TIFF Bell Lightboxと午前十時の映画祭のその後|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第22回】

TIFF Bell Lightboxと午前十時の映画祭のその後|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第22回】

 ちょうど2年前、「TIFF Bell Lightboxと午前十時の映画祭」と題して、トロントの映画館「TIFF Bell Lightbox」と、日本全国の映画館で実施されていた「午前十時の映画祭」についてご紹介しました。当時、どちらも発足から約10年ということで、あわせてご紹介しました。あれから今までの間にコロナ禍の影響もあり、それぞれに状況が大きく変わってきたので、この2年の変化を交えて再びご紹介します。

 まずはトロントのTIFF Bell Lightboxについて。トロント国際映画祭の主催団体TIFFの本拠地であるこの映画館では、映画祭以外の期間は新旧織り交ぜた魅力的な企画上映が組まれてきました。しかし、新型コロナウィルスの世界的な流行を受け、2020年の3月14日の上映を最後に休館。2020年9月には映画祭の作品を一部上映したものの、ロックダウンや店舗の営業制限が続くトロントでは、映画館がほぼ閉館状態で1年以上が過ぎました。

 そのかわり、2020年の映画祭開幕の少し前に「digital TIFF Bell Lightbox」が発足しました。これはカナダ国内で視聴可能な有料配信プラットフォームで、以前ならTIFF Bell Lightboxで上映されていた新作のリリースが、オンラインで行われるようになりました。映画本編とあわせて監督のコメント映像を収録するなど、コンテンツも充実。日本からは見られませんが、カナダ全土でTIFFのラインナップを楽しめるようになったのは良いことかもしれません。

 一方、日本の状況はというと、コロナと関係なく2020年3月での終了が決定していた午前十時の映画祭が、終了を惜しむ声に応えて2021年4月から復活することになりました。日本では緊急事態宣言により2020年4月から6月頃にかけて全国的に映画館が休館し、その後も2021年初春に首都圏をはじめ一部地域で映画館が時短営業となりました。トロントと比べて映画館はずいぶん開いている状態ですが、以前に比べ興行収入は大幅に落ち込んでいます。そんな状況下で、1年間のブランクを経て午前十時の映画祭が戻ってきます。

 配信ではあるもののカナダ全土に広がったdigital TIFF Bell Lightboxと、日本全国での上映が復活した午前十時の映画祭。映画産業にとって苦難の時期が続く中でも、良質の映画を提供する場が存続し、広がっていることを嬉しく思います。