追悼 アイヴァン・ライトマン監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第32回】

追悼 アイヴァン・ライトマン監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第32回】

 先月、アイヴァン・ライトマン監督の訃報が伝えられました。米カリフォルニア州の自宅で、現地時間の2月12日夜、就寝中に息を引き取ったとのことでした。1980年代から90年代を中心に数多くのコメディ映画をヒットさせたライトマン監督は、私にとって、子供の頃に大好きだった面白い映画をたくさん見せてくれた監督。『ゴーストバスターズ』(84)はもちろん、アーノルド・シュワルツェネッガーがコメディ映画で大活躍した『ツインズ』(88)、『キンダーガートン・コップ』(90)、『ジュニア』(94)も、社会派コメディの傑作『デーヴ』(93)も、大好きでした。突然の訃報は、大好きな親戚のおじちゃんを亡くしたようで、あまりにも悲しい知らせでした。

2019年の映画祭期間中のTIFF Bell Lightbox正面
2019年の映画祭期間中のTIFF Bell Lightbox正面

 ライトマン監督は、トロント国際映画祭(TIFF)にとっても、なくてはならない人でした。追悼の意を込めて、ライトマン監督のTIFFへの貢献についてご紹介します。

 現在、TIFFは通年の拠点となる映画館TIFF Bell Lightboxを、トロント中心部のKing St.とJohn St.の角に構えています。この映画館は、映画祭期間中の上映会場となっているほか、ここで年間を通じて魅力的な特集上映が行われ、未来の映画人を育成する企画やトークイベントも頻繁に実施されています。この映画館が誕生したのは2010年。その地は、もともとチェコスロバキアからユダヤ系移民としてカナダに来たライトマン監督のご両親が、トロントで土地を購入し事業を営んでいた場所でした。その土地をライトマン監督と姉妹の3人がTIFFに寄付し、映画館が建てられました。永続的な拠点とする場所を探していたTIFFに、ライトマン監督らが土地の提供を申し出る形で始まった計画が2003年に公表され、2007年に着工、2010年にようやくTIFF悲願の拠点が完成しました。

TIFF Bell Lightboxのある角。歩行者信号の上に「REITMAN SQUARE」の標識があります。
TIFF Bell Lightboxのある角。歩行者信号の上に「REITMAN SQUARE」の標識があります。

 映画祭を主催する団体が、通年の拠点となる映画館を持っている。これは、映画祭の継続性や未来を担う映画人の育成を考えたとき、とても重要なこと。でも世界を見渡したとき、そんな環境を備えた団体はまれです。TIFFには、それがある。ライトマン監督一家のおかげで。
 TIFF Bell Lightboxのある角は、ライトマン監督のご両親の名にちなんで、Reitman Squareと命名されています。