「カルガリーにすごい日本食レストラングループがある!」そんな噂は以前から耳に入っていたが、まさかここまでとは。トロントでレストラン関係者を集めたエキシビションが開催されたのが3月末。その際にピーター金城氏率いる金城グループの幹部たちがTaro’s Fishを訪れた。オーナー同士はすぐに意気投合したのは容易に想像がつく。そこで太郎さんは「我々も視察に行こうじゃないか」となり、ZEN Japanese Restaurantオーナーの柏原清一氏らを誘いカルガリーに飛んだ。
カルガリーで「Kinjo Sushi & Grill」を知らない人はいないかもしれない。現在、7店舗、売上およそ45ミリオンドル、従業員は600名ほどを誇る日本食レストラングループで、オーナーの金城さんの商売の哲学と現在社長を務める海塚裕樹子さんの現場での統率力と実行力によって成長と躍進を遂げている。
「Kinjo Sushi & Grill」オーナーの金城さんは、1952年に沖縄県に生まれた。1971年に国際協力事業団の前身でもある海外移住者協会の第三期農業研修生としてカナダに来た。いくつかの飲食業界で働き、その後「Kinjo Sushi & Grill」を創業した。
一方、海塚さんは27歳の時にワーキングホリデーでカナダに来て、2005年に同店の一号店に就職をした。金城さんとともに現場で働き、頭角をあらわす。2011年には2号店の店長兼共同経営者、2013年には3号店の共同経営者となった。2014年にはグループの副社長となり、2016年に金城氏が現場のオペレーションから離れて以降、グループの社長に就任し、金城さんの名実とともに右腕としてグループを率いている。
創業時は子どもにポッキーを無料で配るなど、家族連れをターゲットにした戦略で、家族向けの親しみやすいレストランとして知られてきた同店。今では安価でおいしい日本食、低価格で充実した朝食メニューで知られ、現在カルガリー市内に7店舗あり、近くエドモントンにも8店舗目を出店する予定だ。
今回はカルガリーでの視察と、Kinjoグループの幹部やスタッフの人たちと一緒にバンフ観光をして、見えてきた金城さんと哲学とグループの凄さについてレポートしたい。
「安く・早く、そして美味しく」
金城氏は、低価格で高品質の食事を提供することで事業を拡大してきた。利益を最大化するために、原価を抑え、人件費を削減し、機械化導入などの戦略を採用している。機械化を進め、効率的な運営を行うことで、コストを抑えている。人気の唐揚げは7分間で60個ができるという。そしてジューシーで美味しい。さらには安い!積極的な機械化を導入し、コストを最大限抑え「安く・早く」をもモットーにしながら、必ずそれでも「おいしく」と常に語る金城さんが印象的だ。
「朝食は5ドル」
また、朝食メニューの導入や、デリバリーサービスの強化など、新しい取り組みを行ってきた。特に新型コロナウイルスによるパンデミックを契機に、これらの新しいサービスが売上げを伸ばす原動力となってきたのだろう。
従業員の日本人比率はわずか4%であり、多くは多国籍のスタッフを抱えているという金城さんは、将来的には、中華料理や韓国料理など、様々な料理のカテゴリーを低価格で提供したいと考えていると語る。
事業拡大のために多額の投資と借入を行ってきたとのことだが、それでも利益を上げることができているという。金城氏は、「利益を再投資し、従業員に還元することで事業を成長させてきた」と語り、「低価格で高品質な食事を提供する戦略をもとに、朝食メニューの導入が事業拡大のターニングポイントになった」と話してくれた。
金城氏は、「従業員の多様性が事業の成功に寄与している。私たちは、従業員に還元することで、モチベーションを高め、良いサービスをお客様に提供してもらえると思っている」と機械化を推し進めながらも、人材の重要性についても教えてくれた。
低価格で高品質の商品を提供し続けることが重要
- 低価格で高品質の商品を提供し続ける
- 大規模な事業展開を目指し、100店舗以上を目標に掲げる
- しっかりとした基盤作りと逆算的な計画を立てる
- 失敗を恐れずにチャレンジし続ける
- 原理原則に基づいた経営を行う
- 当たり前のことを徹底する
- 技術革新とコスト削減に取り組む
金城氏は、この世界での商売は、低価格で高品質の商品を提供し続けることが重要であると強調した。また、大規模な事業展開を目指すためには、しっかりとした基盤作りと逆算的な計画が不可欠であると説く。さらに、失敗を恐れずにチャレンジし続けることの大切さや、原理原則に基づいた経営の重要性についても言及し、店舗数の目標や売上高、利益率などが具体的に示している。
「GoogleやApple、Facebookなどの世界的な企業だって、小さな事業から成長したわけで、それは価格と品質が重要だったと思う。大規模な事業展開を目指すのは、100店舗以上を目標に掲げ、そのための基盤作りと逆算的な計画が重要。一度に多くの店舗を出店するのはリスクがあり、着実な成長が不可欠だ。」
また、失敗を恐れずにチャレンジし続けることが大事だそうだ。「自分自身もたくさんの失敗体験がある。成功者は1勝9敗でも諦めずに挑戦し続ける、それことが大切。それに金銭的な余裕があれば、より大胆なチャレンジができる。全ては、原理原則に基づいた経営であり、当たり前のことを徹底することが重要であり、ユニクロやホンダ、ドン・キホーテなどの成功企業はそれを実践してきた。今後は技術革新やさらなる機械化導入にも常に取り組む必要があるだろう。」
成功の鍵は、原理原則を徹底し、常にチャレンジし続けること
金城氏は、100店舗を目指すことの重要性、コストを抑えながら価値を提供する方法、失敗から学ぶ姿勢、大胆な投資と革新的な取り組みの必要性などについて語ってくれた。
Q: なぜ100店舗を目指すのか?
A: 大きな目標を掲げることで、大規模な投資と革新が可能になり、規模の経済が働くため。
Q: 価格設定の理由は?
A: 数字に裏付けられた理由があり、感覚だけではない。例えば、1.99ドルの唐揚げは利益を確保するための戦略的な価格設定。
Q: 成功の秘訣は?
A: 原理原則を徹底し、常にチャレンジし続けること。失敗を恐れずに新しいことに挑戦し、コストを抑えながら価値を提供し続けること。
Q: 大規模投資の資金源は?
A: 初期の利益を再投資し、大胆な設備投資を行った。例えば、500万ドルの機械を一括購入するなど。
Q: 競合他社に対する考え方は?
A: 真似されても構わない。自社が常に革新し続ければ、競争力は維持できる。
「ナンバー・ファクト・ロジック」の法則
サービス、商品の新鮮さの重要性
従業員の訓練と動機付け
競争力のある経営方針
Kinjoグループでは数値データを重要視しており、それを基に1日あたりの売上目標や従業員への高額の賞与などが決められ、全体としてお客様満足度を高め、売上を伸ばすための具体的な取り組みを行なっている。
例えば、ラーメンの価格を半額にし、1年間は赤字を覚悟する施策を行なった。これは、「安く、美味しく、早い」というイメージを作り出すという明確な目的意識があったからだという。そして、ポッキーやフルーツなどの無料サービスを止め、原価ベースの価格設定に切り替えたという。
また、従業員一人ひとりに特定の役割を与え、その役割に集中させることで効率的な業務遂行を可能にしている。従業員に高額の賞与を支給したり、退職を宣告する際にも高額の退職金を渡したりするなど、従業員のモチベーションを高める取り組みもある。
競争力については、他社よりも割安な価格設定を行うだけでなく、サービスの質の向上と商品の新鮮さを重視することが大事だという。また、忙しい店舗ほど従業員が楽しく働けるという考え方が示されており、売上を伸ばすことが従業員の満足度向上にもつながると説明してくれた。
https://kinjosushiandgrill.com/