日本食が健康的であると広まった理由|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第31回

日本食が健康的であると広まった理由|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第31回

1970年代のアメリカ

 みなさんこんにちは。毎年、正月感のなさには辟易してしまいますが、今年は特にそう感じてしまうのは、やはりコロナのせいでしょうか。昨年以降、健康にも気をつかうようになり、今年はカナダに来て以来、初めてお正月にお節をいただきました。

 さて、日本食は健康的、というのはもはや一般的な認識だと思いますが、一体その認識はどこからやってきたのでしょうか。実際、日本食は出汁の文化であり、旨味を料理に用いることで、塩分を抑えて過剰摂取を避けてきたという事実であったり、日本食が健康的である理由は枚挙にいとまがありません。

 しかし、日本食が体に良いとここまで一般的に広まったのは、実は、マグバガンさんというアメリカ人によって行われた、7年にも及ぶ調査があったからなんです。

 一九七〇年代のアメリカでは、肥満はもちろん糖尿病、心臓疾患、大腸がんなどが深刻な問題になっていました。当時、アメリカの上院議員だったマグバガンは、この状況を打開するためには、アメリカ人の食生活を見直す必要があると考え、世界中から栄養学や医学に精通したスペシャリストを招集し、栄養と慢性疾患の関係についての研究を始めました。

 数千万ドルの国費を投入し、五千ページにも及ぶ「マグバガンレポート」を提出するまでに、実に7年もの歳月を要したということです。

マグバガンレポート

 マグバガンはレポートの中で、食習慣を変えない限り、肥満は増え、多くの国民はガンになり、いずれ、医療費の増大により国家は破綻するとまで、痛烈な警告を発しました。そしてカロリー摂取の内訳に目をつけたマグバガンは調査を進めます。

 アメリカの当時の摂取カロリーの内訳は、脂肪分が42%、タンパク質は12%、炭水化物は28%で砂糖は18%(図の左)、これに対して理想値はと言うと、脂肪分が30%、タンパク質は12%、炭水化物は42%で砂糖は10%にすべきだと報告されています(図の右)。そしてこの理想的な食事の栄養バランスを体現していたのが、まさに日本食だったという訳です。

コロナを経て…

 その後、日本は高度経済成長期を経て、食は欧米化の一途をたどったという側面もありますが、やはり伝統的な和食であったり、郷土料理や家庭料理などの日本食は、依然として世界の食の中では相対的に健康的なポジションをキープしている印象です。冒頭でも触れました通り、コロナによって人々が健康のありがたみに改めて気づかされた事もあり、ロックダウンを終えた暁には、またカナダで日本食が盛り上がる日を心より楽しみにしています。