金融不安って何?金利はどうなるの?ヒロの経済展望|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

昨年末、「企業景気が悪いので春先に一回ドシンとくる」と警告していた通りになった。それにしても銀行が突然倒産するとは一般には考えられない事態だ。現代社会があまりにも複雑、かつ影響しあう要素が増えてきたので思わぬところに落とし穴があることに「落ちてから気がつく」のが今の経済の状況だと言ってよいだろう。できれば我々は落ちる前に知っておきたいものだ。お役に立てるかどうかわからないが、ヒロの経済展望を皆さんとシェアしてみよう。

コロナ余波

シリコンバレー銀行やスイスの大手銀行、クレディスイスが突如倒産した。私はその倒産を想定していたわけではないが何か起きるとは思っていた。理由はそんなに小難しい話ではない。これもコロナ余波だからだ。

コロナとなった2020年春、世界の中央銀行は政策金利を思いっきり引き下げはじめ、ついにほぼゼロとした。そりゃそうだ。経済が、人が、社会が止まったのだから。これは正しい。だが、ここからが人間のエゴと欲望と我儘で振り回される。まず、人々はオンラインショッピングに走る。だから物量が異様に増える。しかし、その荷捌きをする人は確保できない。物流は滞るが、船会社は儲かり過ぎて爆笑状態、運賃が垂直上昇となったのは記憶に新しい。

だが、コロナ我慢が出来なくなった英国やアメリカなどが徐々に「マスクを取ろう、外に出よう!」の大攻勢に出た。すると、堰を切ったように人が街に繰り出し、レストランに行き、旅行に行った。ところが従業員は足りないのだ。何故なら「遊びに行くのはいいけれどそこで働くのは嫌」という自己中ばかりだからだ。

何せ、政府がコロナ期間中にどんどんお金をばら撒いた。名古屋の餅巻きに現金が入っているようなものだ。個人の懐は温まる。「これでしばらくは暮らせる」と。

その間、物価はどんどん上昇軌道を描く。何故なら人々がコロナの状況に応じて一極集中の動きをするからだ。おまけにロシアがウクライナを侵攻し、原油などの価格も見る見るうちに高騰した。この辺りから世の中は分かりにくくなったのだ。

どこまで続く金利上昇と物価上昇だ。私は金融市場と毎日対峙している。そしてずっと考えた結論は「人々の動きに世界が振り回されている」ということだ。

金利と物価

アメリカの銀行破綻の説明は極めて簡単だ。詳述はしないが、一言でいえば銀行は預かったお金と貸し出すお金のバランスが重要なのだ。ところがコロナ後の極端な人々の動きとまっしぐらに上昇する金利でそのバランスを保てなくなっただけの話だ。そこにSNSというフレーバーが乗っかったというのがポイントだ。自画自賛ながらこれほど端的に要所をつかんだ説明はないだろう。

では本題の経済展望を考えてみよう。一言でいえば飛行機が乱気流の中でもがいているがもうすぐそこから脱するところにある、というのが俯瞰した見方だ。ただ、もうひと揺れあるかもしれない。それはパイロットの腕次第だ。

物価だが、高値安定になりそうだ。下がることはない。だが、これから更に上伸することもない。何故なら需要が減少し、供給とのバランスが取れないからだ。一つ、ヒントを差し上げよう。皆さんが買い物するのは大手スーパー、それとも個店だろうか?生鮮品なら個店が圧倒的に良い。理由は大手スーパーは流通プロセスでコスト高を生み、かつ、鮮度が落ちるのだ。だから「高い、まずい」ということになる。これだけでも需給バランスが調整されるのだ。

一方、アメリカ中央銀行は金利を上げ続けようとする。これが愚だ。金利と物価にはタイムラグがある。概ね3〜4か月だろう。よって落ち着き始めた物価を見ながら「まだ高い」と利上げをすると「もうはまだなり、まだはもうなり」という相場格言の通りになる。よって私はアメリカの利上げは終わりに近く、カナダも追随するとみている。

もう経済は大丈夫なのか?

では、もう経済は大丈夫なのか、と言えば一つだけ気になることがある。それは信用収縮だ。端的に言えば銀行が金を貸さないということだ。それも中小銀行にリスクがある。これが起きると金融不安が起き、再び倒産劇がないとは言えない。

併せて堪えている業界が不動産REITだ。これは投資家と銀行がほぼ折半でお金を出して多くのオフィスビルやショッピングモールを所有する。お金を貸している銀行は必ずしも大手銀行とは限らない。ここに信用収縮が来ると厳しい。なぜならオフィスはそもそもリモートワークの影響で空っぽで経営が苦しいからだ。カナダもアメリカも事務所の空室率は16~7%だ。新築のオフィスビルですら埋まらなくなってきている。そこに借入金利高となればビジネスとしては泣きっ面に蜂だ。

また、企業業績も危うい。レストランで食事をする回数を減らした人は多いだろう。住宅購入をあきらめた人も多いだろう。旅行に行きたくてもホテルが高すぎるという悩みもあるはずだ。つまりこれらは景気を冷やす重要な行動心理だ。

ヒロの経済展望としては今年はじっとしているしかない、とみている。2年半に及ぶコロナの衝撃から回復するにはそれぐらいの時間がかかるということだ。つまり、2020年から2年半がコロナに冒され、22年半ばから24年がリハビリだ。これぐらいの大きなピクチャーで経済を捉えると不安も少し和らぐのではないだろうか。経済の本格復活は来年からだろう。