YouTube時代のプロモーションのあり方、お金のかけ方|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第34回

YouTube時代のプロモーションのあり方、お金のかけ方|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第34回

MrBeast Burger

 昨年12月、アメリカで「MrBeast Burger」というハンバーガーショップがオープンしました。MrBeastとは、フォーブスで「2020年に最も稼いだYouTube Star」として2位にランクインした若干22歳のユーチューバーで、オープン当日には実に32㎞もの長蛇の列が出来たそうです。というのも、人気ユーチューバーがハンバーガー屋さんをオープンしたというだけでなく、なんとハンバーガーは無料、それどころか来店したお客さんに100ドル札をバンバンを配り、しまいにはiPadや車まで大盤振る舞いでプレゼントしてしまったそうです。長蛇の列はひどい交通渋滞となり、警察が出動する騒ぎとなり、MrBeast Burgerは一日で閉店を余儀なくされました。

 ただ、ここからが驚きの展開で、MrBeast Burgerはデリバリーのみのゴーストキッチンで全米で一挙に300店舗をオープンし、注文アプリはApp Storeにて1位を獲得、ハンバーガーアプリで即座にナンバーワンの座に就き、ロケットスタートを切る事になりました。当然、前述の実店舗はこのためのプロモーションだったわけですが、ひと昔前には考えられなかった、ここまでトリッキーな広告宣伝費の使い方が成立してしまうのは、ひとえにそういう時代という事なのでしょう。

インフルエンサー×飲食のプロ

 しかし、超人気ユーチューバーといえど、ここまで大掛かりな打ち手を実際にオペレーション出来るものではなく、バックにはちゃんと仕掛け人がついていました。それは、マライヤ・キャリーのクッキー屋さんや、ラッパーのタイガのチキンナゲット屋さんを手掛けたバーチャルダイニングコンセプトという、宅配オンリーのレストランブランディングカンパニーの存在です。ロバート・アールという、ハードロックカフェを成功に導き、アーノルド・シュワルツネッガーやブルース・ウィリスらが出資を行ったプラネットハリウッドレストランを立ち上げるなど、アメリカで一世風靡した飲食界ではやり手の仕掛け人が率いていました。今後、こういったインフルエンサーと飲食のプロが手を組んで、大規模な商戦を挑んでくるようなことは、もしかしたら増えてくるのかもしれません。

破壊的イノベーションを伴ったプレイヤーの参入

写真はイメージです
写真はイメージです

 肝心の味のほうは自分もまだ試せてないのですが、トロントにも既に数店舗あるのでいずれ試してみようと思っています。ただ、資本のあるプロフェッショナルが関わっている以上、かなり高いレベルのクオリティである事は間違いないでしょう。そしてそれ以上に、こういった破壊的イノベーションを伴ったプレーヤーがこの規模で新規参入してくると、既存のハンバーガーチェーンはたまったものではないという事は想像に難くありません。これが、寿司屋や居酒屋、はたまたラーメン屋として参入してきたら、間違いなく業界の地図が書き換わるのではとゾッとしてしまいます。

 MrBeastが飲食店の新たな可能性を開き、時代の先駆者となるのかどうかは、今後、注視していく必要がありそうですが、新しい施策が機能するということは、これまでのやり方が通用しなくなる危険性をはらんでいることと同義ですので、しっかりと時代を見据え、時代と共に歩んでいきたいと思います。