いよいよ開幕!第46回トロント国際映画祭 9月9日(木)~9月18日(土)|第二特集 「トロント国際映画祭」

 昨年、世界的なコロナ禍により多くの映画祭が中止になったりオンラインのみでの開催となったりする中、トロント国際映画祭(TIFF)はトロント中心部での現地上映と、カナダ国内からアクセス可能なオンライン上映を併用する形で開催されました。昨年の上映作品数は長編作品が50作品程度で、現地での上映も1回当たり最大50席までに制限するなど、2019年以前に比べて大幅に規模を縮小し、非常に限定的な開催となりました。

 今年も、世界的な感染拡大が続く中での開催となるため、昨年同様にトロント周辺での現地上映とカナダ国内でのオンライン上映を併用する形での開催となります。ただし、昨年に比べてワクチン接種が進むなど、感染防止対策が取られてきたこともあってか、今年のTIFFは作品数が200本弱、現地上映も屋内会場が5箇所と昨年に比べて増加し、開催規模に復活の兆しが見えます。

 そんな今年のTIFFについて、8月中旬までに公式発表された情報をもとに、上映形態の詳細や、チケット情報、注目作品などをご紹介します。ただし、今後のトロント周辺地域の状況次第で、TIFF開幕時の状況には変更があるかもしれません。詳しくは、TIFF公式サイトで最新情報をご確認ください。

TIFF公式サイト: https://www.tiff.net/

劇場での屋内上映は5箇所まで復活

 昨年の屋内上映会場は、全スクリーンいずれも200席から300席規模の「TIFF Bell Lightbox」のみでした。今年は、「TIFF Bell Lightbox」「Roy Thomson Hall」「Princess of Wales Theatre」「Cinesphere Theatre at Ontario Place」「Scotiabank Theatre」の5箇所まで屋内上映が復活します。

 中でも、3000席規模を誇る「Roy Thomson Hall」の復活が嬉しいところです。「Cinesphere Theatre」は、オンタリオ湖畔にある世界でも有数の巨大IMAXが入る劇場です。ここでは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』のIMAX特別上映が予定されているなど、期待が高まります。

 屋内上映のチケットは、通常上映が25ドル、プレミア上映が40ドル。今年も全席均一料金です。なお、今年もまた距離を保つために座席数を減らし、全席指定で販売されます。また、昨年同様に入場待ちの列で人が密集するのを避けるため、上映の1時間以上前には会場に来ないようアナウンスされているほか、当日券のRushチケットも販売予定がありません。

ドライブインシアターを含む3箇所での屋外上映

 昨年初めて導入された上映形態である屋外上映が、今年もオンタリオ湖畔で実施されます。「Festival Village at Ontario Place」に、「Visa Skyline Drive-in」と「RBC Lakeside Drive-in」の2箇所のドライブインシアターと、「West Island Open Air Cinema」の野外劇場の計3箇所が予定されています。

 昨年同様、ドライブインシアターのチケットは乗員1~2人の車が49ドル、乗員3人以上の車が69ドルです。また、野外劇場のチケットは、2人用の区画が38ドルです。

オンライン上映(デジタル上映)

 昨年初めて導入されたオンライン上映(デジタル上映)が、今年も実施されます。オンライン上映を実施するプラットフォームのdigital TIFF Bell Lightboxで視聴可能ですが、カナダ国内からのアクセスに限定されています。

 今年の変更点は、オンライン上映も現地会場での上映と同様に作品ごとに上映開始日時が設定されていて、再生開始から終了まで4時間の間に視聴する必要があるところ。チケット料金は昨年と同じで、通常上映が19ドル、プレミアム上映が26ドルですが、今年は個別チケットの発売に先行して、6月末からデジタル上映チケットがパッケージ販売されました。その際、Patrons Circleという上位ランクのTIFF会員向け先行販売期間中にプレミアム上映分は予定数が完売し、後に続く下位ランクのTIFF会員は購入できなくなるほど大人気でした。昨年は、現地会場分もオンライン分も、全上映回に対し個別チケットしか発売されなかったのに対し、今年はデジタル上映チケットが先行でパッケージ販売されたことで、一般発売時にはプレミアム上映のデジタル上映チケットが昨年以上に入手困難になるかもしれません。

オンラインイベント

 昨年に引き続き「In Conversation With…」のオンラインイベントが、TIFF Bell Digital TalksというTIFFのオンラインプラットフォームで予定されています。「In Conversation With…」のチケットは12ドルで、TIFF会員なら無料です。なお、digital TIFF Bell Lightboxでのオンライン上映がカナダ国内からのアクセスに限定されているのに対し、TIFF Bell Digital Talksでのオンラインイベントは世界中から視聴可能です。

 昨年、「In Conversation With…」は日本からでも視聴できたので、トロントに行けない人も、このプログラムだけ視聴してみてはいかがでしょうか。話題の監督や俳優が、1時間くらい中身の濃い対談をしてくれる充実プログラムです。また、TIFF Bell Digital Talksでは、俳優や監督などとの対話型Q&Aセッションも予定されています。

チケット争奪戦

 やはりみなさんの一番の関心事であろうチケット販売について。これまでに発表されている情報をご紹介するとともに、昨年の状況を踏まえて今年はこうなるのでは?という勝手な予想もご紹介します。この予想は昨年、開幕後の実際の状況と比べて大きく外してしまったところですので、話半分に思っていただければ幸いです。

 今年は6月末から8月中旬まで先行して、デジタル上映の「通常上映」と「プレミアム上映」の2種類のパッケージが、5枚、10枚、20枚といった単位で販売されていました。このパッケージ販売で先行購入した人は、8月24日に上映スケジュールが発表された後、購入した枚数分の希望上映回を選択して、各上映回のチケットに引き換えることになります。その上映回選択期間は、TIFF会員は8月29日開始、一般は9月1日開始で、9月2日に終了予定となっています。

 上映回ごとの個別チケットは、8月26日から順次販売開始となります。例年と同様に、まずはTIFF会員向けに販売が始まり、会員ランクに応じて多額の年会費を払う会員ほど早期に購入できる仕組みです。9月4日がTIFF年会員への販売開始、9月5日がメルマガ登録会員(TIFF Insiders)、最後となる9月6日が非会員への販売開始、という日程です。一般で最も早く購入できるのは、9月5日のTIFF Insiders枠です。例年、8月中を目途にメールアドレスを登録しておけば、チケット発売の1、2日前にパスワードの入ったメールが届き、TIFF Insiders向けのチケット購入が可能になります。

 昨年と異なるところは、デジタル上映のみパッケージ販売のチケットが復活した点。一昨年までと同様に、一般向けの個別チケット発売前に、パッケージ購入者の上映回選択期間が設けられています。

 以前から、このパッケージ購入者向け上映回選択期間中に人気の上映回の座席はどんどん埋まり、個別チケットの発売日にほとんど残席がない状況になりがちでした。パッケージ販売がなかった昨年は、上位ランクのTIFF会員から順次開始された個別チケットの発売直後、現地上映・オンライン上映ともに、プレミアム上映などの人気上映回からどんどんチケットが売り切れていきました。今年は、昨年同様に1アカウントで購入できるチケットの枚数が、ひとつの上映回に対して2枚まで、という制限はあるものの、一昨年までと昨年の状況を考えると、やはり今年も人気作品のチケットはすぐに完売となりそうです。

 上映作品が50本程度まで絞られた昨年に比べ、今年は200本弱まで復活し、また「Roy Thomson Hall」や「Princess of Wales Theatre」など2千席から3千席規模の屋内会場も復活します。このため、昨年に比べたらまだチケットが入手しやすいのではないか、と淡い期待を寄せるばかりです。

レッドカーペット

 今年は、レッドカーペットは「Roy Thomson Hall」や「Princess of Wales Theatre」の屋内に設けられ、ファンゾーンは設けられません。また、密を避けるためにメディア関係者もレッドカーペットには招待制となっており、2019年以前に比べて大幅に制限して実施されます。このため、以前のように一般の映画ファンがレッドカーペットのスターからサインをもらって交流するような光景は、まだ今年も見られそうにありません。ただし、昨年からTIFFは、現地参加できない世界中のファンに向け、公式SNSでのライブ配信を充実させていました。公式サイトをこまめにチェックして、オンラインで現地の空気を味わうことをおすすめします。

トロントにいる幸運を

 今年のTIFFは、昨年に引き続き異例の状況が続いており、開幕までどうなるのか、やっぱり予想がつきません。というのも、TIFFは昨年から一貫して、トロント周辺の状況をギリギリまで見極めたうえで、できる限り現地会場での上映に持っていこうと直前まで検討を重ねているように見受けられるからです。長年にわたりトロントの街を挙げて築いてきた映画祭の場が、かけがえのないものだと実感しているからこそ、このような困難な状況においても、できる限り従来のような映画祭が体験できる場を提供しようとしているように見えます。世界各地からの渡航が難しい中、トロントで今年の映画祭を目の当たりにできるみなさんは、ぜひその幸運を体感してほしいと思います。