スタートアップの出口を考えてみよう|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

カナダに渡ってきた皆さんには企業に雇われ続けるよりいつかは独立したいと思っている方が日本の方々より多いかもしれない。理由は皆さんの周りに手ごろなサイズの会社やビジネスをしている経営者が沢山いて、刺激を受けるからかもしれない。ではそのスタートアップに落とし穴はないのか、考えてみよう。

自分で頑強の鉄板ビジネスを作り上げるためには

バンクーバーのある方が立ち上げたベーカリー。日本的な味で知る人ぞ知る店となり、遠くからもパンを求める人が増え、人伝えに大成功していると聞いた。「あぁ、良かったな。起業は必ずしも易しくないからそういう成功例が出てくればもっと勇気を出す人も増えるだろうな」と。
だが、その破竹の勢いは何故か、突然終わった。理由は分からないけれど、第三者に売却してしまったのだ。まるで人気アイドルが絶頂の時に「解散します!」というものだ。残念ながらそのベーカリーを引き継いだ非日系の会社は以前ほどの勢いはなくなったかもしれない。だが、路線を変えて上手にビジネスをしているな、という印象を得た。

スタートアップはステージによりシード、アーリー、ミドル、レイターと表現する。シードはまだビジネスのネタを温めている段階で、アーリーになるとようやくビジネスに着手、ミドルでビジネスが形になり、単月黒字となるなど安定感を増す。レイターになれば拡大の道のりとなる。その後、IPOとか買収される形になるのがIT関連に多いのは技術の青田買いがあるからだ。

最近は自分の会社が買収されることに喜びを感じる人が多いらしく、「俺の会社、〇億円で売った」と豪語する人を耳にすることもあるだろう。しかし、一度夢のような金額を手にすると次のビジネスに着手できず、そのまま没落人生を送る人も相当耳にしている。

連続起業家、3成功させるなら千分の一の成功率

なぜか、と言えばお金を手にしたので、ビジネスへの情熱が下がるケースが多い。起業ネタはそう簡単に浮かぶものではないし、それが成功する確率は十分の一程度だ。たまたま高額で売却したビジネスに気をよくして「よし、次も…」というとうまくいかないケースが多い。それをうまく乗り越える人をシリアルアントレプレナー(連続起業家)というのだが、連続成功技は十分の一×十分の一なので百分の一の成功率だということだ。3つ成功させるなら千分の一ということになる。

「小銭」で出口をしてはいけない

私の知り合いがビジネスを売却するそうだ。驚いた。しかもその金額は120万ドルだそうだ。仮に買い手がいても買い叩かれるので100万ドルぐらいになるのだろう。私の疑問は「そんな金額で売ってどうするの?」だ。その方はまだ仕事人生を20~30年できる人なのにたかが1億円程度で将来のネタを切り落としてしまうのだ。

1992年にカナダのロックグループが「もしも100万ドルあったら」という曲でスマッシュヒットを飛ばした。今でもラジオではよく耳にする。92年に100万ドルあれば家を買って、高級車を買って小さなボートも買って世界旅行してうまいものを食って道楽できた。しかし、30年間のインフレは実勢で4倍ぐらいになった。1億円なら4億円だ。しかも30年ビジネスすればその儲けもある。つまりビジネスしたいのなら1億円ぐらいの「小銭」で出口をしてはいけないのだ。

あなたが目指すはFIRE?それともキャッシュフローで生きる人?

「もう働きたくない」という人のためにFIRE(経済的自立をしながらの早期リタイア)が一部で流行している。年間生活費の25倍が基準だとされる。ではカナダで年間500万円必要だとすれば1億2500万円だ。では仮に50歳でこの金額で将来働かないとコミットできるか、といえば私には考察の対象外だ。なぜなら自分の余生を年金暮らしのような枠組みにはめ込むことで小さく外にも出なくなり、安っぽいことしか思いつかなくなるからだ。

実は元気ではつらつとしている人はキャッシュフローで生きている人だ。一方、年齢を重ねリタイアすると貯金というアセットの切り崩しをその生活資金の捻出方法にしている。キャッシュフローに依存した人生ならば世の中の趨勢や物価に合わせて給与も増えるだろう。自営の人なら売り上げが増えるかもしれない。だが、預金と投資だけでは週に3度、悠々自適のゴルフ生活も2度になり、1度になるのが目に見えているのだ。

お金を貯める方法

ところで1億円を貯める方法があるのか、と言えばある。入りを増やし、出を絞る。当たり前だろう、と言われるが、私の周りの起業家には入りが増えると出が増える人が多い。給与所得者の場合でも月給が500ドル上がったら支出を400ドルぐらい増やす人が多い。これは逆立ちしても1億円は貯まらない。
それともう一つ、お金はある程度貯まり始めると加速度的に貯まる。例えばあなたの貯金が1万ドルだとしよう。年間4%の利回りのGICで400ドルだ。だが、10万ドル持っていれば4千ドル貯まる。利息の金額は10倍速になるということだ。

スタートアップも同じで初めはいろいろ辛いこともあるのだが、そこを乗りこえて自分で頑強の鉄板ビジネスを作り上げることが肝だ。

そしてその鉄板事業は絶対にブレないからそこから応用ビジネスを展開することだ。私の周りの成功者はほぼこれで大成功している。

一つのビジネスに20年コミットすること、そうすればその鉄板ビジネスはあなたのキャシュカウ(金のなる木)となるはずだ。

幸運を祈る!