2024年11月3日、日系文化会館にて第二回日本茶祭りが開催された。来場者数はおよそ1300名、49のベンダーが出店し、日本茶と日本文化に対して興味や強い思い入れを持つ人々が集まる盛大なイベントとなった。




会場は一階にはお茶にあう日本食やスイーツを中心としたフードコーナーと、お茶や茶器を中心としたベンダーが、二階には着物や雑貨を販売するベンダーが並んだ。また、時間ごとにワークショップが開催され、来場客は事前(または空きがあれば当日)にチケットを購入することで参加でき、日本から来訪した日本茶業中央会/日本茶輸出組合員による日本茶基礎講座、煎茶道のお茶席や、裏千家淡交会トロント主催の抹茶席、華道家としてトロントでご活躍している杉野綾子先生による茶花のワークショップなど、多数催された。




その他、ゲストスピーカーによる着物、茶器、金継の紹介、書道カナダによる書道の展示や、日本茶業中央会/日本茶輸出組合から、日本茶促進事業の一環として、和菓子や手もみ茶のデモンストレーションが披露され、プログラムは盛りだくさん。来場者は会場を回りながら、ベンダーが提供するお茶の試飲をしたり食事を楽しみながら、とっておきのお茶や商品の買い物を楽しむ様子がみられた。
「お茶と和の文化を学び、和菓子とお茶を楽しむ」
お茶席ワークショップ体験取材

チケットは早い段階で完売するほどの人気だったという裏千家淡交会トロントによる抹茶席のワークショップ。1日に4回、各20~25名ほどの参加者で、日系文化会館の茶室で行われた。

ワークショップは、お茶席についての説明から始まった。茶室にある「和敬清寂」という掛け軸の言葉についても触れられ、これは茶道で、主人と客がお互いの心を和らげて、茶室の品々や雰囲気を清浄な状態に保つことを意味すると説明してくれた。
本来のお茶席は懐石料理や、休憩などがあるため2時間以上かかるが、今回はそのセレモニーの最後の部分を体験できるとのこと。
説明が終わると、着物を着た方々が和菓子を運んできてくれた。日本の老舗、昌月堂さんから、この日の為に輸入した秋のモチーフの「練り切り」だ。見た目も可愛らしく、机に運ばれた瞬間、「わ~」という声も。とても上品な甘さで、和を感じることができた。


和菓子を食べている間、茶室では亭主がお点前をしてくれていて、静かな空間にお茶を点てる優しい音が響いていた。この様子を真剣に見守る参加者たちが印象的だった。
そして、参加者それぞれにお茶が丁寧に運ばれ、お茶をいただいた。お茶は泡立ちがとても滑らかで、甘みとほろ苦さが絶妙に交じり合い、心地よい余韻が残る。静かな空間で、お茶を飲んでいると心が落ち着き、穏やかな気持ちになった。

和菓子とお茶を楽しんだ後は、質疑応答の時間が設けられ、参加者から次々と質問が寄せられていた。参加者は日本茶に興味があって来ているため、すでに知識があって、もっと学びたい、知りたいという気持ちが伝わってきた。ワークショップを通して、お茶と和の文化を学び、そして和菓子とお茶を楽しみ、お茶席ならではの特別な体験をすることができた。
私の隣に座っていた方は昨年も日本茶祭りに訪れていたリピーターで、去年は、抹茶席のワークショップはチケットが完売で参加できなかったため今年はリベンジ参加とのこと。笑顔で和菓子とお茶を楽しみ、「日本に関するものは全部好きで、今はもっと深い部分まで興味があって、新しいことを知れる機会だと思い日本茶祭りに来た」と話してくれた。
ベンダーさんの出店感想
Allseas Sushi
日本から直送する素材を使用したお寿司とネギトロ丼を販売。やっぱり日本食といえばお寿司だね!と言いながらお寿司を美味しそうに食べるお客様が目立っていた。オンラインで注文ができ、デリバリーサービスも提供している。店舗にてピックアップも可能。
Furusato International
普段はフードトラックにて熱々のカツサンドを販売している。今回のイベントではカツ丼を販売。ジューシーなカツにふんわりとした卵が絡み、特製ソースが染み込んで、とても満足感のあるカツ丼、絶品だった。
日本の文化に興味がある方がたくさん来てくれて、熱気が伝わってきました。カツ丼は日本食としてメジャーではありませんが、見たことのない食文化にも触れられるいい機会だなと思います。
Genuine Tea
人気商品のKato Matchaや、産地直送のルースリーフティー、有機ハーブブレンド、ティーアクセサリーなどを販売。オンラインサイトにて、各種商品の購入が可能。
HARE.&KE.
水引を使ったハンドメイドアクセサリーを販売。普段はEtsyというオンラインサイトで購入ができ、ポップアップでの出店が多い。
Haru’s Cuisine
Haruさんのこだわりのヴィーガンスイーツを販売。お菓子は夕方にはほぼ完売するほどの人気ぶり。普段はEvergreenのファーマーズマーケットや、ポップアップイベントに参加し、販売を行なっている。
Heisei Mart Inc.
日本から取り寄せた急須、ゆのみの展示販売、そして平成マート特別セレクトの美味しい抹茶と緑茶やお茶関連の和菓子を販売。

Mai Miyazaki Art
普段は大きなキャンバスに絵を描いているが、イベントのために小さいサイズの絵を用意。つまみ細工のヘアアクセサリーを作るお母様と一緒に今回初めての出店。
ICHA TEA
伝統的なルースリーフティー、抹茶パウダー、ティースナックを販売。スパダイナ、チャイナタウンの一角に店舗を構えている。
Kawagiri Tea
昨年はボランティアとして参加していたが、お茶屋を開くことが夢で今回のイベントがデビューとなった。これからはオンライン販売も予定しているそう。熱い思いを持ってお茶を広げてくれることに主催者の吉田桃代さんも喜んでいた。
Lemon Lily Organic Tea
2回目の参加、200種類以上のお茶を販売するお店。今回はSakura Latteが人気だったよう。クイーンストリートのお店またはオンラインで購入が可能。
mon K patisserie
お客様の列が絶えず、早い時間で売り切れとなっていた商品も。マカロンやシュークリームなど様々な種類のスイーツを販売。普段はイーストヨークに店舗があり、販売を行っている。
無双心
いつも店頭では提供していないほうじ茶の商品や、玉露のおにぎりを販売。玉露のおにぎりはすぐに売り切れてしまったそう。ダンダスウェスト駅の近くに店舗がある、ミシュランガイドにも掲載された人気店。
Salon de Tea + Kimono
着物や着物に合わせた小物を販売。トロントで着付け教室も運営している。
Tao Tea Leaf Ltd.
昨年に引き続き2回目の参加。ほうじ茶の商品が人気で2回補充したが完売したそう。普段はオンラインや、 ダウンタウン、ユニオン駅、ミシサガにある店舗にて商品の購入ができる。
The Guild of Canada
お茶愛好家団体。煎茶、ほうじ茶、玄米茶と、日本茶各種の試飲提供を行っていた。
UKIYO
味噌玉を販売。箱に入ったお味噌は見た目もとても可愛らしい。普段はオンラインサイトにて購入が可能。
Zakkushi Group
焼き鳥のお弁当を販売。
kitaharaya
Itohen
Flower Bell
Isabella’s Donuts
Japanese Paper Place
Four Seasons Tea Co.
Natural Japaneats
Japan Treasureland
Hokusan Tea Canada
Cassis Bake
Kintsugica
Nakamori Japanese Restaurant
COPPER Tea
Tea Revellion
DAIGYO Canada
手もみ茶の匠 茶工房比留間園
比留間嘉章さん

去年もそうでしたが、今年はさらに集客力があるなと感じました。多くの方に見ていただけるのは嬉しいですね。
実はお茶のイベントは、日本だとあまり集客力がなくて。海外の方はリアクションが大きくて楽しいですね。中には、大変ですねと声をかけてくれる方もいました。実はこのデモンストレーションで使用している茶葉は、いいものを見てほしいという思いから、高級なものを使用しているんです。長くやって将来成果が出るか分からないですが、地道に続けていくことが大切だと思います。
日本茶業中央会/日本茶輸出組合による日本茶促進事業により提供
和菓子作りを実演した
村田崇徳さん
栗餡はカナダにあまりないようで、高いというイメージがあるみたいでした。カナダでも美味しい栗で和菓子を作れたらいいですね。皆さん熱心に見てくれて、楽しんでいただけたみたいでよかったです。和菓子がどんどん世界へ広がっていったら嬉しいなと思います。
日本茶業中央会/日本茶輸出組合による日本茶促進事業により提供
日本茶業中央会/日本茶輸出組合日本茶基礎講座
大勢来てくれて、とても嬉しかったです。満席でしたね。質問もたくさんしてくれて、ビギナーから詳しい人までいて色んな層の人が来てくれた印象です。中には専門家の人もいらっしゃいました。マーケットが広がっていることを感じられて嬉しかったです。
日本茶業中央会/日本茶輸出組合による日本茶促進事業により提供
来年2025年11月2日に第三回目となる
「日本茶祭り」を予定!
主催者 吉田桃代さんのコメント
イベント終了後に、主催者の吉田桃代さんにお話を伺った。
ー大盛況のイベントでしたね、終わってみていかがですか?

「日本茶と日本の文化をカナダに広めたいという熱い思いをもってこのイベントをはじめました。今年は二回目なので、第一回に比べて余裕があるかと思っていましたが、そんなことはなく、前回に比べてベンダーさんの数も増えたので、その分プレッシャーもあり、ご参加いただいたベンダーさんが「参加してよかった」と思ってもらえたかどうか。 また、訪れたお客様がいい時間を過ごしてくれたかどうか。今も気になりますし、心が休まることはありません。きっと、今後も回数をかさねていっても、こういった気持ちが続くのだろうな…と思います。
このイベント開催にあたり、日本茶促進事業として、日本から日本茶業中央会/日本茶輸出組合の皆さんのご協力を得ることができたことはこの上ない幸運でした。組合員の皆さまは短いカナダ滞在中、「日本茶を広めるため」に全力で、そのスキルと知識を訪れた人とシェアして下さいました。心から感謝しています。また会場である日系文化会館という素晴らしい日系コミュニティー施設で開催できたことも光栄でした。


日本茶の良さをもっと広めたい!と私が個人レベルで夢を抱いていても、私一人の力では何もできません。このお茶祭りのコンセプトに賛同してくれるベンダーさん、興味を持って下さるお客様、お茶にかかわるプロの皆様のご協力無しには成り立ちません。また、このお祭りにかかわって下さったボランティアさんの存在も大きいです。昨年に引き続き、こちらが依頼したこと以上のことを手伝ってくれているウェブデザイナーさんに加え、今年は時田工房の時田有紀さんが、ソーシャルメディアやプログラムなどを全て引き受けて下さいました。
お祭り当日の運営を手伝って下さったボランティアさんは総勢60名います(そのうちのほとんどの方が昨年に引き続き二年連続で手伝ってくれています)。たくさんの方の善意と賛同と協力のお陰でこのイベントが開催できていることに改めて感謝すると同時に、今後もこの「日本茶祭り」という、「お茶愛と日本愛に溢れたイベント」を、共感して下さる皆さんと一緒に続けていきたいと思います。」
来年は、2025年11月2日に第三回日本茶祭りを開催したいと意気込みを話してくれた。
イベントを振り返って


今回、取材をした中で、吉田桃代さんに対して「大成功おめでとう!」「あなたのためならなんでも協力したい!」という温かい言葉をかけられているのが印象的だった。吉田さんの日本茶に対する熱い思いに共感し、周りの方々も一緒に日本茶を広げようと様々な取り組みをされているのだなと感じた。

また私自身もトロントでこんなにも多くの方が日本茶や日本に興味を持っていることに驚き、感動した。来場客の笑顔でお茶を楽しむ姿や、真剣に学びたいと思い話を聞いている姿が忘れられない。このような素晴らしいイベントを通して日本と日本文化を知ってもらうきっかけがトロントでさらに増えていくことを願う。