9年越しのジェイソン・ライトマン監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第42回】

9年越しのジェイソン・ライトマン監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第42回】

1月号にジェイソン・ライトマン監督のライブリードのことを書いていて、そういえば2018年には念願叶って直接お話しできたんだっけ、と思い出しました。

ジェイソン・ライトマン監督は、デビュー作『サンキュー・スモーキング』(2005)を観て以来、私はずっと注目していた監督さん。皮肉のきいた笑いをテンポよく繰り出すあざやかさと、どこかこじらせた登場人物のひねくれた感じが大好きで、監督作をずっと追いかけていました。私が初めてトロント国際映画祭(TIFF)を訪れた2009年には、ちょうど『マイレージ、マイライフ』が上映され、大好きなジョージ・クルーニー主演のライトマン監督最新作が観られるなんて最高じゃないか!と思っていました。でも、当時は『マイレージ、マイライフ』が大人気でチケットが取れず、舞台挨拶のない上映回をラッシュチケット(当日券)で観るのが精一杯でした。

そうして迎えた2018年、ヒュー・ジャックマン主演のライトマン監督最新作『フロントランナー』がTIFFで上映されると知り、今度こそ監督が舞台挨拶に来る上映回を観に行くぞ!と喜び勇んでチケットを取りました。実はTIFFでは、関係者が勢ぞろいする初回プレミア上映もいいけれど、製作者陣だけが舞台挨拶に来ることの多い2回目が穴場。上映後に監督を捕まえて、じっくりお話しできたりします。それを狙って、2回目の上映後に監督に突撃してあわよくばサインをもらおうと、TIFF直前の夏に日本で劇場公開されていた『タリーと私の秘密の時間』のパンフレットを持って行きました。

予想通り、上映後には数人の観客がライトマン監督に駆け寄って『フロントランナー』の感想を伝えたりサインをもらったりしており、私もその輪に加わることができました。サインを求めて『タリーと私の秘密の時間』のパンフレットを差し出すと、監督はそのとき初めてパンフレットを見たようで、邦題のデザインを珍しそうに眺めて感激していました。しまった、自分がサインをもらう用と監督へのプレゼント用で2冊持ってきたら良かった!と後悔したものの、積年の願いが叶って、監督と私の至福の時間になりました。