外食ビジネスの未来、5つの方向性|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第30回

外食ビジネスの未来、5つの方向性|カナダのしがないラーメン屋のアタマの中 第30回

様々な道を模索していく一年

 TORJAをご覧の皆様、明けましておめでとうございます。昨年はコロナに振り回されっぱなしの一年でしたので、今年は挽回の年にする所存です。今日は、コロナによりこれまでの前提が変わったことを受け、引き続き、様々な道を模索していく一年になると踏んでおりますので、昨年刊行された書籍「フードテック革命」から、「外食ビジネスの未来、5つの方向性」という提言をご紹介いたします。

 まず、コロナが後押しした世の中の流れに、①「レストラン機能のアンバンドル化」があります。これまで飲食店は、食材、シェフ、レシピ、調理、場所、そして顧客という要素がレストランという場所に「バンドル」されて成立していたサービスでした。だからこそ、立地と回転が重要視され、高いレントを支払うためにオペレーションを最大限効率化することが求められていました。しかし、Uber Eatsのようなデリバリーサービスがレストランの売り上げの主力となった今、「場所」の要素はアンバンドルされ、高いレントを払う価値は損なわれています。

 こうしてレストランの機能がアンバンドルされる一方、②「レストラン機能をつなぐプラットフォーム」が台頭しているのはご存知の通りです。これはレストランのフロント側、すなわち顧客とレストランをつなぐデリバリーサービスのみならず、ゴーストキッチンやシェアキッチンというレストランのバックエンド側でのプラットフォームの存在も忘れてはいけません。

店がどのような場所になるのか再定義

 では、「場所」にまったく意味がなくなるのかと言うと、そういうことでもなく、③「『場』が持つ価値の拡張」ということを考えなければなりません。昨年、飲食店はいかに密を避けるか、という対策に追われましたが、その延長で、飲食店がどのような「場所」になり得るかを再定義する必要性に迫られています。人と人とのコミュニケーションがあり、食事というコンテンツを通して、どんな新しい体験を生み出せるのか、という事を起点にすると、そこに大きなポテンシャルがあるはずです。

 それを考えるにあたって大事なポイントは、「目的」となります。飲食に限らず、リアルでもオンラインでもなぜそこに行くのかが問われる時代はますます加速していくことでしょう。そして飲食店は、④「食にまつわるコンテンツの集合体へ」と変化していくそうです。つまり、あのシェフやサーバーに会いに行くという目的から、フードロスの削減に貢献したい、エッセンシャルワーカーに食事を提供するお店を応援したい、といった目的まで、何かしらの食にまつわる要素と目的が合致することで、人は飲食店に足を運ぶことになります。

 最後は、⑤「『感情労働』への本格シフト」です。ロイヤルホスト等を運営するロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長は、今の世の中の労働には、肉体労働、頭脳労働、そして感情労働という3つの労働があると言います。感情労働とは、自分の感情をコントロールしつつ、相手にポジティブな働きかけをして報酬を得るという労働で、学校の先生やお医者さんからシェフやサーバーもこれに当てはまります。

勝機はあると信じて進む

 まとめると、これからの外食ビジネスの未来は、飲食店の要素をバラバラにして、テクノロジーを活用しながら新しい何かとつなげる、そんな風にして新しい世界観の「場」を作り上げ、「感情労働」を通して顧客にどんな「目的」を提供できるかがカギになりそうです。コロナの影響はまだまだ続きそうですが、必ずそこに勝機があると信じて邁進してまいりますので、今後とも、変わらぬご愛顧承りますようお願い申し上げます。