カナダと日本で比べてみる「美しさとは?」|特集「SDGs・女性とジェンダー平等 in Canada」

 日本を離れてみると日本で美しいとされていた常識は必ずしも他の国で同じということではないということに気づく。
 例えば、日本人は目が小さめで一重なことにコンプレックスを抱いている人が多いが、外国ではそれがアジアンビューティーとして認識されていることが多いため、アイプチや整形などで「二重をつくる」という日本ではよくある行為も「なぜそこを?」と疑問に感じる人が多い。

 このように、国内で「これが絶対的な『美』だよね」という共通認識の中で生きてきたものからすると、国外をみてその常識がひっくり返るさまはとても興味深いのだ。ここでは、そんな「美」の違いを日本とカナダの観点からみてみようと思う。

日本の美の基準とは?

 日本で美しいとされている見た目は?と聞かれて思い浮かぶものはどんなものだろうか?時代によってトレンドはあるもののここずっと変わらない王道なところと言えば、「色白」、「ぱっちり二重」、「小顔」などが挙げられるだろう。

 白肌文化は、実に奈良時代には始まっていたようで、当時からすでに白粉(おしろい)で顔を白く塗るメイクを施していたよう。時代は変わり、江戸時代にはよりナチュラルな白肌を目指し、透明感を出すための白粉の塗り方といったメイク術が『都風俗化粧伝』にて紹介されているのだとか。いまの時代もナチュラルに、素顔のようにみせるための一見ナチュラルだけど考えられたベースメイクなどを紹介しているメイクアーティストも多い。

 兎にも角にも日本の美意識は世界から見ても高いとされていて、肌のお手入れ、髪のお手入れ、ボディケア、ネイルなど爪の先から足の先までケアを欠かさない女性が大多数のようだ。

カナダの美の基準とは?

 カナダの美の基準を調べると分かることは、カナダでは外見の美しさへの基準がないということ。というのも、世界でみても上位にあるカナダのダイバーシティな環境では、「これが理想的!」というタイプを確率させることが不可能なのだ。肌の色も、瞳の色も、異なるグループの中で「絶対的にこれが美しいよね!」と共通の認識を得ようとすることはまず難しいだろう。

 最終的に美とは主観的なもので、カナダではどんな見た目も美しい、ということがカナダの美の意識となっている。そのような考え方は、各々のユニークな美しさを引き出すことに貢献している。

メイク事情 in Japan

 そこで今度は日本のメイク事情に注目してみよう。カナダ人からの視点でみると日本人は常にメイクをしっかりして美意識が高い印象があるという声を聞く。

 実際、日本ではメイクをするのが当たり前という認識が見られ、スッピンで電車に乗れるか、コンビニに行けるかとかいうテーマの会話が繰り広げられることもあるくらいだ。そのため、メイクのタイプも流行にそって多様にある。

 いつの時代も王道な自然な美しさを引き出す「ナチュラルメイク」、や、「モード系メイク」、YouTubeなどで流行った「地雷メイク」、顔の系統が似ていて真似しやすく、その国らしい美しさも醸し出せる「オルチャンメイク」や「チャイボーグメイク」などなど、様々なメイクを楽しんでいることが伺える。

メイク事情 in Canada

 カナダでは、メイクも自己表現のひとつとされているため、ノーメイクを極める人もいれば、アーティスティックなメイクで自分を表現する人もいる。

 一般的なメイクの流行としては、マットな肌にカットクリースやコントゥアなどを取り入れて、骨格やパーツを大胆に強調したフルグラムメイクが2016年頃に流行したが、最近は、ナチュラルな傾向にあるようで、眉毛などもしっかり描くのではなく、パーマとワックスでふんわり仕上げる「ハリウッドブロウリフト」や、「ソープブロウ」といったスクリューブラシと専用の石鹸を使い、自眉毛を立たせるやり方だったり、ファンデーションなしで気になるスポットのみにコンシーラーを塗ってパウダーだけのベースメイク、アイラインはハッキリした線よりも、アイシャドウを使った、よりナチュラルなラインを描いたりと、より自然な見た目の中にゴージャス感が加えられたものがトレンドルックなようだ。

会社にメイクしていくのは常識?

日本

 日本社会では「メイクはマナー」だと捉えられている。特にサービス業や営業などの職種では凝っていなくてもベースメイクや、眉メイク、口紅は最低限必須となっている。その背景に、身だしなみを整えることのひとつにメイクが入っていることが伺える。

 現在、日本では職場にメイクをしていく女性が9割近くいて、必ずしも全員がメイクが好きだからというポジティブな理由ではなく、マナーだからということでやらなければいけないからやっているという人も過半数はいるようだ。

 しかし、あるアンケートでは職場でノーメイクの女性についてどう思うか、という質問に半数が「どうも思わない」と答え、「あまり良くない」が3割、「いいと思う」が1割以上いた。

 マナーは時代により変化するもので、多様性が謳われている中、メイクをしないという選択肢が認められ受け入れられるようになる時代も近いのだろうか。

カナダ

 カナダでも日本ほど強くはないが会社にメイクをしていくということがマナーだと少なくとも捉えられている事実があるようだ。その理由はメイクをした方がノーメイクの状態よりもよりプロフェッショナルにみられる事にあるようで、女性の成功にメイクは少なからず貢献していると思っている女性も少なくない。そんな中、メイクをしていくことで周囲からオブジェクティファイされること(性的な対象として見られる、女性を物として見られる)を心配している女性も多数みられる。

 カナダ人の女性の話でとても興味深かったもので、彼女は高校の先生をしていて、生徒に社会でメイクをすることが義務だと思われたくないので職場にはメイクをしていかないというものがあった。そういった我々の小さな行動が次の世代の「常識」を変えていくことができるのだろう。

日本とカナダでのファッションの違い

 日本とカナダのファッションの違いをみてみよう。日本もカナダも目まぐるしく変わる流行でスタイルもどんどん変わっていくところは同じのようだ。
 いまの流行を踏まえた全体的な違いとしては、日本では可愛らしく、女性らしい、身体のラインがあまり見えないふんわりとしたシルエットの洋服が好まれる印象がある。

 比べて、カナダではカジュアルでリラックス要素の高い服装がトレンドとなっている。例えばスウェットの上下に綺麗めアイテムをひとついれてバランスを取ったルックだったり、ヨガパンツに薄いシャツの上からジャケットを羽織ったりとメンズライクな中にどこか女性らしさが見え隠れする格好が好まれている印象だ。

 また、日本ではヒールが普段使いとして履かれる頻度が高いのに対して、カナダではフラットシューズや、スニーカーが定番となっている。

パーティールック

 特別な日やお呼ばれのときのドレスを見てみると、日本は比較的ドレスというよりもワンピースのようなカジュアルだけど綺麗めで肌の露出も少なめなものがよく着られる印象だが、カナダではザ・ドレスといった豪華な見た目で身体のラインがはっきり出るような形のものが多い。また、週末の夜のお出かけなどでもそういった豪華で派手なドレスと高いヒールを履いて思いっきりファッションを楽しんでいる印象がある。

オシャレを楽しめる日本の冬と寒さ対策命のカナダ

 個人的に1番大きな違いかなと思うところで「冬のファッション」がある。日本では、重ね着ファッションや、可愛らしいセーター、ロングスカートなど、冬ならではのファッションが楽しめる。

 一方、カナダの冬は氷点下が当たり前。一般的な秋冬ファッションを楽しめるのは一瞬で本格的な冬が訪れれば、ウィンタージャケットは手放せず、スパッツとズボンの重ね着命、スノーシューズで雪対策、などオシャレよりも冬を生き残るための寒さ対策に重きを置いた格好になるのはしょうがないだろう。冬は暗めの服装で着込んだ人が行き交う街並みも春が来れば溜まっていたものが弾けたように、カラフルで思いっきりファッションを楽しんでいる人に溢れて見ていても楽しいのがカナダだ。