オンタリオ、マイナスイオンを求めて:プリンス・エドワード・ カウンティ(Prince Edward County)|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』

屋内スーパーに買い出しに行っても、店のドア、椅子、柱に触ってもコロナウイルスに感染する可能性はどこにでもある。要はどれだけしっかり自分の防御体制ができているかにかかっている。『感染しない、させない』をモットーにしていれば自ずとコロナと生きるライフスタイルが見えてくる。子供のいる家庭はエネルギーを発散させる場所に戸惑うことだろう。感染が高いのはトロント、オタワなどの市内。ならばたまには少し街からでてフラストレーションを解消できたらまた英気を養えるのではないか。マスク、消毒液、殺菌手拭きを携え、いざ出発。

プリンス・エドワード・カウンティ(Prince Edward County)

ベルビルとPECをつなぐ全長900mの橋
ベルビルとPECをつなぐ全長900mの橋

 プリンス・エドワード・カウンティ(Prince Edward County – PEC: 1050㎢)は有名なプリンス・エドワード・アイランド(Prince Edward Island – PEI: 5660㎢)とは全く別の場所だ。あちらは島でありながら独立した州。プリンス・エドワード・カウンティ(PEC)はトロントから車で東へ約2時間先のオンタリオ南部の島だ。130年前まではオンタリオ湖に突き出た半島だったが、運河で切り離され、事実上島になった。電車の人はVIA RAILでベルビル(Belleville)で下車。街でレンタカーを借りる。自転車はレントできるが島を巡るには車が楽だ。道はどこも平坦で安全。ベルビルと島の間に架けられた全長900mのベイ・ブリッジ(正式にはNorris Whitney Bridge)を渡れば農地や森が広がるマイナスイオンたっぷりの世界に到着だ。

ピクトン(Picton)

ピクトン市のメインストリート
ピクトン市のメインストリート

 ベルビルから約35㎞、ピクトンはPECの臍に当たる中心都市で主要産業は観光。今の時期は閑散としているが、店は営業中のところが多い。毛糸のショールに巻かれた電信柱につられ、向かいのRosehaven Yarn Shopに入る。数々の作品や備品が広い店内いっぱいに展示されている。編み物大好き人間にとって旅はここで終了。ピクトンはカナダの初代首相マクドナルド(Sr. J. A. Macdonald)氏の法律事務所があった街で彼の銅像は昔の兵器庫の隣で今も無言で国の未来を見続けている。ウィンドー・ショッピングするならSlickersで島特産のアイスクリームを買って食べ歩きをすれば気分爽快。どの店に入るのもマスク着用は厳守。

未来を見つめる初代首相マクドナルド氏の銅像
未来を見つめる初代首相マクドナルド氏の銅像

 ピクトンから15㎞東にはLake on the Mountainsの展望公園がある。本土と島をつなぐフェリーは約62mの高台からはオモチャのように見える。Miller Houseのアウトドア・カフェでは地元のワインや産物を楽しめる。このカフェからの展望が一番いい。

高台展望公園に立つ筆者
高台展望公園に立つ筆者

サンドバンクス(Sandbanks Provincial Park)

オンタリオ湖に沈むサンドバンクスの夕日
オンタリオ湖に沈むサンドバンクスの夕日

 ピクトン市から15㎞南西に位置する州立公園内。緑の園内で風を切ってサイクリングする人々とすれ違う。3つのビーチの一つ、アウトレット・ビーチ(Outlet Beach)は2㎞の砂浜で広大なオンタリオ湖を思い切り満喫するには最高の場所だ。森の中のキャンプ場はテントサイトが900近くあるのでその広さが計り知れる。ビジターとして約14ドル払えば何時間でもいられる。私が行った時は夜10時まで開いていると係員に言われびっくりした。晩秋の月明かりがさす浜辺を散歩というのもロマンチックではないか。

ワイナリー

ハフ・エステート・ワイナリーの葡萄畑
ハフ・エステート・ワイナリーの葡萄畑

 オンタリオでいえば150年の歴史を持つナイアガラ・ワインが挙げられるが、プリンス・エドワード・カウンティも20年前にワインの産地として名乗りをあげた。ピクトンを後にメインストリート(33号線)から1号線に折れるとブルームフィールド(Bloomfield)地域に出る。道路に沿って立つコンクリートの入口、ハフ・エステート・ワイナリー(Huff Estate Winery)は〝どうぞ〟と言わんばかりの存在感を放つ。PECには大小40以上のワイナリーがあるがここは大きめで島内に40エーカーの葡萄畑を持つ。夕方6時でアウトドアのワインとチーズのおもてなし時間は終わるが、私のようにギリギリに入れば店でワインを買うこともできる。

 ハフ社の販売網はオンタリオ州のLCBO、またはネット販売。ナイアガラ・ワインとどう違うのか聞いてみると「ナイアガラは気候がいいけどここは土壌がいい」と青年スタッフが茶目っ気に言ってニタッと笑った。

 ベルビルまで戻る必要がなければ、そのまま西へ進めば本土に到着。安全で楽しいドライブを。