TORJA映画コラムニスト・みえ的 2021年はこれ最高だったよね
お正月休みの私的恒例行事として前年に観た映画を振り返り、それをちゃっかり紹介してスッキリしてしまうこのコーナー。かれこれ三年目となりますが、三度目の正直、今年もやりますマイベスト披露。アンタのベストに興味ねーから面白いネタよこせ、って声は今年も聞こえないふりをして。
毎回言ってますけどね、こういう映画を好むヤツが書くからあんなコラムになるんだってことを理解してもらう良い機会ですので。言い訳はこのくらいにして、2021年に見た新作368本からマイベスト10作品です。
第1位『空白』
(Intolerance)
監督: 𠮷田恵輔
11月号で、𠮷田恵輔監督のインタビューとあわせてご紹介したこの作品、振り返れば2021年で最も忘れがたい1本でした。苦悩に満ちた魂のぶつかり合いと、ぶつかる人と人の間に存在する心の救済。すべての場面が焼き付いて離れません。
https://kuhaku-movie.com/
第2位『Scarborough』
監督: シャーシャ・ナカイ、リック・ウィリアムソン
2021年のトロント国際映画祭(TIFF)観客賞の次点に輝いた作品。移民や貧困層が多いトロントのスカボロー地区に暮らす3人の子供たちと家族を、地域コミュニティでの関わりを通して描いた群像劇です。地域のすべての人々が細やかに描かれていて、昨年のTIFFで最も好きな作品でした。TIFF Bell Lightboxでの上映も予定されているので、トロントの皆さんにはぜひ観てほしい1本です。
https://www.scarbfilm.com/
第3位『すばらしき世界』
(Under the Open Sky)
監督: 西川美和
2020年のTIFFでワールドプレミア上映されたこの作品、日本では2021年に劇場公開されたため、昨年のベスト入りです。長期刑に服した受刑者ながら真っすぐな性格の男が、生きづらい世間で社会復帰しようともがく姿と、周囲の人との関わり。この世界で果たして何が正義かと観客に突きつける瞬間の連続に、心を持っていかれました。
https://wwws.warnerbros.co.jp/subarashikisekai/
第4位『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』
(The Comeback Trail)
監督: ジョージ・ギャロ
ここまでの3本が、重いテーマを扱いながら心をわしづかみにする作品だったのに対し、ただ心から楽しめたのが『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』です。資金繰りに窮した映画プロデューサーが、自殺願望のある往年のスターを主演に起用し、撮影中の事故を装って保険金を手にしようと企むハリウッド内幕もの。最高に楽しいコメディでした。
https://comeback-hollywood.com/
第5位『プロミシング・ヤング・ウーマン』
(Promising Young Woman)
監督: エメラルド・フェネル
泥酔した女性につけこもうとする男性に酔ったふりをして近づき、男性が狼藉を働こうとすると成敗する女性。何が彼女を駆り立てるのか、物語が進むにつれ明らかになると、わが身を振り返らずにはいられなくなります。軽快さと裏腹に哀しみが満ちていく、類まれな作品でした。
https://pyw-movie.com/
第6位『アメリカン・ユートピア』
(American Utopia)
監督: スパイク・リー
デヴィッド・バーンによるブロードウェイの舞台を映画にした本作、ただただ幸せになれるからすごい。うまく説明できないんですが、歌とパフォーマンスに釘付けになる至福の映画でした。
https://americanutopia-jpn.com/
第7位『フォーリング 50年間の想い出』
(Falling)
監督: ヴィゴ・モーテンセン
昔から折り合いの悪かった認知症気味の父と行動を共にする中で、父も子も過去のわだかまりに向き合わざるを得なくなる話。親子の会話に、観ているのが辛いほど心をえぐられるものの、忘れがたい1本でした。
https://movie.kinocinema.jp/works/falling/
第8位『クリスマス・ウォーズ』
(Fatman)
監督: イアン・ネルムズ、エショム・ネルムズ
メル・ギブソン主演のクリスマス映画です。コメディです。以上。いや、これ以上は何も知らずに観ていただきたい。何も知らずに観に行った私、サンタクロースの世界では実はこんなことが起こっているのか、なんて思いを馳せつつ、大満足でした。
https://klockworx-v.com/cw/
第9位『Swallow スワロウ』
(Swallow)
監督: カーロ・ミラベラ=デイヴィス
裕福で優しい夫と結婚し、何不自由ない生活を手に入れたかに見えた女性が、異物を飲み込むことに充足を覚えるようになる話。満たされない何かを自覚できないまま行動がエスカレートする危うさと、鮮やかな色彩の美しい不気味さは、観ているこちらを虜にする魅力にあふれていました。
https://klockworx-v.com/swallow/
第10位『あのこは貴族』
(Aristocrats)
監督: 岨手由貴子
都内の由緒ある家柄の箱入り娘と、地方から上京した女性が、東京の街でそれぞれに迷いながら生きていく姿を描いた作品。見えにくいけれど間違いなく存在する日本社会の格差がリアルに描かれ、影響し合いながら各々の道で自立していく女性のたくましさやしなやかさが清々しい作品でした。
https://anokohakizoku-movie.com/