『ドライブ・マイ・カー』と濱口竜介監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第33回】

『ドライブ・マイ・カー』と濱口竜介監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第33回】

 濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』がカナダでお披露目されたのは、昨年9月の第46回トロント国際映画祭(TIFF)でした。TIFF開幕前に濱口監督にインタビューした記事が9月号に掲載されたので、読んでくださった方もいらっしゃると思います。あのとき、濱口監督が世界の映画祭を席巻している印象を受けていました。あれから約半年の今、濱口監督も『ドライブ・マイ・カー』も、世界中からさらなる称賛を浴びています。一体どこまで行ってしまうのか、もう想像がつかないので、とりあえず現時点で振り返っておこうと思います。

 まず、昨年のTIFF開幕前の時点でのこと。2021年3月にベルリン国際映画祭で『偶然と想像』が銀熊賞(審査員大賞)を受賞し、その授賞式が6月に行われて、世界の晴れ舞台に立つ濱口監督の姿が飛び込んできました。その直後、2021年7月のカンヌ映画祭で、『ドライブ・マイ・カー』が日本映画史上初の脚本賞を受賞。世界三大映画祭と呼ばれるベルリン、カンヌ、ベネチアのうちの2つで主要な賞を受賞し、時代の流れが濱口監督に向いているかのようでした。

(左)『偶然と想像』公式サイト(右)『ドライブ・マイ・カー』公式サイト
(左)『偶然と想像』公式サイト https://guzen-sozo.incline.life/
(右)『ドライブ・マイ・カー』公式サイト https://dmc.bitters.co.jp/

 TIFFの後も快挙が続きます。全米批評家協会賞、ボストン批評家協会賞、ニューヨーク批評家協会賞、ロサンゼルス批評家協会賞、トロント批評家協会賞などで、『ドライブ・マイ・カー』が次々と作品賞に輝きます。何がすごいって、英語の映画が中心のはずの北米で、非英語の日本映画が作品賞に選ばれるのがすごい。外国語映画賞ならわかりますが、そうではなく全作品の頂点となる作品賞ですからね。とんでもないことになってきた、と思っていたら、ゴールデングローブ賞でも『ドライブ・マイ・カー』が非英語映画賞を受賞しました。日本映画では市川崑監督の『鍵』以来62年ぶりだとか。さらには、アカデミー賞の作品賞と脚色賞に日本映画から初のノミネートを果たし、監督賞、国際長編賞とあわせて主要4部門ノミネート!という快挙が、この原稿を書いている2022年2月末現在の状況。さて、アカデミー賞の結果やいかに。

 でも、賞レースの行方よりも私が気になっているのは、濱口監督がすごくなりすぎて、いちローカル情報誌TORJAのインタビューなど今後は受けてくれなくなったらどうしよう、なんてことだったりします。