ニューノーマル時代に注目を集める次世代産業・ビジネス|特集「キラリと光る北米デジタルトランスフォーメーション」

ニューノーマル時代に注目を集める次世代産業・ビジネス|特集「キラリと光る北米デジタルトランスフォーメーション」

 新型コロナによって誕生したニューノーマル時代において、様々なビジネスやサービスが登場し、デジタルテクノロジーが次世代ビジネスにイノベーションを巻き起こす。

#01
「最安値」を簡単に見つけるサービス

 モントリオールを拠点にするベンチャー企業「バスバッド」。バスの乗車券を低価格で購入することが可能になる比較サイトを運営している。今回、この「バスバッド」が1500万カナダドルの資金を調達したことで話題になっている。「バスバッド」が運営するサイトは、80カ国以上、なんと2万1000もの都市を行き来する都市間バスの乗車券を提供・販売。今回の資金調達に成功したことで、事業のさらなる拡大が期待されている。

 「バスバッド」をはじめとする旅行業界の企業の多くは新型コロナの感染拡大により大きな打撃を受け、実際、「バスバッド」もリストラもせざるを得ない状況にまで追い込まれたそうだ。「バスバッド」はこれからの展望に関して、今までのバスでの移動に加え、電車や車などの移動も事業に加えたという。新型コロナにより変わりつつある「移動」のこれからの可能性に注目が集まっている様子だ。

#02
IT×大麻の新時代?

 新型コロナの感染拡大により需要が上がりつつある市場がある。それは、2018年の10月に合法化されて以来ちょうど2年が経つ、マリファナの市場だ。フォーブスの記事によると、マリファナと同時に幅広い産業から注目を集めている人工知能(AI)の技術は相乗効果により共に力を付けていくのではないかと期待が寄せられているという。この事例の一つとして、人工知能によりマリファナの栽培をより緻密に観察することが可能になる技術が開発されている最中だそうだ。この技術によるデータの蓄積により「栽培のすべての段階における水の量、pHの数値、温度や栄養分を記録することが可能になる」と同時に、「栽培の自動化」も期待されているそうだ。マリファナをより効率的に、より効果的に栽培することが可能になることが期待されている。

#03
紫外線で飛行機をより安全に

 オタワを拠点とするベンチャー企業「Aero HygenX」は、ロボットと紫外線を用いた除菌・殺菌技術によって注目を集めつつある。この企業は、航空機ににおいて新型コロナをはじめとするウイルスを殺菌するロボット「RAY」を開発。紫外線を用いて、航空機などにおける菌を殺す効果が見込めるという。

 新型コロナの感染拡大により、世界各地で多大な影響を受けた航空業界。この業界を「殺菌・除菌」という安全面で少しでも助けるべく開発されたこの技術。ロボットは自由に機内を動き回ることが可能で、人が操作しなくとも自発的に障害物を避けながら動くことも可能だという。また、使用される紫外線は中でも特に除菌・殺菌能力の高い「UV-C」が用いられている。紫外線の照射の強度や速度も変えることができるため、特に感染リスクの高い座席周辺などを集中的に殺菌することも可能だそうだ。

#04
AIで給付金の受給を簡単に

 AIを活用して法的予測を導き出すプログラムを運営する企業「Blue J」。一見新型コロナとは関係がなさそうにも思えるが、今回、Blue Jは独自の人工知能の技術を新型コロナにより設けられた救済策や給付金の支給に応用することを発表した。新型コロナにより影響された人に配られる給付金。しかし、日本でも大きな課題になったように、給付金の対象であるのか、そして対象であった場合、いくら受けられるのか、などの点が不明瞭な場合も多い。

 具体的には、ユーザーが情報や現在の状況などを入力することにより、対象であるかどうかを判断してくれるそうだ。さらに、対象の人には給付金や救済をいかにして受け取れるかのプロセスも明らかになるという。創業者の一人は「給付金や救済を受け取るプロセスをより簡易なものにしたい」とコメントしている。

#05
AI×薬学の新しい可能性

 AIと「計算生物物理学」という学問を融合させ、創薬に貢献すべく取り組んでいる企業が注目を集めている。トロントのハーバーフロント近くに拠点を持つ「シクリカ」は、新型コロナの感染拡大以来、ウイルスに対峙するための治療薬の研究・開発のために様々なテクノロジーを駆使し続けてきた。他の疾患の治療に使われてきた薬を新型コロナの治療に活用するため「リパーパシング」という方法も活用しながら、独自のAI技術を通じて有効な薬の開発に努めている。また、様々な研究機関とパートナーシップを結び、薬の有効性を試し続けてきたそうだ。近年注目を集めている、「医療」と「技術」を融合させた「バイオテック」の分野。新型コロナの治療薬を開発するためにもバイオテックが一役買い、そのプロセスを迅速化させることが期待されている。

#06
医者とすぐ繋げてくれるウェアラブル

 オンタリオ州のサドバリーに拠点を置く医療センサーの企業「FloSonics Medical」が話題を集めている。新型コロナを闘うための革新的な技術を推進するための「COVID-19 Challenge」と呼ばれるイベントにて、注目を集めた「FloSonics Medical」。体に身につける機器「ウェアラブル」をはじめとしたセンサーを手掛ける企業であり、今回の新型コロナの感染拡大を受け、医療従事者が遠隔操作によって新型コロナの患者の状態をモニタリングすることが可能になる医療センサーを開発した。このセンサーを通して、患者のバイタルなど重要な情報を取得することが可能になるという。今回の「COVID-19 Challenge」にはFloSonics Medicalのような企業のみならず、研究機関や大学なども参加したそうだ。

#07
「最短距離」ではなく、「最も安全なルート」

 トロントに拠点を置く企業「iMerciv」が新たに開発した「MapinHood」というアプリ。このアプリは、新型コロナを受け、「密」を避けるための地図である。例えば、通常の地図アプリは目的地までの「最短距離」を提案する。それに対し、MapinHoodのアプリ内に組み込まれている「ソーシャル・ディスタンス・モード」という新たな機能を使用すると、「一番混雑を避けられるルート」を提案してくれる。新型コロナの感染拡大以来、トロントにおいても、トリニティ・ベルウッズ・パークなどにおける人混みが問題視されてきた。そんな中、今回のMapinHoodというアプリの新機能はマイクロソフト社からの支援も受け、人工知能の技術を活用し開発された機能だという。また、このアプリでは「ソーシャル・ディスタンス・モード」の他にも「犯罪を避ける」や「急な坂を避ける」など細かい条件を設定することも可能で、これから先、スーパーやレストランなどにおける混雑状況をリアルタイムで把握できるシステムも導入されるという。

#08
「新常態」に求められる「心の健康」

 様々な企業における社員へのメンタルヘルスや健康を推進する研修プログラムなどをオンラインで提供するサービスを手掛けるベンチャー企業「ライフスピーク」。今回、その企業が4200万カナダドルにも及ぶ資金を調達したそうだ。

 新型コロナの感染を拡大を受け、カナダにおける多くの企業やその社員は自宅から勤務する「リモートワーク」が「新常態」としてすっかりおなじみとなった。そんな中、心の健康状態の悪化を訴える社員が増えている、ということもリモートワークの大きな課題として注目されている。

 「ライフスピーク」が手掛けるオンラインのプラットフォームにはなんと2000を超える「心の健康」にまつわる講義やポッドキャスト、アドバイスが含まれるという。このサービスを導入している顧客も幅広く、業界の数は25にものぼるという。

#09
あなたのオフィスは大丈夫?感染リスクを診断するプラットフォーム

 企業の新型コロナに対するリスクを把握するための事業を展開している企業「Minetell」。トロントを拠点にしている「Minetell」は、「クラウド」を活用して各企業がそれぞれのオフィスにおける新型コロナの感染リスクを管理できるプラットフォームを提供している。The Starにも取り上げられるなど、その技術は多くの注目を集めている。

 リスクを把握するための項目として、企業が行っている手洗いの徹底やフィジカル・ディスタンス(物理的距離)の推奨、マスクなどのPPE(個人用保護具)などが評価対象に含まれるという。このようなデータが収集された上で、企業が「新型コロナの感染拡大のリスクに侵されている」と判断された場合、管理者や担当者は即時に報告されるという。その結果、感染拡大のリスクを最小限に抑えることが可能になるそうだ。

#10
教授と学生をつなぐプラットフォーム

 教育とテクノロジーを融合させた「エドテック(EdTech)」の業界も今、注目を集めている業界の一つだ。オンタリオ州のウォータールー大学近くに設立された企業「Top Hat」もその一例。「Top Hat」は2009年に設立されて以来、オンラインで授業を受けられるプラットホームを運営している。新型コロナの感染拡大を受け、一部もしくは全ての講義をオンラインへシフトせざるを得なかった多くの大学。こうした状況を踏まえ、Top Hatはオンライン授業をサポートするためのコミュニケーションツール「Slate」を開発した。具体的には、教授と学生を繋げるコミュニケーションツールになっていて、教員が授業を企画しながら学生とのコミュニケーションを取りやすくするためのツールとして期待されている。教育現場の「在り方」が問われつつある今、このようなソフトウェアを通じて「オンライン授業」が教授や学生にとってより快適に遂行できることが期待されている。

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