COVID-19 「緊急事態宣言」までの1ヶ月|紀行家 石原牧子の思い切って『旅』

日本は「自粛」という合言葉で新型コロナウイルス(COVID-19)感染に対抗している。4月に予定していたワシントン行きはキャンセルした。渡航はできても日本にもカナダにも帰れなくなる可能性があるためだ。2、3日してワシントンは凄いことになった。それに比べ東京の感染速度はまだ緩やかだった。

クリエイティブに過ごすには

上に行くほど沢は狭くなる
上に行くほど沢は狭くなる

日々の自粛の中で、クリエイティブに過ごすには知恵が必要。『3つの密:密閉、密集、密接』を避けることをマントラとし、マスクと手袋をして近場の高尾山に新鮮な空気を求めて出かけた。

JRはどこも平常通りのダイヤで運行中。一時間で登山口に。ケーブルカーは運行しているが乗らない。山麓から沢沿いを清流の音に癒されながら頂上へ向かう。普段は多くの人でごった返す頂上広場も閑散として山らしい風景になっていた。長時間歩いたあとは駅前温泉へ。5つの湯船にまばらに10人ほどが間隔をおいて浸かっている。さてこれから東京はどうなるのか。

今が見頃のシャガ(アヤメ科)
今が見頃のシャガ(アヤメ科)
沢歩きコースは階段も多い
沢歩きコースは階段も多い

緊急事態宣言と政府支援金

「緊急事態宣言」が出るその前日、家から30分先の池袋へ行って日曜大工ならぬ〝自粛〟大工用の電気ノコギリと手作りマスク用のゴム紐を買う。閉店になる可能性があるからだ。東京都の感染者の数は日々増加、100人代が続く。東京、大阪、他感染者の多い5県が緊急事態宣言対象地域だが、愛知県や京都府も宣言区域に入れるべきと関係者らが嘆願。なぜ全国ではないのか不可解だ。岩手県の感染者がゼロだからか。

池袋のホームセンターへ行く途中、食事をしようとガラス越しにメニューを見ていたら、即座にドアが開き、「どうぞ、やってます」と私を勧誘。私は隣の蕎麦屋もオプションとして検討していたのだが、そちらはひっそり。結局、開いたドアに吸い込まれて行く。短髪にするため渋谷に出たのは10日前だった。店内に客は私一人、スタッフ4人。全員マスク姿で大歓迎。小規模のビジネスが破局に追いやられようとしている。都が休業の要請対象業者を発表した。レストラン、ホームセンター、銭湯、理髪店等は営業時間短縮〝組〟に入る。慌てて出かけることもなかったわけだが、客足は以前にもまして激減するに違いない。

高尾山国定公園―もうすぐ頂上離れて休憩
高尾山国定公園―もうすぐ頂上離れて休憩
高尾山頂から見る里山の山桜
高尾山頂から見る里山の山桜

休業に協力する中小企業は50~100万円の「感染拡大予防協力金」が支給されるが申請に長蛇の列。収入が減った世帯にも現金30万円が配られるが対象はマチマチ。単身者は月収入10万円以下にならないともらえない。安倍内閣は466億円の予算で各家庭にガーゼマスクを2枚配布するという。そんな大金は困っている人たちに迅速に配布すべきだと思う。

Z小池都知事は柄入りの布マスクで画面に登場。CDC(米国の疾病管理予防センター)の動画でも縫わずにできるマスクの作り方を軍服姿の男性が教えている。モントリオールの娘は猫と閉じこもりで行政からはすでに収入減少による月額援助金が出ており申請すれば10月まで続くという。ヨーロッパも支給が早い。日本はいつ?

都市から地方への移動も出ている

〝菌〟持参の観光客が地方で感染拡散させた場合、医療体制に自信が持てないという理由で受け入れ態勢に歯止めがかかっている。しかしJRが通常通り運行しているのと並行して新聞が春の各地の観光案内を載せているのが矛盾、というか罪深い。国鉄が運行しているのはカナダや米国の自動車社会と違って公的交通手段が通勤や緊急時に利用できるからだろう。現法を変えない以上、運休させる権限は総理大臣にもないらしい。地震がくればすぐ止まるが。

赤松の老木に育まれる新しい命
赤松の老木に育まれる新しい命

兎に角落ち着くまで日本にいた方が安全

庭に出て雑草の〝ヤケ〟むしりをして90Lの袋をいっぱいにした。次はマスク作り。大工仕事はその後だ。大阪に里帰りしてマンションに閉じ込められた状態の友人がいる。気の毒にイタリアに帰国できない。ヨーロッパの爆発的感染拡大はハグやキスの習慣が一因だと私は思っている。日本にはその文化がないから助かった部分がある。家で初めて自分で毛染めをしてみるという彼女。兎に角落ち着くまで日本にいた方が安全、と慰めにもならないような言葉しかかけてあげられない。