TIFF新人記者育成枠 Media Inclusion Initiative|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第29回】

TIFF新人記者育成枠 Media Inclusion Initiative|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第29回】

 トロント国際映画祭の主催団体TIFFは、以前から多様な映画人の育成に取り組んでいます。女性、有色人種、2SLGBTQ+、先住民族といったマイノリティを積極的に支援し、白人や男性が優位の社会で、自然に任せていると取り上げられにくい層の才能を発掘し支援するものです。しかも、その取組みは映画製作に携わる人への支援にとどまらず、批評家や記者にまで及んでおり、あらゆる方面から映画業界全体の多様化を図っています。

 なぜこんな話を始めたかというと、そんなTIFFの取組みのうち新人記者の支援を目的とする「Media Inclusion Initiative」というプログラムに、私も今年参加させてもらったから。

 毎年、トロント国際映画祭を取材する記者はプレス申請を行い、承認されればプレス関係者として上映作品を観賞したり記者会見に出席したりといった形で映画祭に参加できます。このうち、初めてプレス申請する人、または過去に一度しかプレス参加したことのない人だけが応募できる「Media Inclusion Initiative」というプログラムがあります。いわば新人記者育成枠。本誌に映画の記事を書いている私は、TORJAの記者として応募したところ、今年の45人の枠にめでたく採用されました。

 このプログラムの参加者はTIFFの公式SNSアカウントで取り上げられ、名前を売り出すサポートをしてもらえます。また、映画業界に関わりの深い記者や編集者から話が聞けるオンラインプログラムも用意されています。さらに今年は、米映画批評サイトRotten Tomatoesの協力で参加者に給付金が用意され、一部参加者はRotten Tomatoesの批評家から個別指導を受けられるという内容でした。

 参加者間で共有されたプロフィールを見ると、実に大半が女性や2SLGBTQ+、有色人種といった構成。私に至っては、日本語でしか記事を書いていない黄色人種の女性です。もちろん映画業界に何のコネもありません。私は、トロント在住の日本人なら知らない人はいないであろうTORJAからの応募だから採用されたのだろうと思う一方で、多様化を推進するTIFFの取組みはどこまでも本気なんだなと、このプログラムを通じて実感しました。