオフィススペースや商業施設の整備も盛り込まれていた。

あの高さはどのように実現されたのか

©︎Wikimedia Commons – Wikipedant

最初の工事は、56メトリックトンもの土や頁岩を掘り起こし、巨大な基礎を築くことから始まった。第一段階の目標は高さ335メートル。当時、完成すれば世界一高いタワーになると期待されており、その重量を支える強固な土台が不可欠だった。
採用された設計は、六角形のコア(核)を3本の脚が支える構造。特徴的な脚の曲線は、「スリップフォーム工法」によって造られた。コンクリートの型枠(フォーム)を少しずつ上へ滑らせながら連続してコンクリートを流し込む工法で、高層タワーや煙突などの建設で広く用いられている。

展望台の完成へ

建設が進んだCNタワーは、1974年にカナダで最も高い建造物となった。同年8月には、7階分の高さを持つメイン展望台の建設が始まり、そのさらに上には「SkyPod」または「The Top」と呼ばれる、西半球最高峰の展望台が設けられた。

©︎Wikimedia Commons – Robert Taylor

SkyPodは地上447メートル、メイン展望台より約33階分も高い位置にある。強風時にはタワーが最大50センチほど横に揺れ、その動きを体感できるという。建設関係者たちは、季節や天候、文字どおりの強風に立ち向かいながら頂上を目指した。
完成間近の1975年3月には、「Olga」と呼ばれたシコルスキー社製のクレーンヘリコプターが、39個のアンテナ部品を一つずつ上空へ運んだ。完成したアンテナは全長96.1メートル。フットボール競技場よりも長い。

CNタワー完成

CNタワーの建設工事が完了したのは、1975年4月2日。アンテナを含む高さは553.33メートルに達した。2009年にドバイのブルジュ・ハリファ(全高828メートル)が完成するまで、世界で最も高い自立式建造物として記録を保持した。
一般公開は翌1976年6月26日。開業と同時に、トロントを代表する観光名所となった。なかでもメイン展望台の「360 Restaurant」は、フロアがゆっくりと一周する回転式。席を立つことなく、トロントの街並みやオンタリオ湖をあらゆる方角から望むことができる。

新たなオーナーシップへ

1995年、Canadian NationalはCNタワーを、連邦政府が所有する「Canada Lands Company」に売却した。同社は、国有不動産やレジャー施設の管理・運営を担う組織で、この売却によってCNタワーは名実ともにカナダを代表するランドマークとなった。
現在もCNタワーは17のテレビ局・ラジオ局の送信を担う一方、世界中から年間約200万人が訪れる観光名所でもある。その二つの役割を支えるため、500人を超えるスタッフが日々運営に携わっている。

完成を歓迎する声ばかりではなかった

©︎Wikimedia Commons – The Wx Researcher

パリのエッフェル塔、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングのように、大都市には街を象徴する高層建築がある。しかし、トロントにCNタワーが誕生することを、すべての市民が歓迎していたわけではなかった。
2025年の価値に換算して約1億3,000万ドルにのぼる建設費や長期にわたる工事、Metro Centre再開発計画の中止など、不安材料は少なくなかった。「CNタワーは崩れ落ちる」といった噂まで広がり、航空関係者からは飛行ルートを妨げ、事故につながるのではないかとの懸念も示された。さらに心配の声は、渡り鳥の飛行への影響にも及んだ。

ハリウッド映画が不安をさらにあおった

1974年には、ポール・ニューマンやスティーブ・マックイーンらが出演したパニック映画『タワーリング・インフェルノ(The Towering Inferno)』が世界的な大ヒットとなった。超高層ビル火災を描いた作品は、CNタワーへの不安を抱く市民心理をさらに刺激した。
そのため、メディアや科学者、CNタワーの経営陣や広報担当者は、安全性について繰り返し説明を重ねることになった。
しかし完成後、その懸念は次第に消えていく。送信能力の高さを皮肉交じりに「電子レンジでテレビが映るようになった」と冗談が語られるほど電波環境は改善され、市民生活は大きく向上した。さらに「360 Restaurant」にはオープン当初から約500件もの予約が殺到し、CNタワーは瞬く間にトロントを代表する観光名所として定着した。

公開初週末を襲った雷雨

1976年の開業当時、メイン展望台とレストランの入場料は2ドル、最上部のSkyPodまで入っても2ドル75セントだった。
しかし、公開最初の週末は思わぬ試練に見舞われる。激しい雷雨に襲われ、風で従業員が倒れたことから屋外展望デッキは閉鎖。さらに4基あるエレベーターのうち2基で雨漏りが見つかり、一時運転を停止した。
開業前には「エレベーターで乗り物酔いする人が続出するのでは」と心配されていたが、その不安は杞憂に終わった。一方で、来場者たちはトロント上空で繰り広げられる雷雨という、自然が生み出す壮大なスペクタクルを特等席から目撃することになった。

CNタワーの建築を輝かせるイノベーション

ガラスの床を支える“クモの巣”の強さ

CNタワーの名物の一つが、Lower Observation Level(メイン展望台の一階下)に設けられたガラスの床だ。地上340メートルを超える高さにありながら、高い強度を誇る特殊なガラスが使われている。
原料は、シリカ(二酸化ケイ素)や酸化ナトリウム、石灰、酸化マグネシウム。ソーダ瓶や花瓶、メイソンジャーなどにも使われる身近な素材だ。しかし、分子構造が規則正しく並ばず、左右非対称になっていることで割れにくい強さを生み出している。
この不規則な構造は、実は自然界のクモの巣にも共通する特徴だ。CNタワーのガラスの床は、自然が生み出した強さの仕組みを受け継いでいるのである。

年間約75回の落雷にも耐える

©︎Wikimedia Commons – Rau lHeinrich

高さ553メートルを誇るCNタワーでは、落雷への対策も万全だ。タワー内部には全長にわたって銅製の避雷システムが設けられており、雷が落ちると電流は避雷針を通って地下の接地設備へ安全に流される。
CNタワーには年間平均約75回もの落雷があるとされるが、大きな被害を受けないのは、この高度な避雷システムが機能しているためだ。

風に強い秘密は「フラフープ」の仕組み

オンタリオ湖畔にそびえるCNタワーにとって、強風への対策は欠かせない。鍵を握るのは、3本の脚で支える三角形の構造だ。脚は上へ行くほど細くなるため、風を受ける面積を減らしながら重心を低く保ち、高い安定性を実現している。
さらにタワー内部には、土台と中心部を結ぶ何百本ものワイヤーロープが張り巡らされ、揺れを最小限に抑えている。頂上のアンテナには重り付きのリングが取り付けられており、風による揺れを打ち消す役割を果たす。


その仕組みは、フラフープが体の動きに合わせて自然にバランスを取る様子に似ている。風が強い日でも、CNタワーはこうした精密な構造によって、安全性を維持している。

360Restaurantを楽しもう!

©︎Wikimedia Commons – Scott Webb

どんなレストラン?

メイン展望台(LookOut)にある「360 Restaurant」は、地上351メートルに位置する回転式レストラン。フロアが72分かけて一周するため、食事を楽しみながらトロントの街並みやオンタリオ湖の景色を360度眺めることができる。
ステーキやシーフードを中心に、カナダ各地の食材を生かした料理を提供。2006年には、世界で最も高所にあるワインセラーとして認定され、約9,000本を収蔵できるセラーには、カナダをはじめ世界各国の約500種類のワインがそろう。

利用前に知っておきたいこと

©︎Wikimedia Commons – Antony – 22

食事はアラカルトまたはコースから選べるが、大人は最低75ドル(4〜12歳は40ドル)の利用が必要。この料金には、レストラン専用エレベーターの利用と展望フロアへの入場料も含まれている。

おすすめメニュー

特別なディナーなら、75ドルのPrix Fixeコースがおすすめ。さらに、ファースト・ネーションズ出身のシェフ、デビッド・ウルフマン氏と共同開発した「Indigenous Menu」では、先住民の伝統食材や調理法を取り入れた、ここでしか味わえない料理を楽しめる。

通な楽しみ方

©︎Wikimedia Commons – Naimi Grondin

ディナーだけでなく、記念日や特別なデートにも人気。ワインとデザート、またはシャルキュトリーボードが付いたセットプランには窓側席が確約される特典もあり、100〜200ドルほどで利用できる。
プロポーズはもちろん、4〜6人ほどの誕生日会にも最適。ホールケーキ(75ドル)の予約も可能で、各プランは公式ウェブサイトから事前予約できる。

スリル満点!「EdgeWalk」に挑戦

©︎Destination Ontario / Kevin Arnold

CNタワーを代表するアトラクションが、2011年にギネス世界記録で「世界最高所の屋外周回ウォーク」と認定された「EdgeWalk」だ。

©︎Destination Ontario

地上約356メートル、ビル約116階に相当する高さで、参加者はハーネスを装着し、展望台外周の幅約1.5メートルの通路を歩くことができる。眼下に広がるトロントの景色を眺めながら歩く体験は、スリル満点。CNタワーならではの忘れられない思い出になるだろう。

面白い特徴がいっぱい!
CNタワートリビア

trivia #1
2076年に開かれるタイムカプセル

1976年6月26日の開業日、当時のカナダ首相ピエール・トルドー氏は、「LookOut(メイン展望台)」の壁にタイムカプセルを埋め込んだ。
中には、各州首相からのメッセージをはじめ、当時の新聞や鉄道の切符、メニュー、広告など、1970年代のカナダを物語る品々が収められている。さらに、CNタワー建設に携わった関係者全員の名前や、工事の様子を記録した映像も保存されている。
このタイムカプセルが開封されるのは、CNタワー完成から100年を迎える2076年。未来の人々へ向けた、トロントの歴史を伝える貴重なメッセージとなる。

trivia #2
タワーをデザインした建築家たち

CNタワーの建築設計を担ったのは、ジョン・アンドリュースと、トロントの建築事務所WZMH Architectsを率いたウェッブ・ゼラファ、メンケス・ハウゼンらだった。
オーストラリア出身の建築家ジョン・アンドリュースは、トロント大学スカボロー・キャンパスの建築群や、ウェスタン・オンタリオ大学のD.B.ウェルドン図書館など、カナダ各地で数多くの建築を手がけた。
WZMH Architectsもまた、トロントの街並みを形づくってきた建築事務所の一つ。スコシア・プラザや、カルガリーのサンコー・エナジー・センター(旧ペトロ・カナダ・センター)などを代表作に持つ。CNタワーは、こうした建築家たちの発想と技術が結集して生まれた。

trivia #3
1970年代、空の上にディスコがあった

1979年、CNタワー内に「Sparkles」というディスコがオープンした。建設費は75万ドル。当時、世界で最も高い場所にあるディスコとして注目を集めた。
店内には50台ものストロボライトをはじめ、ネオンチューブ、レーザー、スモークマシンが設置され、きらびやかな空間を演出。ダンスだけでなく、ディスコ・ファッションショーも開かれるなど、トロントのディスコ文化を象徴する存在となった。
Sparklesは10年以上にわたり、ほぼ毎晩営業。1980年代に入ると、日曜日にはスウィングやビッグバンド、月曜日にはオールディーズを流すなど、幅広い世代を取り込む工夫も重ねられた。

trivia #4
「インスタ映え」を先取りしていた?

©︎Destination Ontario / Ryan Lee

メイン展望台の大きな窓ガラスは、1枚あたり約0.5トン、厚さ約7センチ。さらに、温度によって色味が変化する「サーモクロミック技術」が採用されている。
この特殊なガラスのおかげで、時間帯や日差しの強さに左右されにくく、美しい景色を撮影しやすいのが特徴だ。


「インスタ映え」という言葉が生まれるはるか前から、訪れた人が景色を美しく写真に残せるよう工夫されていた。CNタワーは、時代を先取りしていたのかもしれない。

trivia #5
58秒で展望台へ。エレベーターも見どころ

CNタワーのエレベーターは、時速約22キロで上昇し、地上からメイン展望台までをわずか58秒で結ぶ。現在では世界最速ではないものの、1976年の開業当時としては画期的なスピードを誇った。
完成当初は4基だったが、増え続ける来場者に対応するため、1996年に2基が増設。さらに2008年には、そのうち1基の床の一部がガラス張りに改装され、北米初のガラス床エレベーターとして話題を集めた。
高速で地上から空へ駆け上がりながら、足元に広がる景色まで楽しめる。展望台に着く前から、CNタワーならではのスリルが始まっている。

trivia #6
建設中、唯一の犠牲者がいた

CNタワー建設中の1974年、コンクリート検査員のジャック・アシュトン氏が、強風で飛ばされた合板に頭を打たれ、命を落としたとされている。高所からの転落事故ではなかったものの、建設に伴う唯一の死亡事故として伝えられている︒
この事実は、CNタワーの公式な歴史ではほとんど触れられてこなかった。2026年5月のHot Docsで公開された50周年記念ドキュメンタリー『The Tower That Built a City』のマーク・マイヤーズ監督も、制作当初は関係者の多くから「建設中の死者はいなかった」と聞かされていたと明かしている。
華やかなランドマークの歴史の陰には、建設に携わった人々と、その過程で失われた一つの命があった。

trivia #7
EdgeWalkは無理…という人は「OverView」へ

©︎Wikimedia Commons – Ken Lund

「EdgeWalkはちょっと怖い」という人におすすめなのが、Lower Observation Levelにある「OverView」だ。
階段を上り、斜めに傾いたガラス窓に身を預けるように前屈みになると、まるで空へ飛び出すような感覚を味わえる。鳥になったような気分はもちろん、角度によってはマイケル・ジャクソンの“前傾ダンス”を体験しているような感覚にも。もちろん手すりがあるので安心だ。
入場チケットがあれば自由に利用でき、同じフロアには開放感あふれる屋外テラスも併設されている。

trivia #8
展望台に上らなくても楽しめるタワーショップ

CNタワーのタワーショップは、展望台の入場チケットがなくても利用できる。観光の途中や、近くを訪れた際にも気軽に立ち寄れるスポットだ。
店内には、CNタワーをモチーフにした定番のお土産をはじめ、カナダらしい雑貨や先住民アーティストによる工芸品などが並ぶ。トロントの思い出はもちろん、カナダ土産を探す場所としてもおすすめだ。

trivia #9
街の想いを映し出すイルミネーション

©︎Wikimedia Commons – Javier Ortega Araiza

毎晩さまざまな色にライトアップされるCNタワー。2007年に導入されたLED照明システムは約1,670万色を表現でき、トロントの夜景を象徴する存在となっている。
バレンタインデーにはハート、ハロウィンにはパンプキン、クリスマスには雪の結晶。スポーツチームが優勝を目指す時にはチームカラーで街を盛り上げるなど、季節やイベントに合わせた演出も見どころだ。


ライトアップは祝日だけのものではない。多文化都市トロントらしく、さまざまな民族の文化や世界的な記念日、チャリティ活動への賛同も光で表現される。非営利団体などはライトアップを申請することもできるが、実施には審査が必要だ。
一方で、国内で悲惨な事件が起きた時や、戦死したカナダ軍兵士が帰還した際には、毎時最初の5分間だけ照明を落とし、追悼の意を表す。CNタワーは街を照らすだけでなく、トロントの喜びや悲しみを静かに映し続けている。

trivia #10
季節と時間で表情を変える、地上346メートルからの景色

天気に恵まれれば、CNタワーからは約160キロ先まで見渡せる。ナイアガラの滝や、遠くニューヨーク州まで望めることもあるという。

©︎Wikimedia Commons – The City of Toronto

夕焼けが少しずつ夜景へと変わる時間、地上346メートルから見下ろす紅葉、雪に包まれた冬の街。季節や時間帯によって、トロントの景色はまったく違った表情を見せる。

©︎Destination Ontario

CNタワーの公式ウェブサイトでは、タワーに設置されたライブカメラも公開されている。空の様子を確かめながら、訪れる日を選ぶのも一つの楽しみ方だ。

trivia #11
年に2回だけ、階段で頂上を目指せる

普段は利用できないCNタワーの階段を歩いて登れる特別な機会が、毎年春と秋に開催される。5月の「WWF Climb for Nature」と、11月の「United Way ClimbUp」。いずれもチャリティを目的とした恒例イベントだ。
毎年約2万人が参加し、集まる寄付金は250万ドル以上。参加者全員の歩数を合計すると約3,500万歩にも達するといい、その一歩一歩が自然保護や地域支援へとつながっている。
普段はエレベーターでわずか58秒の道のりも、この日だけは自分の足で挑戦する特別な体験へと変わる。

trivia #12
感覚過敏に寄り添う「Low Sensory Mornings」

CNタワーでは月に2回ほど、自閉症や感覚過敏のある人が安心して来館できる「Low Sensory Mornings」を実施している。
開催時間中は入場者数を大幅に抑え、エレベーターや館内の混雑を軽減。照明や音も通常より控えめに調整され、刺激から離れて休める静かなスペースも用意されている。
開催日は公式ウェブサイトで確認できる。チケット購入画面で対象日を選ぶと、耳をふさぐ人のアイコンと「Low Sensory Experience」の表記が現れ、専用の入館時間を予約できる。
当日のスタッフはAutism Ontarioによる研修を受けており、感覚過敏への理解を持って来館者を迎える。誰もが自分のペースで景色を楽しめるようにする、CNタワーの多様性への配慮が感じられる取り組みだ。

【おわりに】

人間は高層マンションや高層ビルなど、背が高いものに何かしら憧れがあるのだろう。そこにレストランや「EdgeWalk」などの体験、つまり「思い出」という形の憧れを組み合わせたCNタワーは最強だ。今まで通り、ニーズやデマンドに合わせて見どころを改良していけば、これから何十年先もリピート来場する人が訪れるのだろう。
50年先も新しい景色を見させてくれることを期待したい。