大九明子監督作品を勝手にご紹介|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第19回】

大九明子監督作品を勝手にご紹介|トロントと日本を繋ぐ映画倶楽部【第19回】
私をくいとめて』の大九明子監督
私をくいとめて』の大九明子監督

 みなさま、先月号の大九明子監督のインタビュー記事は読んでいただけましたか? 実は、私が東京国際映画祭に取材に行ってきました。昨年の上田慎一郎監督に続き、新作のカナダでの上映が決まっているわけでもないのにインタビューしてきた、というヤツです。だって、日本映画で注目の監督さんだから、ぜひその新作をカナダのみなさんにも見てほしいんですもん。というわけで、誰に言えばいいかわからないけど、TORJAでご紹介することでカナダでも上映されるといいなあ、という思いで今年も取材してきました。

 大九監督に直接お話をお伺いして『私をくいとめて』のワールドプレミアを見てきたら、そりゃあもう素晴らしい作品で、みなさんにもぜひ見てほしいという思いはますます強くなりました。というわけで、ここでは大九監督の作品がどれほど面白いか(どれほど私が好きか)を勝手にご紹介します。

 まず、2018年にトロント日本映画祭でも上映された松岡茉優さん主演の『勝手にふるえてろ』(17)が大九監督の代表作でしょうか。恋愛経験ゼロの主人公ヨシカの行動にヒリヒリするような痛みを覚えつつ、随所に笑いが散りばめられている絶妙なバランスのコメディでした。次に『美人が婚活してみたら』(19)では、婚活を始めた独身女性が出会う男性との関係や、既婚の親友との感情の温度差を、身につまされるリアルさとユーモアのある優しさで描いていました。さらに『甘いお酒でうがい』(20)では、それなりに年を重ねて自分なりのささやかな幸せを慈しむような日々を送る40代女性を、やはり微笑ましくなるユーモアを添えて描いていました。

 そして最新作が『私をくいとめて』です。31歳の独身女性が、脳内の「A」と会話しながら久しぶりの恋愛に踏み出す様子が、これまた笑いどころたっぷりに、しかしながら痛切な感情とともに描かれています。過去の大九監督の作品同様に、女性の内なる声を面白さ全開で見せてくれる本作、ぜひカナダでも上映してほしいと声を大にして言っておきます。