トロント国際映画祭との出会い(その3)|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第25回】

トロント国際映画祭との出会い(その3)|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第25回】

 コロナ禍が続く今年、トロント国際映画祭(TIFF)のために日本から渡航できるのかさっぱりわからないから昔話をしてみようか、ということで、2009年に私が初めてTIFFへ行くことを決め、事前に十分なチケットを確保できないままトロントへ渡航することになった話の続きです。

 トロントに到着した後、まずは事前購入したチケットとTIFF公式プログラムブックを受け取りにボックスオフィスへ向かいました。そこで知ったのが、前売り期間にいったん売り切れた上映回のチケットも、毎朝ボックスオフィスが開くと同時に再販される場合があるということ。そこで、翌朝のボックスオフィスが開く時間に、もう一度行ってみることにしました。

 翌朝、オープンの7時前にボックスオフィスに到着すると、すでに長蛇の列ができていました。どうやらみんな再販チケット目当てに早朝から並んでいるようです。前のほうの人は一体何時から並んでいるのかな?と気になって列の前後の人に尋ねると、1時間以上前から並んでいるんじゃないかな、という話でした。この日は、観たかった上映回のチケットを少しだけ追加購入できたものの、やはり人気作品のチケットは入手できませんでした。

ボックスオフィス入口付近の案内表示(2017年撮影)
ボックスオフィス入口付近の案内表示(2017年撮影)

 翌日、もう少し早起きしてボックスオフィスに行ってみると、前日よりは人数が少ないものの、すでに10人程度は並んでいました。前日と違うのは、ボックスオフィスが開くまでみんな時間を持て余しているせいで、自然と映画談義が始まるところ。何のチケットが目当て?とか、今まで観たもので何かいい映画あった?とか。この会話がまあ面白い。みんな早朝から映画祭チケットを求めて並ぶほどの映画好きだから、濃い話ばかり。ネイティブスピーカー同士の会話が盛り上がると、なかなか話に入っていけないもどかしさはありつつ、こんなふうに映画の話ができるだけでも、トロントまで来てよかったと思うひとときでした。

 TIFFとの出会いの話、映画を観るところまでたどり着いていませんが、街中に映画好きの一般人があふれていて、どこでも映画の話ができるというだけで、私はすっかりTIFFに魅せられてしまいました。