業界の再編、中食市場|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第33回

業界の再編、中食市場|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第33回

コロナ禍で一年が経過

 コロナによって世界が一変して、早くも1年が経ちました。この1年間、希望的観測はことごとく裏切られ、バッドなシナリオばかりが非情な現実として絶え間なく目の前に立ち現われ、翻弄され、擦り切れた一年だったように思います。同時に、いまこうして100年に一度の災厄を生き延びているのもまた事実で、胆力や度胸がついたなぁ、と冷静さを保てている事に少し驚いたりもしています。

 しかし、現在はまだ政府による人件費や家賃のサポートに頼りながら、どうにかこうにかという状態です。それが打ち切られる6月以降、そこからが本当のサバイバルになるのかなと踏んでいます。ということで今日は、飲食業界の現在と未来を、業界の再編、そして中食というキーワードと共に考えてみたいと思います。

予断を許さない業界の再編

 今年2月、「ロイヤルホスト」や「てんや」を運営するロイヤルHDは、総合商社の双日と資本業務提携を結び、再建の土台を固めました。また「塚田農場」を運営するAPホールディングスも同様に、オイシックス・ラ・大地に新株を引き受けてもらうことで資本を増強しています。ロイヤルHDは業界トップテンに入る大手ですし、APホールディングスにしてもさまざまな施策で顧客を虜にする外食産業の旗手といえます。ここから見えてくる事は、一つ目のキーワード、コロナによる予断を許さない業界の再編です。特に、生産から流通、販売までを一本化して生販直結を掲げるAPホールディングスが、ミールキットや生鮮食品の宅配事業をおこなうオイシックスと手を結ぶことは、崖っぷちの資本増強では全くなく、攻めの資本業務提携である事がうかがえます。また、今後、外食や中食の垣根が、否応なしに、なし崩しに進んでいく象徴的な事柄とも言えるかもしれません。

日加の外食産業の市場規模

 さて、中食という二つめのキーワードが出てきました。中食とは、外食に対して、調理されたお惣菜やお弁当を外で買ってきたり、デリバリーしてもらって家の中で食べる事を指します。日本以外で、この中食を指す明確な言葉は聞いたことがありませんが、カナダでも実際にこの中食市場が広がっているのは、皆さんが身をもって体験している事だと思います。

 ここで突然ですが、日本とカナダの外食産業の市場規模を比較してみたいと思います。

 日本の外食産業は、年間でおよそ35兆円の市場規模がありますが、日本フードサービス協会によると、2020年は15・1%下落したそうです。一方カナダは、およそ700億ドルの市場規模が、カナダ統計局によると2020年は28%も落ち込んでいます。下落の比率がカナダの方が大きいのは、より強烈なロックダウンによるものと見て良いと思いますが、この下落分の食事はどこに行ってしまったのでしょう。コロナによって変わらなかったことの一つは、人類の胃袋の総量です。ですので、外食産業の市場規模の落ち込みは、自炊とこの中食産業に流れ込み、特筆すべきは、カナダの方がこの比率が日本に比べてはるかに大きいという点です。

 個人的に、日本はまだ、いつになったらコロナ前に戻れるか、というような期待が大きいように感じています。これは日本人の気質もさることながら、このパーセンテージを見て取れるように、行動変容の幅の問題なのかもしれません。逆に言えば、カナダは社会全体がコロナ後により大きく変容しているという事なのかもしれません。

 外食にとどまるも、中食に踏み込むも、それは戦略次第で正解はありません。ただし、あとで後悔のないよう、明確な意思を持って自分自身のそして従業員の未来を切り開いていきたいと考えています。