3月号でアイヴァン・ライトマン監督の追悼記事を書くに当たり、トロント国際映画祭(TIFF)の映画館TIFF Bell Lightboxが開館した当時のことを調べていたところ、思いがけない情報に出くわしました。2010年9月12日にTIFF Bell Lightboxで映画祭の上映が始まった直後、9月14日に1番スクリーンでケリー・ライカート監督の『ミークス・カットオフ』が上映されていました。
ケリー・ライカート監督は、1994年のサンダンス映画祭で上映された『リバー・オブ・グラス』で監督デビューした米国の女性監督です。その監督作は世界の数々の映画祭で取り上げられてきましたが、日本では長らく劇場未公開のまま、十分に紹介されてきませんでした。それが、2020年に「ケリー・ライカート監督特集」として『リバー・オブ・グラス』(94)、『オールド・ジョイ』(06)、『ミークス・カットオフ』(10)の3本が上映され、日本で一気に知られるようになりました。
TIFF Bell Lightboxが開館した2010年当時から、私はTIFFに行っていたはずなのに、ケリー・ライカート監督の作品はノーチェックでした。当時、私にとっては二度目のTIFFで、監督やキャストになじみのない作品も積極的に観ようと試み、ジェームズ・ガン監督の『スーパー!』にめぐりあって興奮していた頃。
でもやはり、人気作品が上映されるGalaやSpecial Presentations部門を中心に観賞作品を選んでいて、『ミークス・カットオフ』が上映されていたContemporary World Cinema部門まではチェックしていませんでした。
ケリー・ライカート監督の他の作品はどうだったのだろうかと調べてみたところ、『ウェンディ&ルーシー』(08)や『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』(16)もTIFFで上映されていました。
こうして後から振り返って思うのは、やはりTIFFで上映される映画には、面白いものが山ほどあるなってこと。これだから、TIFFの上映作品に選定されているなら観たいと思ってしまうし、TIFFのためだけに何度でも日本から渡航してしまいます。