【ジェトロTaste of Japan 】トロントの高級スーパー「Pusateri’s」での店頭販売やセミナーを実施

【ジェトロTaste of Japan 】トロントの高級スーパー「Pusateri’s」での店頭販売やセミナーを実施

日本食文化の普及が年々進むカナダ。その背景には、日本食品や農林水産物の販売振興や日本食レストランの増加が挙げられる。対面イベントが本格化してきた今年1月、JETROはさっそく在トロント日本総領事館と連携し、「Taste of Japan」と題したプロモーションを計画し、トロントの高級スーパー「Pusateri’s」での実演・試食・店頭販売を行ったほか、ホテル関係者や外食業界を対象に日本産食材セミナーと展示会を行った。

確立された和牛や水産物のブランド力や広がり続ける日本の各種お酒の可能性

Roger Banting氏
David Leibowitz氏 ©MARINOFotography

食品や水産物の卸売最大手のAllseas Fisheries CorpのRoger Banting代表は、マグロを中心に日本の水産物がカナダでも大きなシェアを誇ることを強調した。同じく日本の食材を海外に卸すItsumo FoodsのDavid Leibowitz代表は、日本とカナダが長い時間をかけて築いてきた食市場における関係性の強さを示し、今後もその絆が続くことを望んだ。

また、世界70か国に支店を持つ大手物流会社Apex LogisticsのゼネラルマネージャーJoyce Jiang氏によると、整備された大規模な物流システムを活かし、冷凍保存等にも対応しながら新鮮な状態で日本の食材を運んでいるという。

Apex Logistics Joyce Jiang氏

トロントで和牛を取り扱うFAMUの代表である石黒氏と渡辺マネージャーは北米での和牛の需要を参加者に紹介した。エサや水、ケアにこだわる充実した日本の和牛の育成環境から、日本各地の和牛の種類、ランクのつけ方まで解説された。

石黒氏

Sheraton Centre Toronto HotelのシェフであるTom Luu氏は、日本の食材の魅力を「シンプル」である点に感じるという。その食材のナチュラルさが他にはない魅力だと語ってくれた。

Tom Luu氏

日本酒や焼酎、ウイスキーをカナダへと販売するKado Enterprisenoの宮下代表が日本の酒の魅力をプレゼンし、繊細に作られた日本特有の各種酒のさらなるシェア拡大が見込まれると説明。日本酒の他にもにごり酒にライチのリキュールを掛け合わせた「ライチにごり酒」が提供されたほか、若鶴酒造のクラフトウイスキー「十年明」も紹介され高品質で知られる日本のウイスキーが存在感を放った。

宮下氏

カナダ企業PatreatsのPatrice氏は、お酒と他の食材を組み合わせた商品を販売中だ。同氏は自社の商品として酒を使うにあたり、こだわった良い素材から作られた高品質な日本酒を探すため来場したそうだ。

Patreats-Patrice氏

日本茶の輸出を促進する「Japanese Tea Exporters Association」として登壇した伊藤園カナダの宮内氏は、日本茶についてその魅力を茶葉の製造風景等の映像もふまえながら紹介した。

宮内氏

世界中の茶葉を扱い販売するPluck TeaのJennifer Commins氏は、日本のお茶の味と香りの良さとともに、まさに日本茶にまつわる伝統的な様式も評価した。会場に並んだ水出し抹茶や煎茶は、お茶のエキスパートである同氏も認める味だった。

Pluck Tea Jennifer Commins氏

日本茶と相性抜群の、黒餡を包んだ練り切りも提供された。特有の優しい控えめな甘さに加え見た目にも楽しめる和菓子は、今後の海外進出に期待がかかる。

Kraft Heinz / Thomas Heitz氏(右)

Kraft HeinzのThomas Heitz氏は、海外における日本食市場でどのような変化があるのか知るために来場したという。同社では日本の食材はほぼ取り扱っていないものの、「人種のるつぼ」であるカナダでは、食文化も互いに影響し合っているという。中国や韓国、フィリピンなどの食材を扱う上で、日本の食材にも目を光らせている。日本の食材を通して、シェフや業界関係者と繋がりが生まれていくことを期待していた。

日本食材の需要がカナダで着実に伸びており、今後もその規模が大きくなることを期待していると述べるJETROトロント事務所の斎藤所長
ホテル関係者や業界関係者に日本食を活かした料理を提供するシェフの必要性を強調した在トロント日本国総領事館・佐々山総領事

ジェトロ・トロントの山田あゆみ氏に聞く、
日本食材振興の次の一手

2022年のカナダの日本産農林水産・食品の輸入額は約2億1500万カナダドル(前年度比で19・8%増加)となり、年々増加傾向となっています(出所「カナダ統計局」)。その背景には日本食レストランの増加に伴い、日本食文化の普及が進んでいることが要因として考えられます。昨年はカナダ初となる「ミシュランガイドトロント2022」で星を獲得した13軒のうち5軒が日本料理店というニュースが大変話題になったことは皆様の記憶に新しいかと思います。

山田氏

では今後さらに日本からの食品の輸入を増やすにはどうしたらいいかと考えた時、次の一歩としてはカナダローカルの消費者に日本食材をもっと身近に感じてもらい、家庭や日本食レストラン以外のレストランでも日本食材を取り入れてもらうこが、更に日本食品の消費量を増やし輸入拡大につながるのではと考えます。そこでJETROではトロント総領事館と連携し、「Taste of Japan」と題して、非日系及びアジア系の小売店、外食業界を対象に2つのプロモーションを実施しました。

Ikebana International-Yvonne氏(左)
A5 Miyazaki Wagyu Ribeye Steak and Eggs
会場ではIkebana International Toronto ChapterのYvonne氏の生け花が文字通り花を添えた

①高級スーパー「Pusateri’s Fine Foods」での試食イベント

高級スーパーとして有名なPusateri’sの3店舗において、日本食の特設コーナーを設置し、実演・試食を伴う日本食品の店頭プロモーションを実施しました。実演・試食は1月の2週目3週目に各3日行い、1週目は和牛、2週目は調味料(マヨネーズ、ごま油、山椒等)、日本茶、ドライフルーツ、甘酒等を対象にし、計約1800人の方に立ち寄っていただきました。

②ホテル・レストランシェフを対象にした日本食材の紹介セミナー・展示会

Michael Tanシェフによるデモンストレーション

市内のホテルやレストランシェフを中心に約90人をお招きし、各お店の新年度のメニューを開発する際に日本食材を取り入れてもらうことをゴールに、和牛、シーフード、日本茶、日本酒・ウイスキー、日本産米等の紹介や展示を行いました。また有名シェフによるデモンストレーションを行い、日本食以外でも日本食材をどのようにメニューに取り入れるか、という例を実際に参加者に見ていただく時間も設けました。

店舗プロモーションとイベントの反応・手ごたえ

「Pusateri’s」ではこれまであまり日本食材を扱っておらず、顧客もアジア系以外の方が多いことから、日本食「初心者」の方が多かったのにも関わらず、多くのポジティブなコメントをたくさんいただきました。例えば初めて和牛を食べた消費者のほとんどの人は口にいれた瞬間に「Amazing!!」と仰り、そのおいしさといつも食べているBeefとの味の違いに驚いていらっしゃいました。

甘酒については体や美容に良さそうという感想が多く、プロモーションの初日に売り切れてしまいました。一方、初めての食材は購入に慎重になってしまうため、家庭での調理方法を何度もスタッフに確認してから商品をカートに入れる方も多く見かけました。そのような方にはレシピ例を掲載した紙をお渡しし、美味しい食べ方を説明しました。「Pusateri’sで日本食品を継続して扱ってほしい!」と仰って下さるお客様もいらっしゃり、確実に日本食材のファンが増やせたという実感があります。

シェフについては日本食材の知識はある程度浸透しているように想像していましたが、「日本食材により関心を持った。他の商品ももっと知りたいのでミニ見本市を企画してほしい!」、「今回のようにまた学ぶ機会が欲しい」とコメントが多数寄せられ、日本食材への関心度の高さが感じられました。

Shima Aji Yuzu Chili Salad

課題点

2つのイベントに共通して言えることは、一般消費者・プロ関係なく日本食材についてもっと知ってもらう機会が重要だということです。例えば「Pusateri’s」では今回は宮崎牛をプロモーションの対象としましたが、一般消費者からは宮崎牛は神戸牛ではないのかといった質問が多く寄せられ、Japanese Wagyu=神戸牛と認識している消費者が多くいるということがわかりました。マヨネーズについては、日本のマヨネーズのパッケージは目にしたことはある方は多かったですが、カナダのマヨネーズは味がどう違うのか、どのように食べると美味しいのかということを説明すると多くの購入に繋がりました。

カナダでは認知度が低い日本食材もあれば、商品カテゴリーによっては中国・韓国産・カナダ産等の類似する食材も市場には多く存在します。より多くの消費者に受け入れられるには、日本産食材の特徴や品質、調理方法について知っていただく機会を継続的に提供し、日本食材を口にする機会を増やしていく必要があると感じました。地道な活動が必要ですが、今回のイベントに参加された方の反応を見ると、十分に販路開拓のチャンスがあると感じました。

今年の取組みや力を入れたいこと(食関連)

今年もこれまでに続き、継続して日本食を広める取り組みを続けていきたいと考えています。日本食や食材に興味はあるものの、まだ本格的に楽しんだことがない消費者は沢山いらっしゃると思います。日本食ファンを1人でも多く増やし、楽しんでいただくという取り組みを続けていきたいと思います。

また日本の生産者側にはカナダ市場に関する情報をもっと提供し、サプライヤーと一緒に当地の消費者にどうやったらもっと受け入れられるか、どのように工夫すべきかを一緒に考える機会を増やしたいです。

数年後は今よりももっとトロントの消費者が日本からの食材を楽しむ機会が増えるよう、取り組みたいです。