『スーパー!』とジェームズ・ガン監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第27回】

『スーパー!』とジェームズ・ガン監督|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第27回】

 2009年に初めて行ったトロント国際映画祭(TIFF)にすっかり魅了され、また来年も来よう!と決意してから1年。2010年に再び訪れたTIFFが、その後たびたびTIFFのためにトロントを訪れることになる決定打でした。そんなわけで、今回も昔話の続きです。

 2010年のTIFFでも、相変わらず人気作品のチケットは発売直後に完売し、入手困難でした。前年より長めの滞在日程を確保していた私は、作品の知名度や前評判はさておき、自分が面白そうだと思える作品を選んでチケットを取っていました。そんな作品のひとつが『スーパー!』でした。

 『スーパー!』は、SFやホラー、コメディを中心に上映されるミッドナイト・マッドネス部門で上映されていたコメディ映画です。作品紹介を読む限り、私好みの面白そうな作品でしたが、監督も主演俳優もまったく知らない人でした。また、ワールドプレミアから数日後の平日朝に予定されていた2回目の上映は比較的空いており、チケットが簡単に入手できました。

2010年の公式プログラムに書いてもらったジェームズ・ガン監督のサインと『スーパー!』のチケット。サインを書くようなペンを持ち合わせておらず、普通のボールペンで。
2010年の公式プログラムに書いてもらったジェームズ・ガン監督のサインと『スーパー!』のチケット。サインを書くようなペンを持ち合わせておらず、普通のボールペンで。

 ほとんど事前情報のないままに観た『スーパー!』は驚くほど面白く、少々ひねくれた笑いのセンスが最高でした。興奮冷めやらぬまま劇場の外に出ると、監督らしき人がいたので思わず駆け寄りました。もう今年のTIFFのマイベストはこれだ!と確信するほどだったので、その感動を直接伝えたい一心でした。それが、ジェームズ・ガン監督でした。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズから最近公開された『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』まで、今や大人気の監督です。しかし当時はあまり知られておらず、TIFFでの上映後も私以外に声をかける人はほとんどいませんでした。それで、わりと長い間お話しすることができ、一緒に写真を撮ってもらったりTIFF公式プログラムにサインをもらったりと、贅沢な時間を過ごしました。

 その後『スーパー!』は日本で劇場公開されることなく、私は悶々とするのですが、数年後に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でジェームズ・ガン監督が注目されたとき、「だから『スーパー!』が面白いって言ってたのに!」と独り思っていました。同時に、まだ誰も知らない面白い作品にもTIFFなら出会えて、しかも作り手と直接交流できるなんて最高だなと改めて思いました。