日本人の若者がカナダでプロとして飛躍するには!|特集「カナダワーホリのその先」

伊藤総領事、カワグチ日系文化会館理事長とMUSUBUメンバー

 「MUSUBU」はカナダに在住する日本人や日本語を理解できるカナダ人で構成されており、ヤング・プロフェッショナルのコミュニティ作り、育成や成長、さらにはプロジェクト支援など、幅広い活動を目的としている団体だ。

 昨年末にはトロント総領事公邸にて、伊藤恭子総領事と日系文化会館の理事長でPRL Benefit社長のゲーリー・カワグチ氏によるパネルディスカッションを開催。「MUSUBU」会長で公認会計士(CA・CPA)のグリーブス・グレイス幸子氏がモデレーターを務め、会場には30人近い20代から40代の社会人が集まり、講演と懇親会が行われた。

若者にとってトロントの可能性

伊藤総領事: 〝トロントは日本人だけではなく世界中から来た人全てに大きな可能性があると思います。〟

 トロントにはカナダ国外で生まれた人も多くいますし、トロントで生まれた人もいますので、多様な文化や伝統、能力があふれています。そして先進技術国であり、生活をするにもとても快適に発展した都市です。もちろん各産業についても多くの可能性があり、プロフェッショナルの方々も多く携わっています。

〝適職・キャリアを見つけるにはトロントは良いところだと思います。〟

カワグチ理事長: 私は生まれも育ちもこれまでの人生はずっとトロントで過ごし、様々なバックグランドをもつ企業で働き、現在は起業しています。私のキャリアの中で30代の頃、50歳代にもなると会社内で仕事がない人をたくさん見てきました。私が30代の時にはそのようになりたくないと誓い、私は50歳代になっても仕事をしている人生を送りたいと思っていました。

 私の幼少期の頃のトロントは今とはまったく違い、現在ではメキシコシティやニューヨーク、ロサンゼルスについで大きなマルチカルチャーな都市となりました。

 トロントの特徴は多くの人が移住し、家族を築いています。他の都市で生まれ、トロントにやってきた人が大半で、皆さんもその中の一人です。そのような背景での弱みは私が持っているようなネットワークがないことです。私のようにトロントで生まれ育ち、学校に行き働いていれば、自然とネットワークができますが、多くの人がそうではありません。

〝カナダ社会に溶け込むためにできることは何か?それは、ネットワークを自分たちで作り上げて、それを継続していくことが大切なのです。多くの人たちがあなたたちと同じようにネットワークを築こうとして、同じような可能性を求めているのです。〟

グレース: 私たちも「MUSUBU」というコミュニティは人と人を結ぶ役割を担いたいと思っています。私も同じようにここで生まれ育って、ネットワークを築いています。私たちは「MUSUBU」が多くの人たちのつながりの機会になればと思っています。

働き方のカルチャー

カワグチ理事長: カナダとひとくくりに言ってもバンクーバーにいるカナダ人は「楽しむために働く」というタイプが多く、トロントニアンは「働くために生きる」と人生の大半を働くことに重きを置いている点ではより日本人に似ているのではないかと思います。

伊藤総領事: 日本人の場合、日本語で働くと上下関係がしっかりあり、上司には敬語を使いますが、カナダでは上位者との関係性が対等に保たれていると感じがします。上下関係が重んじられていることも日本のビジネスカルチャーの特徴でしょう。

カワグチ理事長: カナダでも見えない天井があります。多くの若いプロフェッショナルな女性がカナダで活躍していますが、簡単なことではありません。しかし、それもネットワークを築く能力により、さらに環境や状況は変わっていくのだと思います。

伊藤総領事: 私も川口会長の意見に賛成です。昨年、実業界で活躍する日本人女性グループがカナダに来たのですが、アクティブなカナダ人女性が多いことに驚いていました。世界的に見ても日本における女性の社会的地位のランキングは低くて、これは恥ずかしいことだと思います。

ビジネスにおける日本人の強み


伊藤総領事: 日本人は「コンセンサス・ビルディング・スキル」の能力や意識が高いので貴重だと思います。また、プロ意識がとても高いと思います。常に物事を慎重に何をすべきかという事を考えていますね。この特徴は重要な統計、分析などにも役立っていると思いますし、それらの分野においても日本人のプロフェッショナルの方々が活躍していると思います。

カワグチ理事長: 北米でいわれている日本人の強みは仲間意識です。また日本人は誠実、気遣い、偏りが無く、文化的にも優れています。トロントはそのような特徴を活かせる場所だと思っています。

キャリアプランの構築

カワグチ理事長: 私の場合はキャリアプランの前にライフプランを立てました。最初に考えたきっかけは今でもはっきり覚えていますが、ある人から30代になったらどうなっていたいですかということを聞かれた時でした。学校に行き、最初の仕事に就き、車を買って、彼女ができて、結婚するかもしれない、しかしそれは全てなのです。10年おきのプランを立てていて30代になって家を買って、結婚して、家族ができて、40代になったらローンも終えて自分の家を持ち、50代になったら自分がなりたかった50代になると。そして、自分のライフプランを立てたら、次にキャリアプランを立てます。

 キャリアプランにおいては、どの会社に入るのかは問題ではなく、自分がどんなスキルを得るのかが大切です。自分のスキルを磨くことが大切で、面接でもそこを見られます。どんな能力を持っているのか、それを多様なビジネスシーンにおいてどう活かせるのか。どれだけ時間をかけたかではなく、自分の能力をどれだけ伸ばしたかが問題で、それによりさらに上を目指すことができます。


伊藤総領事: 私は23歳の時に入省して40年間は勤め上げるものと考え、同時に本当によい経験を今までしてきました。私たち、外務省は基本的に2~3年周期で担当業務が変わります。私は異動するたびに、何かを学び、幸いにも上司にも恵まれてよい機会を得てきました。現在は私がボスなので、よい上司にならないといけないなと思っています。これは私にとってもチャレンジでもあります。

ワーキングホリデーや語学留学などの若者は短期間で何を学ぶべきか

カワグチ理事長: 私の息子はJETプログラムで大分に行き、2年間英語を教えていましたが、彼は日本でネットワークを築くことなく帰ってきました。私は彼が日本人を知ること、日本を知ることの大きなチャンスを逃してしまったと思っています。私がアドバイスできるとしたら、できるだけ多くの人に出会うこと、友達を作ること、そうすればそこから何かを得ることができると思います。

伊藤総領事: 高校時代に1年間の交換留学をしたときに、私は「失敗する力」「自分を笑える力」という格言に出会いました。誰も失敗はしたくはありません。しかし失敗をしたら、何か新しいことを学ぶことができます。チャレンジをすること、失敗をすることを恐れないでもらいたいです。そして、もし失敗をしたり、間違えた時には自分を笑える力を付けてください。失敗することできっと成長することができるでしょう。

カワグチ理事長: 皆さんの中で日系カナダ人の三世、四世の友人などはいますか?きっと皆さんにとって三世、四世と会うことはとても良い機会だと思います。私の子供を見ても日本人のことをほとんど知りません。もし彼らと出会えばあなた方の世界と三世・四世の世界が繋がります。彼らに出会うことによってみなさんのネットワークが彼らのネットワークによってさらに広がることでしょう。きっとそれはあなたにとって力強いものになります。