みえ的2020年ベスト映画|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第20回】

みえ的2020年ベスト映画|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第20回】

 お正月休み、この連載に何を書こうか少し考えた結果、やっぱり2020年に見た映画からマイベスト作品をご紹介しようかなと。アンタのベストに興味ねーから面白いネタよこせ、って声が今年も聞こえてきそうですが、再びやりますマイベスト披露。やっぱりね、こういう映画を好むヤツが書くからこういう連載になるんだな、ってことを理解してもらう良い機会かと思いますので。言い訳はこのくらいにして、2020年に見た新作262本からマイベスト10作品です。

 昨年見た中でダントツに好きなのが『TENET テネット』です。斬新すぎる映像と時間を逆行するコンセプト。そんな世界に苦悩しつつ立ち向かう主人公の葛藤と心の交流。そんな物語が科学的に考え抜かれた世界観のもとに繰り広げられる。これほど知的好奇心を満たしつつアクションも物語も高次元で成立させているこの作品、実はゴリゴリ理系出身の私にとって、もう他とは好きの次元が違いました。『ミッドサマー』は、おぞましさがクセになる中毒性に飲み込まれるようで、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』はロシアの緊張感あふれる戦車アクションに飲み込まれるようでした。『パラサイト 半地下の家族』ではジャンルを超越した怒涛の展開が、『1917 命をかけた伝令』では3次元的に縦横無尽に主人公を追いかける映像が、これまでに経験したことのない映画体験をもたらしてくれました。『はちどり』『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』『恐竜が教えてくれたこと』『私をくいとめて』は、それぞれ韓国、米国、オランダ、日本と多国籍ですが、どれも素晴らしい青春映画でした。この辺は、私の好みが青春映画に偏っているせいですが、コメディ寄りで笑って泣いて、ときに刺さるタイプが『ブックスマート』『恐竜が教えてくれたこと』『私をくいとめて』で、深層心理に刺さるタイプが『はちどり』でしょうか。最後の『燃ゆる女の肖像』は、静かな画面とは裏腹に激しく行き交う感情が、忘れがたい印象を残していました。

 今年も順位付けしましたが、これはやっぱり映画の良し悪しではなく、私の好みの順番です。たぶん今後も、こんな好み全開で連載を書いていきますので、どうぞご容赦ください。