『ザ・ゲスイドウズ』ワールドプレミア翌日に、宇賀那健一監督、主演の夏子さん、喜矢武豊さん、ロコ・ゼヴェンベルゲンさん、遠藤雄弥さんにインタビューをさせてもらった。ワールドプレミアを終えての感想や、映画制作秘話など、皆さんの作品への愛を感じられるお話をたくさん伺えた。

最高に盛り上がった『ザ・ゲスイドウズ』のミッドナイト・マッドネスを終えて

―昨日のワールドプレミアに参加してみて、皆様それぞれいかがでしたか。
監督: ミッドナイト・マッドネスが盛り上がるのは知っていたんですけど、ここまで盛り上がるとは思っていなかったので、めちゃめちゃテンション上がって、喋ろうと思っていたことが吹っ飛びましたね(笑)。
でもめちゃくちゃ楽しかったし、バンドメンバー紹介のとき、それぞれメンバーの名前を言うたびにお客さんの反応(拍手と歓声)があったの、めっちゃ嬉しかったですね。
夏子: 本当に初めての映画体験でしたね。映画を楽しんで、盛り上がって、歓声をあげるお客さんを目の当たりにしたのは初めてのことでした。
ロコ: 本当に楽しくて、最高でした!
ミッドナイト・マッドネスの観客は素晴らしかったですね。ミッドナイト・マッドネスは本物の映画ファンがTIFFを楽しめる場所だと思います。
喜矢武: めっちゃ盛り上がってましたよね。あんなにエキサイトすると思っていなかったので、海外ってすごいなと。映画を観てる感覚じゃなくて、ずっとライブを観ているような感覚でしたね。日本には絶対にないし、良いなあと思いました。
遠藤: トロント、やっぱりすごいですよ。あれだけ盛り上がるんだってびっくりしましたし、劇場も大きくて、あんな劇場は日本にはないので、あの劇場で自分が携わった映画を観れたのも嬉しかったです。
Q&Aでのカナダのお客さんの観点も鋭く、ちゃんと観てくれているなと思いましたし、映画との向き合い方、芸術との向き合い方が素敵だなと思いました。
監督: 日本だとQ&Aで手が挙がらないですから。海外でこうやって質問してもらえて嬉しかったです。
4人のケミストリーの理由

―昨日のQ&Aでもハナコの役柄がすごかったと反応がありました。ハナコの役柄は個性的で、現実感がなくなりそうなところですが、観客は引き込まれていました。どのように役作りを進めましたか。
夏子: あまり事前に作り込むことはなく、現場に行って4人が揃うと、自然とハナコが出来上がっていました。クランクインする前にバンド練習をしていたので、現場に入ったときには、みんな気の知れた仲になっていました。
―4人のケミストリーは、リハーサルの段階で出来上がっていたのでしょうか。
監督: 必死だったのが良かったよね。期間が短くて、ここまでに曲を習得しなきゃいけないと大晦日もみんなで集まって、バンド練習したのが良かったのかも。期間が長くて余裕があったら、また違ったような気がします。
―ロコさんは、日本語は少し分かると伺いましたが、どのようにバンドのケミストリーを作っていったのでしょうか。
ロコ: 皆が面白くて、カリスマ性があって、お芝居をすること、音楽を演奏することが好きだったからできたのだと思います。本当のミュージシャンではない人もいますが、それは関係なくて。不思議なことに本当にすぐに仲良くなれたんです。
小さいスタジオで全員で練習して、曲を覚えないといけないという状況だったからかもしれません。3回くらいの練習で覚える必要があって、ちょっと難しかったけど、とてもいい曲でした。それを全員でできるようになって、自分たちを誇りに思ったし、本物のバンドになれたような気がしていました。
キャストの皆さんから見た宇賀那監督

―宇賀那監督の映画作りと、これまで他の作品に出演したときとの違いはありますか。
夏子: 宇賀那さんに初めて会ったとき、こんな子供みたいな大人がいるんだなと。心が少年のまま、ものづくりを真剣にされている方で、今までお会いした監督の中で一番ピュアだなと、そこが違いだと感じました。
―今回、宇賀那監督の趣味がハナコの台詞にたくさん盛り込まれていました。理解して、自分のものにして役として表現するのは難しくなかったですか。
夏子: 最初に台本をいただいたときは8割くらい分からなかったです。全部調べて、それでも出てこない格言もあって。でもどうにか全部解釈することができ、すごく勉強になりました。
喜矢武: 僕は同い年で、撮影が始まる前から飲みに行ったりしていました。友達みたいな感覚で良いのか悪いのか。他にも歳が近い監督はいますが、こんなにフレンドリーに接してくれて、現場でも何でも言ってくれる監督は他にはいません。こだわりはあるけど、現場でもこうしたい、ああしたいと自分のビジョンが出てくる方で、すごく自由な監督というイメージですね。
演技していて、めちゃめちゃ楽しかったです。そんなに役者の経験がたくさんあるわけではないけど、今までと違う感覚でした。うがちゃん(宇賀那監督)のおかげで成長できた。
―ご自身が監督でもあるロコさんの映画制作と宇賀那監督の映画作りは、どのように違いますか。
ロコ: 健一は私の先生のような存在です。私が制作した作品は1本ですが、健一は100万本くらい制作しているから(笑)。『ザ・ゲスイドウズ』に参加して、健一が映画を制作しているのを見ることができて、とても興味深かったです。お芝居をしながら、健一の映画制作の技術も学ぶことができました。
健一は、キャストやスタッフを信頼しているのだと思います。彼らが素晴らしい作品を作れると信じているから、良いバンドのようなチームが出来上がるし、効率が良くスムーズだと感じました。健一のおかげで新しいアイディアを持つことができたので、これから映画を作るのが楽しみです。
監督: 四者面談みたいで、すごく恥ずかしいんだけど(笑)。
―事前インタビューでお話を聞いたときに難しい内容がたくさんあったので、俳優の皆さんは理解するのが大変だったのではと思いました。
喜矢武: わりと最初のほうから任せてもらって大丈夫だなと思っていました。僕の役割的にも、やっぱり夏子を主軸に周りは空気で楽しませるっていう役どころだったので。僕は何も考えずに入れて楽しかったですし、あとは任せますという感覚でしたね。
監督: 喜矢武さんはいろいろやってくれるんで、「何かいろいろある」の台詞も、もっと声を大きくしてください、3回言ってくださいと指示しました。
喜矢武: あのシーンは、自分で笑いそうになっちゃって、危なかったですね。なんとか一度でオッケーだったんですけど。(3回言わせるのも)さすがですよね。2回目までだったら、僕がスベってましたから(笑)。ちゃんといい間で笑いが起きたから、天才だなと思いました。いい感じに編集で切ってくれてたので、タイミングがバッチリでしたね。
遠藤: 宇賀那さんは、今作もそうですけど、今までに作られてる作品も多作だし、幅が広いですね。さっき夏子ちゃんもおっしゃってましたけど、すごいセンスの塊で。好きなものの格好良さとか、昨日も観客がそれを理解して共感していく感じが、やっぱり宇賀那さんの素敵な映画作りだと思いました。現場でもたくさん任せてもらって、それも宇賀那さん独特の演出方法だったのかなと思います。
TIFFで感じたこと、皆さんのこれから

―今回トロントに初めて来て、今後の映画作りや演技に影響しそうなことはありますか?
監督: ここにもう一度来て、この人たちにまた映画を観てもらおうという、その一つの自分の大きなモチベーションになりました。
夏子: 映画がすごく好きになりました。ものすごく。今回お客さんと一緒に客席で観られたこともあり、お客さんの温度感や、純粋に楽しんでくれているのを肌で感じられました。自分が普段映画を観るとき、無意識のうちに俳優としての見方がどこかにあったんだなとも気づきました。映画ってもっと純粋に楽しんで観なきゃだめだなと、お客さんに教えてもらいました。
ロコ: 健一は映画制作の才能が素晴らしいと思う。短い期間で作り上げて、世界最大級の国際映画祭であるTIFFに選ばれていることがその証拠です。
昨日も劇場で作品を観て、良い映画を作るために必要なことを改めて考え直しました。健一は夢を与えてくれました。
喜矢武: 笑いのポイントや盛り上がるポイント等の反応が日本とは全然違うから、今後どうしていけばいいんだろうと考えましたね。海外向けのやり方がきっとあるでしょうし、逆にそれを日本で海外向けっぽい感じでやっても面白いのかなという、どうなんでしょうね。
―普段のゴールデンボンバーでのパフォーマンスは、海外のやり方に近いような印象を受けますが。

喜矢武: たしかに。でも難しいんですよね、やっぱり文化の違いがあるので。ライブ自体はものすごく盛り上がると思うんですけど、面白さでいうと、こっちの文化をもっと勉強しないと。面白さの本質を伝えるのが難しいんじゃないかなと思います。
遠藤: 昨日はお客さんの反応がすごかったんですけど、改めて映画は国境も文化も越えるんだなと感じました。ひたむきにやっぱ日本人として映画を作っていけたらいいなと、改めて身が引き締まる思いになりました。
監督・出演者プロフィール

宇賀那健一
1984年、東京生まれ。2016年に『黒い暴動』で長編映画デビュー。他の監督作に『サラバ静寂』(2018)、『異物-完全版-』(2021)、『悪魔がはらわたでいけにえで私』(2023)など。
夏子
1996年、東京生まれ。モデルとしてデビュー後、2016年より俳優として活動。他の出演作に『ABYSS アビス』(2023)、『女囚霊』(2023)、『MY (K)NIGHT マイ・ナイト』(2023)など。
喜矢武豊
1985年、東京生まれ。エアーバンドのゴールデンボンバーでギタリストとして活躍。他の出演作に『ROAD TO HiGH&LOW』(2016)、『HiGH&LOW THE MOVIE』(2016)、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』(2017)など。
ロコ・ゼヴェンベルゲン
『I Need You Dead!』(2020)で映画監督デビュー。独立系映画制作会社Bad Taste Videoの代表を務め、ニューヨークを拠点とするバンドMEDIUMでドラマーとしても活躍している。
遠藤雄弥
1987年、神奈川県生まれ。『ジュブナイル』(2000)で映画初出演。他の出演作に『無頼』(2020)、『ONODA 一万夜を越えて』(2021)、『辰巳』(2024)など。
売れないパンクバンドのメンバー4人が、田舎に移住して売れる曲を作れとマネージャーから言い渡される。田舎暮らしを始め、農家の畑仕事を手伝いながら曲作りに励むが、農作業は失敗続きで、新曲は一向に生まれない。苦悩しながら4人で共同生活を続けるが…。日本では2025年2月28日(金)劇場公開予定。
監督・脚本: 宇賀那健一
主演: 夏子、今村怜央、喜矢武豊、ロコ・ゼヴェンベルゲン、遠藤雄弥
©2024 “THE GESUIDOUZ” Film Partners

