あぶくマネーに気をつけよ、その投資を見直してみよう!|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

あぶくマネーに気をつけよ、その投資を見直してみよう!|バンクーバー在住の人気ブロガー岡本裕明

 これを書いている5月中旬、北米ではインフレ議論が大きく沸き起こっている。モノの値段があちらこちらで上がっているのだ。だが、上がるということは欲しい人が多いということ。それを裏返せばお金があるということだ。そのお金は投資で儲かったのと政府からの補助金かもしれない。だが、あぶくマネーには気をつけろというのは昔からの格言だ。一体世界の経済で何が起きているのか、どう対処したらよいのか、考えてみよう。

 仮想通貨でクルマが買える時代になった。テスラのイーロン・マスク氏は仮想通貨がお好き、と評されている。仮想通貨そのものは否定するものではない。ただ、通貨とは商品やサービスを購入するための代替手段であって手段の価値が揺らぐのは経済的に正しくはない。何故なら売り手か買い手のどちらかが必ず得か、損をする羽目になるからだ。

 貿易業者は外国為替の変動に常に付き合わされてきた。私もその一人で毎日、為替をチラ見しながら取引の落としどころを探している。大企業になれば為替の先物予約やヘッジする算段が取れるが私のような弱小ではせいぜい為替手数料をいかに安くするかぐらいしか思いつかない。あとは相場でベストのタイミングを探すしかない。

 為替というのは相対取引で、為替でぼろ儲けというのはあまりない。株価のように何十倍、何百倍になることはなく、そのためにレバレッジを大きくかけて少ない元手で大きく儲けようとするのがFX取引の特徴だ。そしてシーソーであるから先進国通貨同士であればある程度のレンジ相場になりやすい。また、一昔前と違い、為替は非常に安定してきており、新興国を除き、年間変動率は10%以下に収まりつつある。

 ところが仮想通貨、特にビットコインは尋常ではない動きを見せてきた。それに多くの人が乗せられてきたわけだが、私はあえて言う。ビットコインの相場はもう、かつてのようなボラティリティ(変動幅)は期待できない。なぜなら、ETFができ、機関投資家が投資対象にし始めているからだ。言い換えればビットコインは市民権を得たということで、そのために価格のボラティリティは必然的に下がるのだ。これは投資を始める人が肝に銘じて覚えておいてほしいことだ。

 そこで仮想通貨で一財をなした人、あるいはなしそこなった人は次のスターを探し、資金が向かった先がドージコインだ。年初から100倍以上になったとされる。開発者が冗談で作り、柴犬コインともされ、一部の人以外、目もくれなかった代物だ。これがビットコインのように市民権を得られればすごいが、正直、それは疑問だ。とすればこんなものに投資をするのはロシアンルーレットのようなものだと思ってよいだろう。

 いかさま投資とまではいわないが、株式市場にはSPACという「上場空箱会社」が適当な事業案件を買収し、その空箱に詰め込み、事業を育成することが一時ブームとなった。一時、というのは急速に冷めてきているからだ。孫正義氏もこれにご執心のようなのでSPACは無くならないかもしれないが、裏口上場のようなこのやり方が上場企業の威信、あるいは投資家保護の観点から批判も多く注意が必要だ。

カナダの株式相場は強気

 昨年12月号の本稿で「株式を買ってみたい人が知っておいて得すること」としてアメリカの大統領が変わったらゲームチェンジがあると述べた。バイデン氏のアメリカは私から見ると力強さがなく、バラマキでアメリカの威信を感じさせない。コロナからの脱却ははるか彼方に見え始めたが、アメリカの経済力が戻るかどうかは首をかしげざるをえない点は多い。

 アメリカが普通の国なることを想定した投資スタンスを考える、これが私の今回の提言だ。アメリカはドルを基軸として強い影響力と発言力を持った国だった。それゆえに世界から資金が集まり知能が集積され、強く発信する力を持ち合わせていた。

 今後、どうなるか、といえばアメリカ主導の力が同盟国などに分散される公算が高いとみている。私がカナダの株式相場は強気と以前から申し上げているのは相対的価値が上がり、国境を接している分、メリットを最大限享受できるからだ。事実、為替を見ても昨年3月を底に対米ドルでは一直線で上昇している。

 本当の投資とは基本的に中長期で行うことであり、将来の財の安定形成を行うことにある。RRSPでもTFSAでも基本的に老後を含めた家計の健全性が前提となっている。だからこそ、私は配当が良いREITやパイプラインなどインフラ系、金融機関といった銘柄への投資が良いと考えている。

 今や銀行のGICは0.5%程度の利回りであろう。REIT系ならその10倍以上の5〜8%は確保できるし、毎月配当の銘柄も多い。仮想通貨や話題になった株式銘柄への提灯買いをする人も多いだろうが、それでは投資には勝てない。本当に勝ちたいなら、上がりそうな銘柄を自分で発掘し、人気化する前に仕込んでおくことが最も重要なのだ。その為には地球を読み込む、世界を見る、マネーの流れを感じる、投資家の熱量を計る、情報に耳を澄ませる、そしていつでも出動できる資金を用意しておくことが重要だ。

 最後にもう一つだけつぶやいておこう。代表的投資アイテムの金(ゴールド)は見捨てない方がいい。仮想通貨に取って代わることはなさそうだ。理由は簡単。持ち運びに不便だから盗まれにくいのだ。これはハッカーだらけの現代社会に大きな意味を持たせたと思う。