出産・子育ての2択「家事代行・シッター利用、あなたは?」

出産・子育ての2択「家事代行・シッター利用、あなたは?」

反対 「自分のことは自分でしなさい」
○ 賛成 「効率アップ、心強いサービス」

終わることのない子育て

以前、「妊娠・出産、そして子育ての現実」というタイトルで記事を掲載頂いた。「海外での妊娠、出産、子育て」という華やかな響きとは裏腹に、助けてくれる人がいない、文化が違う、日本語情報が乏しいなど、妊娠期や出産直後のみならず、海外での子育ては日本での生活とはまた別の苦労が多いという話。

乳幼児の子育ては、毎時間毎分がとにかく大変。授乳をしたり、離乳食やご飯を作り食べさせては片付ける、オムツを替えお風呂に入れ洗濯をし、少し子どもと遊ぶ。また授乳にご飯作り・・・そして寝かせては泣かれ、また寝かせる、そして疲れ果てた自分は寝落ちする・・・これの繰り返しで、とにかくいつもせわしない。

先輩ママや親世代は口を揃えてこう言う、「すぐに成長しちゃう、そんな甘えてくれるのは今だけ、あっという間に親離れしちゃうよ」。頭では分かっているが、泣き叫ぶ我が子を目の前に、そんな悟りの心で子どもと接することができるお父さん・お母さんは少ないだろう。今のこの瞬間がシンドイ、思い通りに事が進まない今のこの場面をどう乗り切るのか、それが大問題なのだ。

我が家の子ども達は4歳と3歳になり、育児は形を変えてきた。この年齢になると子ども同士で勝手に遊ぶし、夜泣きもなく寝かしつけの必要もない。オムツ替えもなければ、食事もボロボロこぼしながらでも自分達で口へ運ぶ。でも、やっぱりせわしない。学校や習い事への送迎、家事をしながら兄弟喧嘩の仲裁、早朝から週6でお弁当作りという家庭も多い。やっぱり今をどう乗り切るのか・・・それが毎日ストレスとして蓄積する。そんな親のストレスに子ども達は気付いているものである。一時期長男がよくこう言っていた、「お母さんはいつも忙しい」。しばらくは聞き流していたが、ある日気付いた。私の口癖が「早くして!」だったことに。

家事のアウトソーシング~カミングアウトできない現実~

昨年こんな記事を目にした。「日本の女性管理職率は11.1%で世界96位」、先進国にも関わらず、伝統的な男女の規範を果たす強い役割分担がある、という分析だ。ちなみにアジアで唯一トップ10入りしたのはフィリピン(47.6%)だった。フィリピンでは家事・育児代行という文化が浸透しており、女性の社会進出を実現させているらしい。日本でも家事代行サービスやベビーシッター斡旋業者が注目され利用者も増えてきているが、まだまだこの「伝統的な男女の模範」が、日本の女性また男性の意識の中にあり、家事代行サービスを利用している人はなかなかカミングアウト出来ないという現状がある。

1日は24時間と決まっている。息子の言う通り世間の母は「忙しい」。そんな中で私の1日の最優先項目はたった3つ。1.子ども達との時間、2.仕事、3.夫婦の他愛無い会話。やるべきことは山のようにあるが、限られた時間内で優先させているのはこの3つ。子どもに母の手料理を毎日食べさせ、童謡にあったような「お母さんは洗濯と卵焼きの匂い・・・」という状況は我が家にはない。カミングアウトしよう、私は週1で炊事と掃除をヘルパーさんにお願いしている。

優先項目は人によって様々だろうし、それは個人・各家庭で決めること。家事・育児サポートの利用は、特に海外生活で頼る人が少ない部分をプロに補ってもらうといったところだ。そしてそこでできた時間を優先順位の高いものに充てることができる。仕事に打ち込むのもよし、家族との時間に使うもよし。これはそれぞれの価値観で異なる。

私の場合、時間と心に余裕ができることで、「早くしなさい!」を少しでも減らし、家族での会話や笑って過ごせる時間が増え、仕事に全力で向き合い、また自分自身の将来を見つめることにもつながっているように思える。

家事・育児サポートの普及~意識改革から~

私が営んでいるWELLNESS KIZUNAでは、日本人看護師やDoulaの産後サポートサービスを提供している。通常は出張乳房マッサージのように、何か問題が発生し依頼を頂くということが多い。カナダでは家事代行・育児サポートを利用している人は多いが、日本人女性からこういった依頼を頂く機会はまだまだ少ないのが現状だ。

しかし、ペットボトルの水やお茶を購入するなんて、2-30年前には考えられなかった。家事・育児サポートの普及もこれから広がっていくだろう。これからトロント日系コミュニティーでも社会で活躍する日本人女性が増え、弊社では産後サポートだけでなく、もっとオールラウンドに家事や育児をサポートできる機会が増えれば良いなと考えている。また、カナダを訪れる次世代の日本人が、こちらで活躍する日本人を目標に世界中で活躍してくれるのではないかと期待している。

追記になるが、先日知り合いのカナダ人の女医さんに「トロントで日本人の家事代行・シッター斡旋サービス」はないかと聞かれた。特に日本にゆかりのある人ではなかったが、日本人の「おもてなし」の精神、マナー・慣習が好きだと、日本人限定で探したいということだった。家事・育児代行をお願いすることには慣れない日本人は多いが、相手のことを思いやった質の高いサービスを提供できる要素を日本人は持っていると私は思う。その医師の言葉になんだか嬉しい気持ちになった。

姜 裕子さん

McGill大学看護学部卒業後、カナダで看護師として活動した後、日本に帰国。大学院や製薬会社に勤務。2008年にカナダに戻り、6年間会計事務所のマーケティングに従事。2014年末に退職後、WELLENSS KIZUNAを立ち上げる。プライベートでは1男1女の子育てに奮闘中。