この夏をどう楽しもうか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

この夏をどう楽しもうか?|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 コロナから解放されてもこれだけ物価が上がるとホテルの宿泊も容易ではなく、飛行機もとりにくく、ガソリンは高い、食糧もレストランも高い…。こうなるとせっかくの短い夏の楽しみ方も悩ましくなる。一方、カナダ人はお金をかけずに遊ぶ天才だ。そんなカナダでの夏の過ごし方を考えてみよう。

 
 私が30年前に初めてカナダに来た時のカナダ人に対する印象を正直述べると「ケチ」「チープ」「貧乏くさい」「家にしか金をかけない」「洗練されていない」…と散々書ける。もちろん、それを10倍打ち消すほどの良い点があるのは言うまでもないが。

 当時の自動車はマニュアル車が多く、エアコンがついていない車も多かった。「車はオートマじゃないと…」といえば「コーナーを曲がるときのシフトダウンが楽しいんだ」と15年ぐらい前のホンダ車のオーナーは自慢げに言ったが、その車でシフトダウンしてカーブを切ろうものなら車がひっくり返るだろうと出かかったのを必死でこらえたのを覚えている。

 食べ物についてはどうだろうか?私は19歳の時、世界でも知れた味音痴大国、英国にいたことがあり、その食への失望とその対策は一生忘れない。インドと中華系移民のおかげで真っ黄色なカレーと赤いチャーシューの入った中華そばが生存のカギでカロリーはビールで補うことを覚えた。カナダも正直似たようなものだ。各国料理がこれだけ揃う中で「カナダ料理」を食べたことがある人はほとんどいないだろう。先住民に絡む料理を別にすればそんなものは存在しない。プーティン、ナナイモバーにフィッシュ&チップスがあるだろうと言われたら袋入りのインスタントラーメンの方がまだよい。

 カナダ人は基本的にお金をかけたり新しいことにはとても保守的で「他人の評価を聞いてから」という人が多い。

よって一旦ブランド化できれば絶対王者のビジネスができる。

 ティムホートンズがその代表例だろう。日常品ならショッパーズにスーパーストアだろうか。だが、私はあまり好まない。理由は流通のせいか生鮮品の鮮度は悪く、価格も魅力的ではない。そこで私はローカルの個店に行くようにしている。八百屋に肉屋だ。この数年は肉屋のショーウィンドウ越しに「これ、2LBください」といった具合で購入している。野菜は八百屋で買うのが絶対に鮮度が良く、価格も安い。

自己防衛と想像力に優れているカナダ人

 今回のコラムで何を言いたいのか、といえばカナダ人は冒頭で述べたようにダサいところが多いのだが、自己防衛と想像力に優れ、私は30年の間に影響を受けてすっかり変身してしまったのだ。野菜や肉も「安くてうまいところは何処か」を必死で探す癖をつけた。

 夏をどう過ごすか、郷に入れば郷に従えで、カネをかけずに大いにエンジョイする方法をみんなで見つける、これが今年の物価高に打ち勝つ方法ではないだろうか?

 昔、ワーホリの方がうちに遊びに来た際、金欠で食事も十分にできないと嘆いていた。その人に「小麦粉と水と塩でうどんを作ろう」と誘った。でもどうやって麺を伸ばすのか、と聞かれたのでカナダ人風に「空いたワインのボトルを転がすのさ」と。

 こちらの家で食をテーマにするなら手巻き寿司パーティーなどは面白い。日本ならさぞかし立派な具なのだろうが、こちらでやればマンゴーなどフルーツに焼肉、ひき肉のそぼろにきゅうりでも旨そうだ。伝統にこだわらないことが楽しさを倍増させる。

日本は形から入る。カナダは楽しければ流儀は自分で作る。

 日本人から見れば無茶苦茶なそんなライフが私は好きなのだ。

 カナダの夏は短い。そのエンジョイの仕方の基本はアウトドアで、SUVや自転車があれば行動範囲は大きく広がる。街中の信号だらけの中を自転車に乗っても何も楽しくない。車に自転車を積み込み、出先でのサイクリングは格段に楽しいものだ。

 トロントは少ないが、バンクーバーは山が多くハイキングやトレイルコースのメッカ。All Trailsというアプリさえあれば山の詳細情報と共にGPS機能でどんな山でも迷うことがなくハイキングを楽しめる。

 雨の日はどうするのだ、と言われれば晴耕雨読でどうだろう。今、円が対カナダドルでも歴史的水準になっている。これはカナダにいる人にとって日本のものが安く買える絶好のチャンスともいえる。私は5年かけて山崎豊子の作品を全制覇し、今、司馬遼太郎読み始めて10年になるがようやく半分に達したぐらいだ。超長期の目標をもってゆっくり進むこともカナダライフの一つだろう。

大河のごとく、とは水がゆっくり流れるような広大な大地を言う。日本は急流ばかりだ。

 まるでせっかちな日本人の性格と似ているが、少なくともカナダでは10年前に売り出したものでも手に入る。スーパーの陳列棚の商品構成はいつまでたっても変わらない。それ故に自分から何か求めない限りこれほど刺激がない国もないともいえる。

物価高で身動きがとりにくいこの夏だからこそ、我々はよりクリエイティブになり、遊びの天才になりたいものだ。

 小型BBQに携帯プロパンをつければ小さな車に乗せて「どこでもBBQ」ができる。日本のお中元コーナーにはキャンプ用BBQセットなる新たなお進物も出来たそうだが、私はスーパーで売っているソーセージをパンにはさめばそれだけでも十分満足。きれいな空気で広々としたところでBBQが出来ればグルメなんていらないさ。それより誰とどう楽しむか、そちらの方がもっと大事だと私は思う。では諸君、思いっきり楽しい自分だけの夏を過ごして下され。