犯罪も変化している?銃と麻薬そして犯罪グループについて最近の傾向|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第37回】

犯罪も変化している?銃と麻薬そして犯罪グループについて最近の傾向|白ふくろうの「カナダの社会・経済」ネタ探し【第37回】

 大変ご無沙汰しておりました。白ふくろうは、冬の間巣ごもりしておりました。おかげで体重がたいへんなことに。これからは運動し食事を抑えて体重を減らさなくては。

 さて、今年に入り新型コロナウィルスCOVID-19が世界中で蔓延し大変なことになっていますね。この記事が出る頃には終息の兆しが見えているといいのですが。

 久々の今回は、COVID-19のお話ではなくカナダの闇の部分、犯罪、中でも銃と麻薬、そして犯罪グループについて最近の傾向をご紹介したいと思います。

犯罪グループについて

銃の密輸と違法販売、麻薬の闇取引などの犯罪を行っているグループ反社会的勢力には、主に以下の3つの組織があるようです。

「組織的犯罪グループ」

日本風に言うと暴力団ですが、Canada’s Criminal Code Definition Section 467.1(1)でCriminal Organizationを次のように定義しています。

 組織だったグループで、カナダ国内、国外にいる3人以上で構成され、グループもしくはグループを構成する構成員によって、一つ以上の重大な犯罪を計画、手配し、結果、直接、間接的に経済的な意味を含む具体的な利益を得ることを、主な目的、もしくは主な活動としている

ここには、一回の犯罪で都度利益を得るグループは含まれていません。

具体的な犯罪としては、ID盗難、人身売買、子供への性犯罪チャイルドポルノ、クレジットカード詐欺、偽造品などが挙げられます。

時にこうした組織に対して「マフィア(Mafia)」という言葉が使われますが、もともとのマフィアという言葉はイタリアの「Sicilian Cosa Nostra」という組織の呼称で、今ではシシリー島出身の血を引くアメリカ人で組織される犯罪組織に対しても用いられます。

近年は、アジア系の犯罪組織も台頭し、特に香港を中心とする中国系、そしてベトナム系の組織が大きくなっているそうです。また、南米(コロンビア)、カリビアン(ジャマイカ、ハイチ)、ロシア、東ヨーロッパなどの組織の活動も活発化しているとのこと。かつては、日本の暴力団も拠点(別宅?)を構えていたという噂も耳にしたことがありますが、確証はありません。

「ストリートギャング」

前述の犯罪組織とは別に近年問題になっているのがストリートギャング(Street Gangs)といわれるグループです。
このグループについて法的な定義は見つけられませんでしたが、警察のレポートでは次のように定義されていました。

 反社会的行為、DRUG麻薬売買などの犯罪を意図する人間がそれぞれの意思で集まったグループ。連携力は弱く、その行動は組織化されていない。また、若者に対し平凡な生活では得られない何かを得られると吹聴し仲間に引き込んでいる。未成年者や若者を集めているが、その中心は年配者であることが多い

「無法者バイクギャング」

最後に無法者バイクギャング(Outlaw Motorcycle Gangs – OMGs)について。

 バイク運転者で構成される非常によく統制された組織で生活のために違法な活動をする集団。「1%ers」とも呼ばれ、法に縛られない生活を望むバイク乗りの1%に相当すると言われることもある。強い命令系統と厳しい規律がある。

 それぞれの組織を表すエンブレムが入ったジャケットやジャンパーを纏い、対立するギャングメンバーや一般市民に存在をアピールしている。暴力や恐喝などが主な犯罪活動

これら3つの犯罪組織・グループが、カナダ特に大都市であるトロントやモントリオール、バンクーバーで暴力犯罪や抗争を引き起こしているようです。

犯罪グループが起こす犯罪について現状を説明

こうした犯罪グループが起こす犯罪について現状を説明しましょう。

まずは
DRUG麻薬について

カナダでは、2018年10月17日から医療用大麻使用に続いて、娯楽用大麻も解禁となりました。先進国で最初の解禁国ということで、世界中から注目を浴びており、またビジネスチャンスとしても捉えられています。

白ふくろうは、娯楽用大麻解禁には反対の立場ですが、その最大の理由がDRUG麻薬中毒への入り口となっていることです。

DRUG麻薬と言っても様々なものがあります。大麻を始め、MDMA(エクスタシー)、コカイン、ヘロイン、メタンフェタミン、LSDなど。

こうしたDRUG麻薬は、どこから入ってくるのでしょうか。

北米にある麻薬の南北ルート

北上ルートは、コロンビアやメキシコから南カリフォルニアを通ってカナダ西岸に入るルート。その時カナダに持ち込まれるのが、コカイン、ヘロイン、メタンフェタミンなどです。

そして逆にカナダから南下するものは、MDMA(エクスタシー)と大麻。こうした大規模な犯罪グループには、カナダ人、メキシコ人、セリビア人、中国人、スーダン人と世界中の犯罪組織が絡んでいるのだそうです。

そして最近はさらに強力なDRUG麻薬も出回るようになっています。

FENTANYL

もともとは、鎮痛剤でモルヒネの100倍の効果があると言われる処方薬だそうですが、その効果に目をつけた組織が違法に密輸入し流通させているようです。

多くは、ヘロインやコカインと混ぜて使用するそうで、タブレット錠のため、普通の処方薬に見えるのが曲者。臭いも味もなく、見分けるのが非常に難しく、知らずに服用すると過剰摂取となる非常に危険なDRUGです。形状としては、その他にも粉末、液体、紙状のものもあり、純度の高いものだと、たった2ミリグラムで大人が死亡する可能性があるのだそうです。誤ってもしくは意図せずに摂取したり吸引したりすると、死亡することもあり、近年カナダ国内でもそれが原因での死亡件数が増えているとのことです。

愛用者の間での隠語として、

隠語

などと呼ばれるそうです。

こうした言葉をクラブ、バー、少人数のパーティーなどで耳にすることがあれば、ヤバい人たちだと思って注意し、避けるようにしてください。

こうしたDRUG麻薬を密輸入しているのは、ドラッグディーラーと言われ、個人であることも小さなグループであることもあるとか。問題はそこから先。彼らのお得意先は、「Street Gangs」、ヘルズ・エンジェルに代表される「Outlaw Motorcycle Gangs」と大きな犯罪組織です。彼らが資金稼ぎのために市中で闇販売しているのだそうです。

銃事件の増加問題

そしてもう一つ心配なのが、こうした麻薬取引の縄張り争いなどの抗争に使われる銃についてです。

カナダの10万人当たりの殺人事件発生率は、1970年代後半から減少を続けていましたが、2014年を底にして、以後増加に転じています(図1)。

図1

その原因は、抗争の激化と銃の使用と言われており、2016年には銃による殺人がもっとも多くなっています(図2)。

図2

白ふくろうがカナダに来た頃、トロントの路地裏で違法な銃を500ドルで買うことができると言われており、そうした銃が犯罪組織の縄張り争いの抗争に使われていました。

違法な銃と銃弾数発を格安でレンタルする裏ビジネス

しかし、その後、密輸入銃の裏市場取引相場も2000ドルくらいまで値上がりし、いわゆるチンピラには手の出せないものとなり、一時密輸入銃の裏ビジネスは下火になったと言われました。しかし、それに代わって、国内で盗まれた銃や、改造・変造銃が使われるようになりました。また、最近は、違法な銃と銃弾数発を格安でレンタルするという裏ビジネスも起きているようで、今頻発している発砲事件にはそうした銃が使われている可能性が高いと言われています。

違法な銃の多くはアメリカからの密輸入品

しかし、依然として、違法な銃の多くはアメリカからの密輸入品で、マイアミ周辺からデトロイトやナイアガラを陸路で経由し遠路3000キロを運びトロントに入ってきているようです。米国では、銃は200ドルから300ドルで購入することができ、それをカナダの裏市場では3000ドルで売りさばけると言われ、犯罪組織にとっては大きな収入源となっていると言われています。

また、カナダ国内で合法的に購入したものや、盗難で盗まれた銃をダークウェブなど使い、裏社会に違法販売する輩も増えているのだそうです。

まとめ

近年の発砲事件、銃による殺人事件の多くは、ストリートギャングによるものを言われており、組織統制が緩く、構成員の特定が難しいため、犯人逮捕に時間がかかるのが問題になっています。

大麻解禁と麻薬に魅了された中毒被害者の増加、違法な銃の供給元の多様化と低廉化、そして実態を掴みにくいストリートギャングの台頭と抗争激化が、今後ますますカナダの治安を悪化させていくような気がします。

〈資料〉 カナダ統計局より