15年。180冊。|TORJAモノがたり|MONOGATARI

15年。180冊。|TORJAモノがたり|MONOGATARI

180号。15周年らしい。そう言われて、あらためて数えてみたら、本当に180冊ありました。でも、不思議なことに、私たちには「15年」という感覚があまりありません。締切があって。取材があって。原稿を書いて。写真を選んで。デザインを直して。印刷されて。ラックに並ぶ。その繰り返しです。気がつけば180号でした。

 この15年で、世の中はずいぶん変わりました。スマートフォンが生活の真ん中になり、SNSがニュースより早くなり、AIが文章を書く時代になりました。カナダも変わりました。日本も変わりました。パンデミックもありました。円安にもなりました。レストランも街並みも、人の暮らしも変わりました。でも、変わらなかったものがあります。

「誰かに会いに行くこと。」私たちは、ずっとそれだけをやってきました。

 コミュニティーで頑張る人に会う。何かをつくる人に会う。挑戦する人に会う。誰かを支える人に会う。教える人に会う。学ぶ人に会う。夢を追い続ける人に会う。そして、まだ知らない誰かに会う。

 取材が終わるころには、カメラの中だけではなく、自分たちの中にも、その人の物語が残っていました。

 チームも変わりました。編集者も。ライターも。デザイナーも。営業も。15年前と同じメンバーではありません。Macも何台入れ替わったかわかりません。カメラも変わりました。ソフトも変わりました。でも、一冊をつくる最後の空気だけは、昔と変わりません。「これで本当にいいかな。」締切の直前まで、そんなことばかり考えています。

 雑誌は、毎月新しくなります。でも、本当は毎月少しずつ古くなっていきます。誰かの本棚へ入り、ときどき引っ張り出される。10年前の記事を読み返すと、その頃の空気まで思い出すことがあります。紙には、そういう仕事があるのかもしれません。

「もう雑誌の時代じゃないでしょう。」創刊した頃、何度も言われました。紙はなくなる。これからはWebだ。SNSだ。動画だ。10年前にも。5年前にも。そして180号を迎えた今でも、ときどき同じことを言われます。「もう雑誌の時代じゃないですよね。」その言葉だけは、15年間、一度も変わりませんでした。それでも、毎月雑誌はラックからなくなっていきました。

 15年。180冊。読者の皆さんが180回手に取ってくださった180冊です。ページをめくる人がいなければ、雑誌はただの紙です。15年という時間も、生まれません。

 それぞれの持ち場で、それぞれの仕事をする。そうして、一冊になる。締切があって。取材があって。撮影があって。原稿を書いて。また誰かに会いに行く。これからもその繰り返しです。