変わりつつある日本|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

物価高のカナダからなんだかんだ言いながらもまだ、消費者のお財布にやさしい東京に仕事でやってきた。年数回、日本にきているのだが、今回は昨年10月の来訪に比べて空気の違いを明らかに感じる。良い点、悪い点を含めた東京レポートをお伝えしよう。

Visit Japan Web 成田空港・入国審査

日本に向かう前日にふと気になった。昨年入国に必須だったMy SOSはどうなったのか、何もなくて行けるのか、だ。コロナがまん延していた頃は様々な情報が提供されていたこともあり、日本入国のプロセスをそれなりにフォローしていた。が、どうもそれが終わり、情報がほとんど流れなくなったので調べたところ、My SOSは23年1月13日に無くなっていた。ほう、それはありがたい。だが、それに代わってVisit Japan Webという新しい仕組みがあり、これを登録しないと面倒だということは海外に住む日本人には案外、見落としがちかもしれない。

実際、Visit Japan Webのサイトに行っても不親切極まりない。要はマストなのか、任意なのか明白ではない。「入国手続き、検疫、入国審査、税関申告をウェブで行うことができるサービスです。海外から入国される方のほか、日本に帰国される方もご利用頂くことができます」とだけある。登録内容はMy SOSに近いがやり直さねばならない。面倒だ。また、アプリではないのでウェブにアクセスする必要がある。例によって表示が青になればファストトラックOKだ。

成田に着くと青組と赤組に分けられ、青組は昔のように入国審査まですっと行ける。入国審査は顔認証なので昔と変わらない。唯一の違いは税関審査が人を通じてやるのではなく、機械の画面で処理される点だ。機械にウェブのQRコードとパスポートをかざすと自動処理される。税関職員の人減らしには良いのだろうが、それ以上の何物でもない。ちなみにこのウェブが赤のままで入国しても割とすんなり入国できるようだ。

さて、道中の機内食はクオリティが落ちた、というのが私に聞こえてくる声。昔から某カナダ系航空会社の食事はイマイチとされたが、今は日系航空会社にも結構厳しい声となっている。ただ、ここは割り切るべきだ。この物価高で機内食に期待をすること自体が間違いだ、と。

かつてはビジネスに乗る一つの理由はおいしい食事と各種アルコール類と言われた。私は機内でアルコールが飲めない体質なのとかつて機内ケータリング事業をやっていたことがあり、内情を知っているので決してその言葉には乗せられない。10時間、狭い席で我慢してでも日本で旨いものを食べた方が100倍よろしい。

人々の表情が明るい、景気はかなり良い!

さて、3か月前と日本は何が変わったか、といえばマスク越しなので厳密には分からないが、明らかに人々の表情が明るいのだ。街には人が溢れ、レストランも喫茶店も週末となれば人だらけだ。つまり、何処にも入れず、別の意味での食難民となる。人気ラーメン店に行こうとなればディズニーランドの乗り物乗車待ちと同じぐらいの心構えが必要だ。

ということは人々の金払いもよいということだ。カナダから日本のニュースを見ていると値上げラッシュで悲鳴というトーンが聞こえてくるが、実感としては真逆だ。あれは某テレビ局のマインドコントロールで、ズバリ、景気はかなり良い、とみている。

ではスーパーマーケットはどうだろうか?日本人の価格に対する繊細度はユニークだ。景気が悪い、家計の紐を締めるという意味ばかりではなく、主婦の趣味的要素が高い。つまり、10円の値上がりをみて「まぁ!」とつぶやき「もうこの店には来ない」と言い切り、次の店で「ちょっと高かったけれどこれの方が良い商品なのよ」と全く理解不能な自己納得で消費が進むのだ。

週末の池袋でアニメ系ショップを視察で巡った。こういう時はマスクで顔が少し隠せるからよい。女子中高生に混じった60過ぎのおっさんにはあまりにも刺激が強すぎ、商品を手に取ろうものなら隣にいる女子高生の目線を感じるのだ。「何だぁー、この人?」って。てな具合で、若者の聖地もごった返している。本を読まなくなって苦戦とされる書店もちゃんとおっさんや読書少女たちで溢れかえり、レジには数冊手にした客がずらりと列をなしている光景にほっとするのだ。あぁ、昔の日本に戻った、と。

カナダはどうだろう?

私はカナダのレストランへの失望感が異様に高まっている。それは高すぎるのだ。中には高級和食店で一人数百ドルを当たり前にチャージする店があちらこちらに出来ているが、私は、半分はなくなると100%断言する。高級店には高級店の伝統があるべきであって、突然開店した店が高級店になれるかは別次元の話だと考えている。

銀座のミシュラン星印のフレンチに行く機会があった。首相クラスが使う店なのだが、長年お世話になっていて社長以下よく知っている。今回はその接待に改めて感動した。店の入り口に近づくと、スタッフがドアを開け、私の名を呼び、お待ちしていました、と迎える。接客はソムリエの社長を中心にスタッフ全員で最高の気分にさせる。食事は無論私がコメントするレベルではない。帰る時も社長以下、外まで出て見送りをする。それは私を知っているからではない、誰にでもするその接客と伝統とマナーと食事のレベルがそうさせるのだ。

これを知るとカナダは違うな、という気がする。日本のレベルは格段上だと断言できる。こうやって時々、刺激を受け、カナダのやり方に乗せられないようにしないとダメだなと改めて感じた次第だ。